表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔導士学院生は、今日も元気ですっ!(落ちこぼれ呼ばわりされても、くじけません)  作者: nanoky


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

55/84

(55)

 試験の合格証をその場でもらい、リーユエンは演習場を出て、森の中を歩いていた。

 

 魔獣調整学の演習試験を無事合格し、他の科目は筆記試験で、目のかすみには悩まされたが、すでに全科目について回答を不備なく終えることができ、合格済みだった。これで当初の計画通り、一年目に必要な単位を全て取得することができた。

 

(二年目の専攻科目を決めないといけないな・・・やっぱり竜石で武器錬成がやってみたいから、冶金錬成術を専攻したいなあ)

 

 先ほどは、上級生たちからの妨害を躱すのに、自身の霊力を発動させ大技を使ったため、疲れて頭がぼんやりしていた。考え事をしながら歩いていたら、後ろから衝撃を喰らい、地面に叩きつけられた。


「ウギャッ」

 

 呻き声を上げ、四つん這いになって起きあがろうとしたところへ、第二波が襲った。今度は体が宙へ吹っ飛び、地面に叩きつけられた。痛みに息が詰まった。


「さっきは、よくも俺たちを地面へ落としてくれたな」

 カスパルの声だった。

 

 リーユエンは咳き込み、顔を上げた。

 

 色眼鏡は左側のレンズが割れ、歪んでしまい、顔には擦り傷があった。カスパルは、憎々しげに見下ろし、リーユエンの脇腹を蹴飛ばした。体は鞠みたいに転がり、脇腹は焼け付くように痛んだ。腹を抑えてうずくまるリーユエンをカスパルは執拗に蹴り続けた。リーユエンは内臓をやられないよう、うずくまることしかできなかった。


「カスパル先輩、それ以上やったらやばいよ。もう、やめようよ」

「うるさいっ、下級生が生意気言うな。こういう奴は徹底的に懲らしめないと、示しがつかないだろう」

 

 カスパルは、リーユエンを見下ろした。

「ふん、さっきはおまえの魔力出動で不意を突かれたが、あんな術、たいしたものじゃない。本物の恐ろしさをおまえに味合わせてやる」

 

 カスパルは、リーユエンの襟首を掴み、持ち上げると、「氷結せよ」と叫んだ。

 カスパルの体全体が青白く発光し、その光がリーユエンをとらえた。光がリーユエンを包み込み、氷塊となって彼女を閉じ込めた。


 ポルブの話に、ペリオンの顔色が変わった。


「おまえ、現場にいたのか?」

 

 ポルブは頷いた。ポルブは、当時二回生だったが、入学試験に五回目で合格を果たしので、その当時は、年齢の近いカスパルたちのグループで、使い走りの下っ端扱いされていた。


「俺は、止めたんだ。けれど、カスパルは聞く耳を持たなかった。他の者もカスパルが怖くて、誰も逆らえなかった」


「氷漬けにして、そのまま放置したのか?」


「その場ではどうしようもなかった。カスパルは恐ろしい使い手だった。どうして留年し続けているのか、皆、不思議がるほど、術は使えたんだ。あの頃の俺なんか、相手にならなかった」

 

 ペリオンは、ここで批判したら、ポルブは話をやめてしまう、それではリーユエンの正体を掴めないと思い直し、蒸留酒を一杯追加で注文してやり、さらに続きを促した。

 

 ドルチェン猊下は、魔導士学院へ行くことをリーユエンへ許したものの、宿舎生活を送ることは認めなかった。


 自身の明妃と定めた者が、他の者と寝食を共にし、風呂まで共有する寄宿生活をするなど我慢がならなかった。自分の大切な唯一の明妃であるリーユエンを、人目に触れさせるのさえ本当は嫌なのに、他の者と肌が触れ合うほど間近で共同生活させるなんて、到底許せることではなかった。

 

 それに、リーユエンの体には、魔獣との契約の影響で自身が魔物へ転じることがないよう、ヨーダム太師によって胸と背中に神聖紋の刺青が入れてある上、その周囲には玄武紋が焼き付けられていた。それを他の者に見られたら大騒ぎになるに違いないから、リーユエン自身も、最初から寄宿生活は諦めていた。

 

 魔導士学院があるのは浮遊島で、玄武国の中を一定の軌道で周回している。

 ドルチェン猊下は、リーユエンを離宮から学院へ通わせるため、膨大な法力を費消するのも厭わず、わざわざその軌道を(たわ)めてまで、リーユエンが学院に在籍の間、プドラン宮殿に近い場所に、浮遊島を留めていた。そして、毎日の送迎は、兄弟子のニエザが担当だった。


 その日の夕方、ニエザは、いつもの待ち合わせ場所に絨毯に乗って現れた。

「あれ?リーユエン、まだ来てないな。今日は試験があったから、早く終わっているはずなのに、どうしたのだろう」

 

 半時間ほどたち、辺りが薄暗くなってもリーユエンは姿を現さない。流石にこれは、何かあったに違いないと思い、ニエザは学長室へ学長を訪ねた。

 

 ニエザからリーユエンが来ないと知らされた学院長は、今日の試験予定を確認し、直ちにピセツキー教授を呼び出した。しかしピセツキー教授は、


「リーユエンなら、真っ先に双頭の蛇食い大鷲を捕まえて来たので、すぐに合格証を渡して、学舎へ戻ってよいと言いましたよ。彼は演習場を出て行きました。どこか、敷地内にいるんじゃありませんか」と、呑気に答えた。

 

 学院長は真っ青になった。リーユエンに限って、自分やニエザに連絡も取らずに、姿を現さないなんてあり得ないことだ。けれど、ビセツキー教授に事情を説明することはできないと思い、

「悪いが、演習場の周辺にいないか確認してくれ」と言うのが、精一杯だった。

 院長は、やむなくヨーダム太師に連絡を取った。


 一方、氷塊の中に閉じ込められたリーユエンは、氷塊の破壊を試みた。

 しかし、先ほど、竜巻を起こす魔力出動をかけたため、力が不足していた。


 第六階梯に達したばかりのリーユエンにできるのは、中央経絡に風を通し、自身で強弱を制御しながら、それをさらに内から外へ循環させ、渦を作って体内に保持し、魔導術使用時間を延ばすところまでだった。

 

 魔獣に生気を喰われてばかりで、元々霊力が乏しいうえ、先ほどの出動で、自分自身の霊力をかなり消耗してしまい、そのうえ、カスパルに手ひどく蹴りつけられ、内臓を痛めてしまい、経絡が乱れて操作も行えそうになかった。このままでは、窒息してしまうので、やむなく代謝を極限まで落とし、仮死状態へ入った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ