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魔導士学院生は、今日も元気ですっ!(落ちこぼれ呼ばわりされても、くじけません)  作者: nanoky


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「ハンツォン、どうぞ」

 リーユエンに促され、ハンツォンは尋ねた。


「南荒で教団にいた頃、先輩が話しているのを聞いたんですが、修行段階を爆速で上げる方法があるって、本当にそんな方法があるんですか?」

 

リーユエンの紫眸が、ハンツォンを真っ直ぐ見た。


ハンツォンは、先生の表情が険しくなった気がして、こんな質問をしなければよかったと後悔した。


ところが、タロナが、挙手して割り込んできた。

「質問中にごめんなさい。それ、私も曽祖母から聞いたことがあります」

 

 リーユエンは、タロナへ

「曽祖母様は、どのようにおっしゃっていた?」と、尋ねた。

 

 すると、タロナは口をへの字に曲げ、一寸黙り込んだ。それから頬を赤くして、

「男女の交わりを利用すれば、修行の速度を何倍にも上げることができるって話していました」と、小声で話した。


 リーユエンは静かな声で、

「曽祖母様は、その事について、何と?」と、さらに尋ねた。


「普通は、やらない方法だねって言っていました」

 

 リーユエンは、無表情を保ち、抑揚のない声で淡々と話し始めた。


「ハンツォンが聞いた先輩の修行法が、具体的にどのようなものなのかは分からないので、それについては答えようがない。タロナの曽祖母様がおっしゃった修行方法は、確かにある。ただ、非常に危険な方法だ」


「危険であっても、修行速度が何倍にも上がるのでしたら試す価値があるのでは?」と、ロージーが発言した。

 

 リーユエンは腕組みし、目を伏せた。

「双修法という行法がある。階梯が何段階も上の者が、下の者へ経絡を繋げ、(ルン)を送り込み循環させて、己の到達した階梯を下の者にも経験させる方法だ。これが成功すれば、上の者と同じ階梯に達することができる。ただ、臓器への負担が大きい、特に心の臓への負担は凄まじい。失敗すれば死んでしまう」


「・・・・・・」

 四人は黙り込んだ。


「それって、邪道なやり方ですよね」と、元から霊力の高いモンシェンが言った。

 

 マルテンも、質問した。

「死ぬってどのくらいの確率なんですか?」


「最近の魔導士は、試そうともしないのだから、そこから推測できるだろう」

 

 先生の答えに皆は顔を見合わせ、やはり危険な修行方法なのだと納得した。


「段階を踏まないで数段上の境地へ達しても、受け入れる準備ができていなければ、経絡が破壊され、内傷を起こし死んでしまう。死を逃れても、魔境に落ち異形に変わることもある。一方、行法を指導する相手方も、相当な能力がなければ務まらない。経絡を繋げ、風を交換し合う間に異常があれば、その影響を、指導する方もまともに受けてしまう。双修は非常に危険度の高い行法なのだ。軽々しく行うべきではない」

 

 タロナは霊力が低いので、ハンツォンの言葉と、曽祖母から聞いた話に一瞬期待した。けれど、リーユエンの説明で、これは到底無理だな、と、諦めた。

(でも、先生の説明、口調は淡々としているのに、妙に生々しい感じがする。どうしてかな?経験者なの?まさかね・・・)

 

 その夜、魔導士塔に戻ったタロナは、曽祖母宛に長い長い手紙を書いた。就寝直前まで、風呂に入った以外の自由時間を全て費やすほど集中して書いた。


 北嶺山中、西北の果てにあるウラタナ村は、ようやく雪解けの季節を迎えたところだ。

 

 そこへ、最北の果てバルガン湖畔を浮遊中の魔導士学院島からと、プドラン宮殿宰相府儀仗局からの書簡が配達された。配達人は、首周りと背中が白く、他は艶のある黒い羽のコクマルカラスだった。


 書簡を受け取ったのは、タロナの母のアイナだ。アイナは白いエプロンで手を拭き、二つの書簡を見比べた。

「都からの書簡は金の縁取りがあって、随分立派だね。あら、これは大お祖母様宛だわ、それに、これはタロナからだわ、まあ嬉しい。でも、これもまず大お祖母様に読んでいただこうかしらね」

 

 ウラタナ村は、北嶺山中の谷間の村で、村人の大半は雪ウサギ族だ。

彼らの住居は、斜面に掘られた横穴の中にあった。冬の厳しい寒さを防ぎ、短い夏の間は、永久凍土から湧き上がる水から湧き出す、吸血性の蟲から身を守る、居心地の良い住居だった。


 地下の通路を通り、アイナは診療所にいるタルタネアを訪ねた。ちょうど、午前の診療を終え、休憩中であったタルタネアは、まずタロナからの書簡をペーパーナイフで開けた。診療所内の自分の机の引き出しから、小さな丸縁眼鏡を取り出し、顔にかけるといそいそと読み出した。


「ふむふむ、おや、ひどいね、教師二人が、お前たちは出来が悪いからって、宿舎から追い出したそうだよ。ひどい連中だ。一度、学院長へガツンと文句を言ってやらねばならないね。

 おやっ、やっと担任が決まったのだね。その先生が、あの子たちを魔導師塔へ連れて行ったそうだ。朝ごはんは平たいパンを、担任と一緒に交代で焼いているそうだ。授業は、調息と導引が中心だね」

 

 ぶつぶつ言いながら読み進めていたタルタネアは、タロナの記す、リーユエンから教えられた調息法や導引術の授業内容を、熱心に読み出した。


「どうやら、タロナは良い先生に受け持ってもらえたようだね。これなら、学院長にガツンと文句を言うどころか、感謝しなければならないよ。それに、これは傑作だ。この子達を追い出したエスメルとかいう教師は、タロナの担任と模範試合をして完敗したそうだ」

 

 タルタネアは、柔和な笑みを浮かべ、アイナへ読み終えた書簡を手渡しながら、

「担任は、リーユエンという名だそうだ。あの子の書き振りでは、随分若い教師のようだが、あの子の書簡の内容通りなら、指導内容は行き届いていて、第六階梯到達者と遜色ないと思うよ」

 そう評価しながら、タルタネアは、儀仗局からの書簡を手に取った。

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