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南庭園へ生徒五人を集合させ、リーユエンはツカリーゼとともに、彼らの前に立った。そして、
「模範演技発表の二週間前だ。今から君たちに、今回の模範演技についての説明を行う」と、まず前置きをいい、
それから生徒たちを見回し、
「他のクラスが何をするのか、誰か知っている者は?」と、尋ねた。
男子生徒たちから、先ほど話していた内容を聞き取りすると、リーユエンは、
「なるほど、単独魔力発動による個人技重視の模範演技だね。私たち、第三クラスは、集団演技を行う」と、ついに発表した。
「集団演技って何をするんですか」(マルテン)
「四神獣大鵬拳をみんなでやるんですか」(モンシェン)
「今から練習して間に合うんですか」(ハンツォン)
と、一斉に質問し始めた。
リーユエンは、手のひらを二回打ち合わせ、皆を黙らせた。
「先日、私は模範試合を行った。その際に用いたのは、八卦法陣だ。君たちは、自分でも法陣を発現させたいか?」
リーユエンの発言に、皆、目を輝かせた。
けれど、タロナは暗い表情で俯いた。
「でも、私は霊力が低いから、法陣なんて・・・」
「法陣の発現は、霊力よりも大事なことがある。マルテン、何かわかるか?」
リーユエンの問いかけに、マルテンはしばらく考えて、
「正確な術の詠唱ですか」と、答えた。
「ほぼ正解だが、完全な正解ではない。モンシェンは、何だと思う」
「正確に法陣図を描き出すことですか」
「それも、完全な正解ではない。ハンツォンは、何だと思う」
「法陣を発現できるよう、魔力を安定して保つ?」
リーユエンは右掌を上向きにし、そこへ小さな法陣を発現させた。それは、円陣の中に五芒星が光る法陣だった。
「うわっ、綺麗っ」
ロージーとタロナが同時に叫んだ。
「これは、法陣の基本形だ。この五芒星の五つの頂点は、木精・火精・土精・金精・水精の象徴だ。この五芒星の働きで、法陣は効力を発揮する。今、私一人で発現させたが、術式を組み込んだ複雑な法陣は複数の魔導士が力を合わせて発現させる。それは通常、この五精に対応する五人で行うものなのだ」
そう言うと、法陣を消滅させ、今度は手のひらの上に、青白く光る親指大の人形を五体出現させた。
「これを、五人の魔導士として見ていてほしい。この五人が呼吸を合わせ、経絡を通して霊力を循環加速させることで、一人ひとりが増幅器となり、より大きく強力な法陣を発現することができる」
五人の魔導士に見立てた小さな人形が柔らかな金色の光を帯び、その光が帯状に伸び隣の人形へ、さらにその隣へと伸びてつながっていき、光の輪となり回転し始めた。
五人の生徒たちは、その様をじっと見つめながら、リーユエンの話を真剣に聞いた。
「最初に生じる魔力を仮に一とすると、五人の経絡を通し、加速されていく。単純計算で初速を一とすると、一巡で七百二十倍の強さとなる。そして、増幅器としての役割は、霊力の強さに左右されない」
リーユエンが語る間も、光は回転し続け、やがて、最初に現れた時より遥かに眩しく大きな法陣が現れた。その法陣に組み込まれた術式までもがはっきりと読み取れた。
「でも、そんな難しいことを、今から二週間でできますか」と、ハンツォンが尋ねた。
「ごく単純な法陣を五つ、連続発現させようと思う。今日から、五種類の法陣を覚えてもらう」
「でも、循環なんてさせたこともありませんよ」と、マルテンが言った。
「皆で法陣を観想するのだ。そして、経絡から風を取り込む。今回は、外からの気ではなく、霊力だ。
四神獣大鵬拳の動きに合わせ、皆で一斉に霊力を循環させる。法陣の観想と循環法について、今週一杯指導を行う。これを習得すれば、最初に行った質問の答えは分かるようになる」
生徒が自分の話を理解できているか反応を見ながら、リーユエンは続けた。
「一週間、法陣の観想と循環法を修練し、最終週では、実際に法陣を、発現してもらう。発現前に調息法で法陣を観想し、それから四神獣大鵬拳を行う中で、法陣を発現させる。練習の難度は上がるが、いい勉強になるし、三回生に上がった時、法陣学の履修で役に立つと思う」
タロナは不安気にリーユエンを見上げた。
「私、できないかもしれない」
リーユエンは、タロナに近寄り、その前でしゃがむと顔をのぞき込んで微笑んだ。
「毎日していることに、少しずつ付け足していくだけだ。特別なことをするわけではないから、不安がらなくて大丈夫だよ。二週間欠かさず稽古をすれば、大丈夫。最悪、本番で法陣が発現しなくても、調息法と導引法の模範演技はできるからね」
ロージーも、タロナをのぞき込み、
「そうですわ。何もしないうちから不安がっても意味ありませんわ。とにかくやってみましょうよ」と、励ました。
「面白そうだよ」(マルテン)
「絶対勉強になるよね」(モンシェン)
「俺もやってみたいです」(ハンツォン)
ツカリーゼ教授は、話を聴きながら、うんうんと頷き、感動した。
(まあ、なんていじらしい子供たち、これは応援してあげなくちゃね)
手芸乙女のツカリーゼは、美しいものをこよなく愛するが、小さく可愛いものも大好きだった。タロナが涙目になって、リーユエンを見上げる姿に、これは絶対成功させてやらねばと思った。




