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魔導士学院生は、今日も元気ですっ!(落ちこぼれ呼ばわりされても、くじけません)  作者: nanoky


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  タルタネアは、美々しい宝相蓮華唐草紋様の金の縁取り付き封筒を取り上げ、ペーパーナイフで封を切り、中身を取り出した。


「驚いたね、叙勲の通知と叙勲式への招待状だよ。私に聖恩寵勲章をくれるそうだ。おや、この通行手形、ただの通行証じゃないよ。アイナ、見てごらん、都への道中の宿泊料は、これを宿で見せるだけで、宰相府が持ってくれるそうだ。同行者一名まで認めると添え書きがある。お前も一緒に行かないかい?」

 

アイナは目を輝かせた。

「私も行っていいんですか」


「もちろんさ」

 

さらに読み進んだタルタネアは、

「叙勲式典のあと、魔導士学院教師と生徒たちが、模範演技をするんだとさ、タロナに会えるかもしれないね」と、目を細めた。


 一方、学院島では、臨時の職員会議が開かれていた。

今日は、晩餐のある週末なので、学院長舎の大会議室へは、全教職員が集合した。そして、学院長は、皆を前に話し始めた。


「あと一月半余りで、上半期を終了し、学院は夏季休暇期間に入る。だが、その前に、学院の先生方へお願いしたいことがある。実は、本年、叙勲式が、プドラン宮殿にて、来月末、四年ぶりに行われる。そして叙勲式後の歓迎式典では、魔導士学院の教師並びに学生が、恒例の模範演技を行う。従来は、学生は三回生以上から参加としてきたのだが、今回に限り、二回生以上から参加とする」

 

学院長が書類を見ながら読み上げた言葉に、教師たちは眉を寄せたり、首を傾げたりした。魔道術の習熟度の低い二回生以下は、従来、模範演技に参加しなかったのだ。それを今回に限り、学院長がそのようなことを言い出したのがなぜなのか、皆、不思議に思った。

 

二回生、第一クラス担任のペリオンが質問した。

「どうして、今年に限り、二回生を参加させるのですか。私は、別に構いませんがね」

 

 学院長は書類から顔をあげ、ペリオン、エスメル、それからリーユエンを変わるがわる見た。

「今、魔導士学院島は、北嶺の辺境地帯を浮遊中で、都から遠く離れておる。この秋に、学園祭を開いても訪れる者は少なかろう。それで、ここへ来られない父兄が見られるように、都で前夜祭を行おうと思う、そのため、全生徒を都へ連れていきたい。

 それと実はな、今年の叙勲者の中に、雪ウサギ族のタルタネア様がいらっしゃるのじゃ」

 

 エスメルは眉をしかめた。

「タルタネア?」

 どこかで聞いたことのある名前だと思った。


 情報通のペリオンがすかさず、

「なるほど、『共情の聖女』ですね。確か学院の卒業生でいらっしゃるはずだ」と、発言した。

 

 学院長はふさふさと伸びた銀色の髭を撫でながら、

「実は、第三クラスに在籍するタロナは、あの方のひ孫なのだ。せっかく遠路はるばるプドラン宮殿に来られるのだから、ひ孫のご活躍をご覧になりたいだろうからのう。ただ、二回生は習熟度はまだまだじゃから、特別な演技は不要だ。普段の授業通りの内容を見せてもらえればいいと思う。そういう事でよろしくお願いする」

 

 ペリオンは、驚愕した。エスメルも呆然とした。

 

 タロナが、学院卒業者のひ孫であったなんて、全然気づいていなかったのだ。そういえば、以前、共情能力があるとかで、他の生徒とトラブルになり、エスメルが能力を封印しようとしたことがあった。その時、タロナはウラタナ村の心の診療所所長タルタネアが自分の身内だと話していた。だが、彼女の霊力は取るに足らない水準であったため、その身内が『共情の聖女』であると、結びつきもしなかったのだ。

 

 ペリオンが、エスメルをこっそり横目に見ると、彼女は真っ青だった。叙勲を受けるほどの名士直伝の、ひ孫の能力を危うく封印するところだったのだから、動揺が大きいのは当然だった。けれど、それはペリオンも同感なのだ。まさか、あんな霊力の低い、何の取り柄もなさげな小娘が、叙勲を授かるほどの名士の血族であるとは、知っていたなら、絶対第一クラスに入れていたのにと、悔しくてならなかった。


「伝達事項は以上だ。叙勲式後の歓迎式典の詳細は、後ほど資料をお渡しする。それから、リーユエン先生は、残ってくれ」

 学院長は、リーユエンに残るよう指示し、会議を終わらせた。


 リーユエン以外の教職員が出て行くと、学院長は彼女と対面して腰掛けた。そして、

「あなたに面倒なことをお願いして申し訳ないと思っている」と、いきなり頭を下げた。

 

 リーユエンは、そっとため息を漏らした。

「叙勲の式典には、私も出席するように儀仗局の方から依頼が来ておりますし、猊下も式に臨まれるので、欠席はできません」

 

 学院長は、何度もうなずいた。

「そうじゃろう、そうじゃろう、わしも承知しておる。本来なら、このような指示を出したりはしないのだが、あのタルタネアじゃからのう・・・ひ孫の出番がないと、おそらく、わしのところへ怒鳴り込んでくるに違いないのじゃ」

 

 リーユエンは、首を傾げた。

「『共情の聖女』が、怒鳴り込むのですか?」

 

 学院長は、ふうーっと大きくため息を吐いた。

「『共情の聖女』などと、今でこそ、立派な通り名があるが、あのタルタネアは、気性の激しい女でな、ちょっとでも筋が通らないと思ったら即行動、あの女の在学中、わしは、学院長室で吊し上げを何度食らったかわからないほどだ」

 

 リーユエンは、学院長の話に背筋が寒くなった。

「模範演技の出来栄えが悪いと、私も吊るし上げを喰らうのでしょうか?」

 

 学院長は、柔和な笑みを好々爺然と浮かべ、首を振った。

「大丈夫じゃよ。模範演技にすら登場させないとなったら、わしのところへ怒鳴り込んでくるだろうが、ひ孫の霊力が低いことは承知しておるのだから、模範演技の水準にまで文句を言うことはないだろう」

 

 リーユエンは、眉を寄せ、学院長をチラッと見て、首を振った。学院長は、さらに声を潜め、

「模範演技はどうするね?」と、尋ねた。

 

 リーユエンは腕組みし、宙を仰いでしばらく考え込んだ。それから、

「第一クラスも第二クラスも、魔力発動中心の個人単位の演技を行うでしょう。同じことをしても退屈ですし、レベルも違いすぎます。第三クラスは、集団演技をさせようと思います」と、答えた。

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