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魔導士学院生は、今日も元気ですっ!(落ちこぼれ呼ばわりされても、くじけません)  作者: nanoky


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 大風が吹き(すさ)ぶ森の上空を飛び、ニエザの操る絨毯は、学院長の道案内で、グリムエール老師の魔導士塔の敷地に着陸した。塔の一階で、彼らを出迎えた老師は、ヨーダムが現れたのに一瞬驚いたが、「二階へ上がってくれ」と、案内した。

 

 リーユエンは、二階の寝室に寝かされていた。

 

 顔色は血の気が失せて大理石のように白く、息も止まっているように見えた。ニエザはそれを見て、死んじゃったのか、と早合点し、涙をポロポロ流した。


しかし、グリムエールは、

「体温が極端に下がり、呼吸もほとんどしておらん。どうやら、仮死状態になっておるようじゃ。わしが見つけたとき、この者は、巨大な氷塊の中に閉じ込められていた。窒息を免れようと仮死状態になったのじゃろう」と、説明した。

 それから、ヨーダムへ、もう色素が抜けかかった薄い青眸を向け、

「太師は、この者とどういう関係なのだ」と尋ねた。

 

 太師は、年長の老師へ「グリムエール老師へご挨拶申し上げる」と、丁寧に揖礼し、「この者は、わしの直弟子、名はリーユエンという」と、答えた。

 

 グリムエールは、

「リーユエン…学院長が行方不明だと騒いでおった生徒だな。太師の直弟子であったのか」と言うや、長く伸びた白い眉毛を、不快げに中央へ寄せ、太師を睨んだ。

「太師は、この者の胸と背中にある神聖紋と玄武紋について、何か知っておるのだろう。こんな体の小さい子供に、このようなものを刻みつけるとは、いったい何を考えておるのだ」

 

 太師は、叱責口調のグリムエールへ頭を下げた。

「まずは、リーユエンの状態を確認させてもらいたい。紋を刻んだ事情について、後ほど説明しよう」

 

 リーユエンの診察を終えた太師は、

「体を温め続けて体温が上がれば、仮死状態からは脱するだろうが、内臓が傷ついている。移動させるには、負担が大きすぎる。猊下が岩戸を出られるまでは、ここで養生させるしかないだろう」と、言った。

 

 疲れ果てたニエザは、別室へ下がり眠ったため、グリムエールは、使い魔に、自分と太師と学院長へお茶を淹れさせた。。


「猊下まで関わっておるのか。一体この子は何者なのだ。てっきり少年だと思って凍りついた服を脱がせたら、そうではなかったから、驚いたぞ」

 

 太師は短息し、リーユエンが玄武国に来てからの事情を話した。


 グリムエールは、頭を左右へ振った。

「猊下はやっと明妃を立てることを決心されたのか。それは良いが、凡人の、しかも、このような、いわくありげな魔獣付きの子供を選ばれるとは、とても正気とは思えない」

 

 ヨーダム太師は、瞑目し、こめかみを右手で揉んだ。

「リーユエンに対して、猊下は格別の思し召しがお有りのようだが、わしにも理由は分からない。何やら込み入っておるようで、リーユエン自身へ説明することを猊下は躊躇っておられるようだ。ただ、リーユエンは明妃になることを承諾しておる。そして、明妃になる前に、魔導士学院で基礎を勉強したいと猊下を説得して、今年の春に入学したのだ」

 

 グリムエールは驚愕した。

「今年の春だと、もう、三、四回生の科目を履修しておるではないか。調息や導引の訓練はどうしたのじゃ」


「入学前に教導を受けさせた。わしが確認したところでは、もう第五階梯に到達している」


「第五階梯だと・・・まさか、まだ子供ではないか!」

 

 魔導士の階梯には、厳密な基準がある。

 

 第一階梯は、チャクラを意識し、中央経絡を感じ取れる状態に達することで、これは学院の一乃至二回生のうちに達しておく階梯とされている。

 

そして、第二階梯は、中央経絡に送られてきた霊力を流せる状態であり、

 第三階梯は中央経絡に、自ら風を取り込み通せる段階、

 このどちらかの階梯に到達していると認定されなければ、学院を卒業することはできないのだ。

 

 さらに、第四階梯は中央経絡に(ルン)を通せ、なおかつ自身で強弱を制御できる、微妙な法術の制御ができる段階で、

 さらにその上の、リーユエンの到達したという第五階梯は、中央経絡に風を通せ、自身で強弱を制御、さらに外から内へ循環させ、攻撃、防御できる段階なのだ。

 

 グリムエールは信じられなかった。

「太師の話では、リーユエンが玄武の国に来てから、二年ほどしか経っておらぬではないか。その短い期間で、そこまでの階梯に到達することなど不可能だ。有り得ない・・・あの方法以外は・・・」

 

 学院長は、二人のやり取りに口を挟むこともできず、ただハラハラしながら見守った。


 「グリムエール老師、あなたを信頼してお話しするが、今から言うことは全て他言無用に願いたい。これ以上、リーユエンが他の学生から攻撃されないためにもお願いしたい」

 

 グリムエールは、太師が何を言い出すのか、すでに見当はついていた。けれど、はっきり確かめておきたかった。肩をすくめると

「わしは、もう隠遁者だ。このような辺鄙な場所に訪ねてくる者もいない。それに、最近耄碌して話を聞いてもすぐ忘れてしまう。どうぞ、遠慮なく話してくれ」と、促した。


「猊下が直接、リーユエンを指導されたのだ。猊下は、・・・双修を行ったのだ」

 

 グリムエールは、方法の予想はついていたが、それを教導した者の正体は想定外で、衝撃を受けた。

「げ、猊下ともあろうお方が、このような、まだほとんど子供同然の者と双修を行われたと言うのか・・・変態玄武め」

 

 ちょうどお茶を飲みかけていた学院長は、最後の吐き捨てるような言葉にお茶を詰まらせ、思い切り()せた。そして、ヒーヒーと苦し気な息の下、

「グリムエール、お前さまは、いつ、あの世に旅立ってもいいから未練がないのだろうが、そんな恐ろしい言葉を口にして、わしを巻き込むのは、お願いだからやめてくれ」と、抗議した。

 

 しかしグリムエールは、口を尖らし、ムッとした表情で、

「わしは、本当に思ったことを口にしただけだ。まだ、こんな子供を相手に双修業をするなんて、正気の沙汰ー」


 「ワアーッ、お願いだから、それ以上は言うなっ」

 学院長は、もう涙目だった。

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