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魔導士学院生は、今日も元気ですっ!(落ちこぼれ呼ばわりされても、くじけません)  作者: nanoky


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 パオディンとヨーディンは、打ち身を気にしながら、互いに体をそっと洗いあい、まだ半泣き状態のまま、塔へ戻り、寝床へ倒れ込んだ。

 

 彼らが完全に寝静まった頃、塔からリーユエンがそっと出てきた。

 

 塔の西側の庭園には、入浴施設がある。

 故グリムエールは無類の風呂好きで、自身で小屋を経て、蒸し風呂と冷水浴場と、温水浴場を作り上げた。

 主亡きあと、うち捨てられた施設は、すっかり傷んでいたが、探検のついでに各地で温泉巡りをしてきたパオディンは、その施設を見るなり狂喜し、たちまち使えるように修繕した。普段は、五人の生徒も使い、賑やかな施設だが、今は夏季休暇中のため、パオディンとヨーディンが出ていった後、浴場は静まり返っていた。

 

 秋から冬にかけて、浴場には結界をはるが、今は夏なので、結界をかけずに、露天風呂状態だった。

 リーユエンは、魔導術でお湯を入れ替えた。そして、変形術をとき、白金の髪へ戻り、衣服を脱いで、風呂へ浸かった。


 その夜は、満月で、月明かりが、全てのものを、夜の闇から引き離し、皓々と照らし出した。

 リーユエンの白金の髪も月明かりに照らされ、薄闇の中に眩い光を放った。洗った髪を頭の上にまとめ上げ、彼女は湯船の縁に背を預けてぐったりした。


 パオディンとヨーディン、同時に二人を相手に、棒で打ち合い稽古を一日中行ったのだ。いくら、二人が棒術の心得のない素人とはいえ、玄武なのだから、膂力は並外れている。二人の前では平気なふりをしていたが、それなりにダメージもあるし、疲れていた。

 

 夏季休暇中、学院内は人気もなく、ここは森の奥深く、しかも真夜中なので、疲れていたせいもあり、リーユエンも周囲への警戒が緩くなっていた。

 

 ちょうどその時刻、上空を、大ワシミミズクに転身したペリオンが、飛行中だった。

 ミミズク族は、羽音をたてる事なく空を飛行し、獲物を捕えることができる、聴力も非常に優れ、何より、夜目が効くのだ。まして今日は満月で、晴天の夜、視界は良好だった。


 夜空を飛行しながら、父であり、サラザルの当主であるデリオンからの指令の事を考えていたデリオンは、そういえば、リーユエンのいる魔導士塔はこの辺りだ、改装工事はもう終わったのだろうかと、視界を地上へ向けた。


 その時、魔道士塔が視界に入り、西側に輝く何かを見つけて、ペリオンは目を細めた。

「あれは、一体なんだ?」

 

 好奇心に駆られ、ペリオンは翼を少したたんで小さくすると高度を下げた。


(へえ、あの魔導士塔には、あんな露天風呂が作ってあったのか。グリムエール老師は、隠者で、週末の晩餐以外に学院に姿を現すことがなかったが、この塔で楽しく暮らしていたようだな。だが、あの光っているものは・・・・えっ、裸の女が風呂に入っているのか」

 

 盗み見をするつもりなど全くなく、ペリオンは、また高度を上げかけたが、そこで気がついた。

(今は、夏季休暇中だぞ、あの塔に誰が残っているんだ?それに、あんな髪色の女、学院内にいたか?一体誰なんだ?無人の塔に忍び込んで、勝手に設備を使っているのか?」)


 上空のかなり高い場所からでも、優れた視力をもつペリオンには、その姿は鮮明に見えた。

色が抜けるように白く、髪は本物の白金のように煌々と輝き、うつむき加減で目鼻立ちははっきりわからないが、首筋はほっそりと長く、凡人離れして、どこか人外の者めいた妖しい雰囲気があった。


 もう少し近寄ろうかと方向を転じかけたが、近くに魔獣の気配を察知した。

(いかん、あれはリーユエンの使役獣になったソアラスの気配だ)

 正体に気づかれると面倒なので、ペリオンは再び高度をあげ、その場を離れた。

 

 妙な気配を感じたソアラスは、夜空を飛行し、上空を警戒した。

 けれど、大きなフクロウが沿岸の方へ飛び去る姿を見つけただけだった。それで、リーユエンの元へ戻った。


 風呂から上がるところであったかリーユエンは、地上へ降りたソアラスへ声をかけた。

「どうしたの?何か見つかった?」


 ソアラスは首を振った。

「妙な気配を感じて、空へ上がったけれど、でっかいフクロウが飛んで行くのが見えただけだった。あいつが、ネズミでも狙う気配だったのかもしれない」


「ふうーん」

 リーユエンはそう相槌を打ちながら、湯船の縁石へ上がった。

 真珠のような光沢を帯びた肌から、水滴が金剛石のように輝き、薄っすら桜色に上気した肌を伝い、滴り落ちた。人形に戻ったソアラスが、すかさず大きなタオルを広げてリーユエンを包み込んだ。


「主、いくら誰もいないからって、裸でうろうろしちゃダメだぞ」

 リーユエンをタオルで優しく包み込み、ソアラスは揶揄うように言った。


 リーユエンはふっと笑みを漏らしたが、無言だった。


 ソアラスが何か言ったり、反応を見せるたび、かつてのアスラの姿が重なり、胸のどこかわかない場所に鈍い痛みが生じた。


 リーユエンは、服を身につけると、また変形術で髪色を戻した。

 髪色が変わる様を見たソアラスは、口を尖らせた。


「俺は、白金の髪が好きだな、そのままでいればいいのに、とっても豪華な感じがするんだ。黒髪は綺麗だけれど、なんだか、主には、質素すぎる感じがする」

 

 リーユエンは肩をすくめた。

「私の髪色は、元々黒だよ。一回死にかけた時に、体を治療してもらったら髪色が変わっていたんだ。黒にしておかないと、私を知っている人は混乱するからね。普段は黒くしているんだよ」


「凡人は色々大変だな、俺たち、魔獣は、姿なんて、良く変わってしまうから、そんな事全然気にしないよ」

 魔獣は、魔獣と戦い相手を殺すと、その力を奪い取る。そして、相手の力と自分の力を融合させ、新しい姿へ変わっていくのだ。ソアラスの今の姿も、そういう戦いを何度か経て、獲得した姿だった。

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