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魔導士学院生は、今日も元気ですっ!(落ちこぼれ呼ばわりされても、くじけません)  作者: nanoky


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 北嶺の険しい山肌に張り付くように聳え立つ白亜の壁は、雲の上まで続き、どこが最上階なのかもわからない巨大さだった。そして東西には無数の塔が霞の彼方に見えた。

 

 サンロージアも初めて目にするプドラン宮殿の威容に目を見はった。

(凄い、巨大さなら、金杖王宮なんて、百個くらい余裕で収まりそうですわね。ここに明妃の離宮もあるのね・・・お兄さまが、明妃への恋慕の情に悶え苦しまれたという離宮へ、私も行ってみたいわ)

 

 サンロージアの兄、金杖王国の王太子であるデミトリーは、法座主ドルチェンの明妃であるリーユエンに恋してしまい、未だ、その恋慕を断ち切れずに苦しんでいた。

 彼は、一昨年、父王の言いつけで、リーユエンが参加する西荒行きの隊商の用心棒の一人として同行し、その後、負傷した彼女に付き添いプドラン宮殿の一区画にある離宮にしばらく滞在したのだ。

 

 お気楽なロージーは、兄の苦しみにお構いなく、恋慕という響きに惹かれ、離宮の舞台に身を置き、その雰囲気に浸ってみたいと思ったのだ。

 

 魔導士学院の生徒・学生たちは、小山ほどもある地竜馬が牽引する戦車が、三台並んで通過できる巨大な城門を通り抜け、中層階の五ヶ所の宿に分かれて宿泊した。明日はいよいよ叙勲式、そのあとは歓迎式典だった。


 リーユエンは、五人の生徒が宿へ落ち着いたのを確認すると、同じ宿に泊まるツカリーゼに後を託した。


「大丈夫よ。任せておきなさい。たった二週間でよくここまで仕上げたわね。あの子達、落ち着いているから、明日は多分大丈夫よ。私のところの学生と一緒だし、第一クラスも第二クラスも離れた宿になったから、トラブルもないだろうし、安心して旦那さんに付き添ってあげなさい」


「はい、生徒たちの引率、どうそよろしくお願いします」

 リーユエンは深々と揖礼し、宿から立ち去った。


 初夏の爽やかな日差しは、普段、地下都市を住まいとする都人には抗いがたい魅力だ。好天続きの今を逃すまいと考えた儀仗局の役人は、叙勲の式典を、プドラン宮殿の最上層、北嶺の青空のもと、法座主宮殿前広場で行うことを上申した。

 

 宮殿の中で、その上申を聞いた猊下は、鳳翼のように広がる形の良い眉を微かに寄せられた。表情の変化に敏感な儀仗局の役人は、何が拙かったのだろうかと恐る恐る猊下をうかがった。けれど猊下は、ただ「よかろう」とだけ、仰せになった。

 

 役人が下がったあと、猊下は巨大な窓から宮殿前広場を見下ろした。会場に文句をつける気などなかったのだが、そこは、去年、明妃の使役魔獣であったアスラが、ドルーアの毒を浴び、力尽きて死んだ場所に近かった。それを思い出せば、彼女は辛いだろうと、それが気がかりで、微かに眉を寄せてしまったのだ。

 

 猊下は、後に控える待官へ振り返り、

「そろそろ明妃は離宮に戻った頃だろう。今夜は、離宮を訪問すると伝えてくれ」と、命じた。


 翌日も、法座主宮殿前大広場は、快晴の青空の下、爽やかな風が吹き抜け、新緑を装う木々は瑞々しく輝いていた。広場を囲む垣根には、白と薄紫の北荒茉莉花が一斉に花開き、甘く爽やかな香りが辺り一面に、馥郁と漂っていた。

 

 広大な広場の中、法座主宮殿に近い一画に、叙勲を行う高台が設けられ、その周囲は、真っ白な日除天幕が設営され、高所から眺めるとそれは花びらのように見え、その下には列席者の席が設けられた。

 

 ツカリーゼ教授に引率された二回生第三クラスも、指定された席についた。彼らと隣り合って、第一クラス、第二クラスの生徒たちも、腰掛けていた。


 第二クラスのゲレッツォは、早速立ち上がり、モンシェンへ近寄り、

「お前ら、何の演技をやるんだ?化鳥踊りとか子ウサギ踊りとかするのか」と揶揄った。ところが、その背後から、巨大な影が落ち、


「第二クラスの子は、席へ戻りなさい」」と、恐ろしい極低音の声が響いた。


「・・・・・・」

 

 ゲレッツォは、魔王のような大男に見下ろされ、口をパクパクさせ、慌てて第二クラスの場所へ戻った。

 

 ツカリーゼ教授は、

「全く、行儀の悪い子ね」と、呟いた。

 

 リーユエンが、引率を途中で放擲(ほうてき)し姿を消したことに文句が言いたいエスメルも、ツカリーゼは苦手なので、ゲレッツォへ

「ウロウロしないで、自分の演技に集中してなさいっ」と注意し、席へ戻らせた。

 

 ロージーは席から立ち上がり、タロナへ

「開会まで時間がありますから、会場を見てまわりましょうよ」と、誘った。そして、ツカリーゼ教授へは、

「式が始まる前にタロナの曽祖母さまにご挨拶してきます」と、断りを入れ歩き始めた。

 

 ロージーはタロナの手を握り、会場の奥の方へと引っ張っていった。実は、出発の前日、ロージーは、リーユエンから頼まれたことがあった。

 その時、リーユエンは、


「模範演技の成功は、平常心で演技できるかどうかにかかっている」と言い、続けて、

「ロージーや、マルテンは、多分影響がないと思う。モンシェンとハンツォンは多少影響は受けるかもしれないが、自力で克服できるだろう。あと、問題はタロナだ」と、指摘した。

 

 ロージーは頭を傾げ、

「それってどういうことですの?一体何の影響を受けるっていうの?それにどうしてタロナだけが問題なの?」と、問うた。 

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