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魔導士学院生は、今日も元気ですっ!(落ちこぼれ呼ばわりされても、くじけません)  作者: nanoky


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 次は、第二クラス担任、エスメルの火精召喚による火竜の舞が披露された。

 

 エスメルが召喚呪文「火龍降臨」を唱えるや、上空に巨大な炎と黒雲が現出し、二つは融合し、渦巻く竜巻となり、その渦の中から火を纏う龍が飛び出した。龍は、上空で胴をうねらせ、上昇、下降を繰り返し、錐揉み回転しながら、会場の上空を超低空で飛行してみせた。ペリオンとは対照的な、力強く勇壮な演技に、皆、歓声を上げた。

 

 猊下は、明妃へ、

「あの者が先日、あなたと戦った相手だな」と、確認し、「ふむ、生来の魔力は強大だが、あの調子で使い続ければ、百年も生きられまい。それよりも修行を重ねて第六階梯を目指した方が良いと思うのだがな」と、評した。

 明妃は、「猊下の仰せの通りでございます。しかしドロメルの当主でさえ、未だ第五階梯に止まっており、その先の秘訣のことを知らないのです。先へ進む意欲も必要性も感じてはいないのでしょう」と、答えた。

 

 次に第二回生生徒の演技となった。

 

 最初は、第一クラスの草原狼の双子兄弟、ジャオメルとシャラメルの演技だった。

 精悍な顔立ちがそっくりな二人は、ペリオン先生から受けた特訓の通り、水精召喚の呪文「アクア アパーレ」を唱えた。けれど、慣れない会場の雰囲気に呑まれ、呪文の強弱と音程が狂ってしまった。本来なら、お互いに水精を操り、勢いよく水を上空へ打ち上げ、大きな虹の橋を渡すはずだった。けれど、制御に失敗し、水は勢いを失い、床が水浸しになり失敗に終わった。

 

 それを見た学院長は、

「やれやれ、欲張り過ぎじゃよ、大勢の観客が見守る中で、しかも本日は、法座主猊下がご高覧で法力の影響も大きい、集中力の必要な水精の制御を、経験の浅い二回生にやらせるのが、そもそも無理なのじゃ」と、呟いた。

 

 次は、第二クラスの出番だった。

 ゲレッツォが舞台中央まで進み出た。ゲレッツォの目の下には、黒々と隈が浮き上がっていた。

 

 それを見た学院長は、

「エスメル先生、指導熱心なのは良いが、ちと生徒に練習させすぎなのではないか?あの生徒、気脈が弱ってきておるぞ」と、呟いた。学院長が気づいた通り、この一ヶ月間、ゲレッッォの度胸と魔力の強さを見込んだエスメルは、彼に火精の制御を猛特訓してきたのだ。

 

 ゲレッツォは、両腕を前へ突き出し、「火精召喚っ」と叫んだ。

 赤々と燃える炎が彼の前に現れ、次に「火精よ、分裂し、火輪となれ」と叫んだ。

 

 火精の炎は、二つに割れ、互いを追いかけ回転し始め、炎の車輪へ変わった。次は、その火車の上にゲレッツォが飛び乗る予定だった。けれど、彼はここで突然、魔力が枯渇してしまった。使役者が力を失い、術が敗れた。術返しと同じ状態に陥った火精は、ゲレッツォへ襲いかかった。

 

 学院長は、「いかんっ」と叫び、自身の杖を振るった。しかし、この広場は石畳のため、学院長は土精を呼び出し、防火壁を築いてやることに失敗した。

 

 ツカリーゼが気がつき、

「もうっ、しょうがない子ねっ」と言いながら、自身の人形一体をゲレッツオの前へ飛ばした。

 火精は、それをゲレッツォと思い込み、燃やし尽くすと姿を消した。


「何だ、術が暴走したのか」

「あの子、大丈夫なのかしら?」

 あたりはどよめいた。

 

 エスメルの顔から血の気が引いた。

 

 ツカリーゼは舞台へ上がり、倒れたゲレッツォを抱えあげ、

「あら、この子、魔力切れで気絶しているわよ。熱心に練習し過ぎたのね」と言うと、学院生徒の席へ連れていき、そのまま休ませた。そして、担任のエスメルへ、

「あなた、担任なんでしょ、この子の面倒ちゃんと見てやりなさいよ。こんなになるまで練習させて、可哀想じゃない、まだ大技を使えるほど、体ができていないんだから、無理させちゃダメでしょ」と、注意した。魔王のような外観、それに教授職につき、五階梯到達者であるツカリーゼには、エスメルも流石に何も反論することもできず、「分かりました」としか応えられなかった。

 

 そして、ついに第三クラスの番となった。


(うわぁっ、二回生第一、第二とも自爆状態で、第三クラスの演技の番になったよ。大丈夫かな・・・ああ、胃が痛い)

 明妃の装束などすぐ脱ぎ捨てて、すぐさま生徒の元へ駆けつけたいとリーユエンは真剣に思った。もう、不安でたまらなかった。演技なんかもうどうでもいいから、とにかく怪我をしないでほしいと思っていた。


 すると、猊下が手を伸ばし、明妃の手をそっと叩いた。

「落ち着きなさい。あなたにしては珍しく、心が乱れている。もっと、自分の生徒を信じてやりなさい」

「・・・・・はい」

 猊下の指摘に、リーユエンは瞑目し呼吸を整え、精神を落ち着かせた。

 

 タロナ、ロージー、モンシェン、マルテン、ハンツォンの順番で、演舞台へ上がると、五芒星の形に散らばり、彼らは一斉に結跏趺坐し、観想を始めた。そして、その状態から立ち上がると、導引術、四神獣大鵬拳を開始した。

 

 猊下はそれを見て

「ほう、あれは四神獣大鵬拳ではないか、みな、よく同調して、形も基本通りで美しいな」と、誉めた。

 

 玄武の構えから白虎の打突、そして、龍の回転蹴りから鯤魚の泳ぎを模した側転、そして大鵬の羽ばたきを模した構え、無心のうちに調息行気を同時に行いながら一糸乱れぬ滑らかな動きを続け、一巡するとタロナが霊力をロージーへ飛ばした。

 

 ロージーは、動きを続けながら、それを自身の経絡へ取り込むと打突して次のモンシェンへ飛ばした、そうやって一巡すると、タロナは上空へ真円の法陣を打ち上げた。

 

 次にロージーが霊力を飛ばし、それは一巡して、彼ら全員を対角線で結びつけ五芒星の法陣となって打ち上がった。


 次に五人は一斉に霊力を法陣の中心点へ向かって打突した。それはぶつかり合って進路が変わり、上空へ散開しながら上昇した。上空に達した霊力が青白く輝き広がり、宝相蓮華が現れた。そこへもう一度打突で、五芒星の法陣を打ち上げ、その花びらをさらに大きく開花させた。


「うわあ、綺麗だ」

 上空に輝く大きな花に歓声が上がった。


 彼らは、最後にもう一度霊力を循環させ、力を合わせ、一気に上へ打突した。

 花弁が回転し始め、そこから、無数の小さな光の華がフワフワと漂いながら落ちてきた。


「宝相蓮華散華術か…明妃、懐かしいものを見せてくれて礼を言うぞ」

 猊下は、明妃の耳元で囁いた。

「あれは、わしが法座主位についた時、祝賀の式典にあった演目の一つではないか。どこで調べたのか知らぬが、よく再現したものだ、実に懐かしい」

 

 明妃は微笑み、「猊下にお気に召していただけて、よろしゅうございました」と、囁き返した。

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