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魔導士学院生は、今日も元気ですっ!(落ちこぼれ呼ばわりされても、くじけません)  作者: nanoky


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 叙勲式の二週間前、森の中の魔導士塔では、二回生第三クラスの生徒たちが、午前の授業を終え、束の間の休憩をとっていた。

 

 マルテンが、最初に言った。

「昨日、食堂で第一クラスのペクリオが、ペリオン先生が双子の草原狼ジャオメルとシャラメルに、水精の攻撃魔法の特訓をしているって言ってたんだ」

 

 次にモンシェンが、発言した。

「僕も、ゲレッツォに声をかけられてさ、エスメル先生から火精の攻撃魔法の特別授業を受けているって自慢を聞かされたよ」

 

 そして、ハンツォンが、

「第一クラスも第二クラスも、叙勲者の歓迎式を盛り上げようと、二回生では習わない、難しい魔導術を教えてもらっているんだよね。リーユエン先生、俺たちのこと、どう思っているんだろう。もう旦那さんの行事に出席することで頭が一杯で、忘れてしまったのかな」と、不安げに言った。

 

 昼食当番で茶碗を洗っていたタロナは、水切りかごへ茶碗をガシャンと大きな音を立てて置くと、ハンツォンへ言った。

「リーユエン先生は、そんな不真面目な先生じゃないわ。きっと、何か考えがあるのよっ」

 

 けれど、ハンツォンは、

「だって、君の曽祖母ちゃんが来るんだろう?このままだと、ただの授業参観か、他のクラスに見劣りして、それ以下になっちゃうぞ」と、反論した。


 そこへ、空から、魔王のように黒いマントを風にはためかせ、菓子袋を手にツカリーゼ教授が降りてきた。

「まあ、まあ、あんたたち、何を口論しているの」

 

 ツカリーゼは、迎え出たロージーへ

「これフィナンシュよ、三時のおやつに食べなさい」と手渡した。

 

 ロージーは、礼を言って菓子袋を受け取ると

「私たち、叙勲者の歓迎式典の模範演技がどうなるのか、心配なんです」と、答えた。


 ロージーは、リーユエンが用意周到なことを知っているから、心配してはいないのだが、他の四人は先生のことを知らなさすぎるので、説明のしようもないのだ。


「ふぅん、確かにそろそろ日にちも迫ってきたわね。直接リーユエン先生に聞くのが一番でしょ。ところで、先生はどこにいるの?」


「先生は、塔の中です。今、内装業者さんが来ていて、内装のことで、ちょっと揉めているんです」

 

 ロージーの言葉にツカリーゼは首を傾げた。ツカリーゼは、引率を引き受けるので、第三クラスの様子が気になり、何度か訪れていた。そのついでに、リーユエンの表情を観察して、人形作りに役立てていた。


「そうだわ、先生は、審美眼が確かな方ですもの、是非、内装の打ち合わせに立ち会ってくださいな」と、ツカリーゼの機嫌を取るのが上手なロージーが、頼んだ。そして、ツカリーゼを塔の中へ案内した。


「リーユエン先生、ほら、この壁を見て、元々新古典柄の蔓薔薇模様の壁紙だったのよ。これを全部灰白色の壁紙に統一するなんて、絶対ダメ。塔の内装が台無しになっってしまいます」


「ここは、学生の寄宿舎として、使用します。魔導士に贅沢は不要です。灰白の壁紙なら傷んでも入手しやすくて、補修もしやすいから、それで統一してください」


「リーユエン、そこまで、厳しくしなくてもいいだろう、部屋ごとに壁紙を変えて、調度も違ったのにして個性を出そうぜ」

 

 内装業者、リーユエン、パオディンの会話が聞こえてきて、ロージーは肩をすくめた。

「先ほど、内装業者さんが来てから、ずっとあの調子で話が全然まとまらないのです」

 

 パオディンが、二人に気がつき、階段を降りてきた。

「よう、ツカリーゼ教授、今日も、もしかしてお菓子差し入れしてくれたのか」


「もちろんよ。あとで食べなさい。それより、内装で揉めてるの?」


「そうなんだよ、リーユエンは、宿舎に使うかのだから贅沢はしなくていいって、壁紙も灰白色にしろって言うんだ」

 パオディンは口を尖らし、続けた。


「こんな古風な塔なんだから、それに見合った内装にしてやらないと建物がかわいそうだよ」

 

ツカリーゼは、リーユエンへ声をかけた。

「リーユエン先生、この塔の内装は、元通りに復元するべきよ。私が、ここの内装も家具のことも全部覚えているから、任せてちょうだい」

 

 ツカリーゼの申し出に、リーユエンは戸惑った。

「元通りにしようとしたら、お金が随分かかりますよ」


「大丈夫よ。この塔はね、学院島の中でも最古の建造物の一つなのよ。学院長を説得して予算も付けさせるわ。それに今度プドラン宮殿へ行くでしょう。都の壁紙店やアンティーク家具の店に行けば、同じものが手に入るから、私が調達するわ。それで復元すればいいわ」

 

 リーユエンは、ツカリーゼを横目に見て、

「しかし、そんな贅沢な内装は、生徒の教育に良くないのでは・・・」と、小声で言った。

 

 ツカリーゼは首を振った。

「その考え方は間違っているわよ。あなた、情操教育っていう視点が欠けているわね。美しいものを美しいと感じる、高度な感性っていうのはね、若い頃から一流の品に接していないと養われないものなのよ。誰の前に出しても恥ずかしくない立派な魔導士を育てたいのなら、宿舎の内装だっておろそかにしてはダメよ」

 

 ロージーも、ツカリーゼの言葉に深く頷いた。

「さすがは、ツカリーゼ教授ですわ、感服いたしました」


 ツカリーゼはロージーに褒められ、顔を綻ばせたが、リーユエンへ会いに来た目的を思い出した。

「リーユエン先生、生徒たち、今度の歓迎式典の模範演技に何をするのか、すごく気にしているわよ。もうそろそろ、何をさせたいのか、具体的に説明してあげたらどうなの。まさか、導引術や調息法を、毎朝やっている通りに見せるつもりなの?」

 

 リーユエンは、目元を和らげて微笑んだ。

「そうですね、そろそろ皆に、演目の説明をするべきですね」

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