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魔導士学院生は、今日も元気ですっ!(落ちこぼれ呼ばわりされても、くじけません)  作者: nanoky


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 ワリーロフの煮え切らない態度に、ツカリーゼは、魔王そのもの、凄みのある笑みを浮かべ、奥の手を出した。

「はっきりしない人ねぇ、あなたのお人形作っちゃおうかしら」

 

 ワリーロフは茶碗を受け皿に乱暴に置くと、立ち上がった。

「やめろっ、私の人形は作るなっ」

 

 傀儡術の使い手であるツカリーゼの作る人形は、霊器となる。守護の力を込めることが多いが、その気になれば呪いを施せるし、彼ほどの使い手なら、この霊器を媒介に、本人が秘密にしていることを聞き出すことさえできるのだ。


「あら、先生がはっきり説明してくださらないから、私は人形を作る手間をかけようかな、と思っただけよ。あっ、そうだ、リーユエン先生の人形を作ればいいんだわ、それで、彼女の主人はどんな人なのって聞いちゃおうかしら、グエッ ぐ、苦しいっ」

 

 彼女の主人は、と言った瞬間、ワリーロフは両手を伸ばし、ツカリーゼの襟元を掴んで締め上げた。ワリーロフの顔は真っ青で、目が血走っていた。


「ダメだ、それだけはやめろっ、リーユエンは手を出して良い存在ではないのだ。やめておけっ、これ以上は話せない。私は師父と約束しているので、もうこれ以上は話せない」

 

 ツカリーゼは、自分の襟首を掴んで揺さぶるワリーロフの手が震えていることに気づいた。

(ワリーロフ教授がこんなに動揺するなんて・・・)

「離して、苦しい、分かったわ、分かったから」

 

 ツカリーゼは、ワリーロフを振り解くと、早々に研究室から退散した。

 

 研究室から出て廊下を歩きながら、ツカリーゼは乱れた髪と襟元を直した。

(結局、大したことは聞き出せなかったわ。ワリーロフったらあんなに動揺して、何だか怯えているみたい、どうなっているのよ。ただの若い娘でしょっ、そりゃ、魔導術の使い手としては規格外の凄さだけれど、どうしてあれほど動揺したのかしらねえ、相当偉い主人持ちなのかしら・・・玄武八大公の誰かとか?・・・ハハッ、まさか・・・そもそも紐付きの魔導士を、あの学院長が軽率に教師に任命するはずないだろうし・・・変よねぇ)

 

 ワリーロフからは止められたけれど、ツカリーゼはリーユエンの昔の姿と今の姿の人形を作ってみようと思った。


 図書館の別館、自習室の一室で二回生第三クラスの生徒たちは、『詳説 陰陽脈絡経絡図』の大判本の前に集まり、のぞき込んでいた。


「導引の四神獣(よんしんじゅう)大鵬(たいほう)(けん)については、順調に学習が進んでいるが、チャクラを解放し、中央経絡へのつながりを意識するための調息行気に手こずっているようだね」

 

 リーユエンの指摘に、円テーブルの周りに腰掛けた五人の生徒たちは、真剣な面持ちで頷いた。

 

 マルテンが、「四神獣大鵬拳の導引は、体を動かすから楽しいし、覚えやすいです。でも、調息行気は、調息法で行う観想法との違いがよくわからないんです」と、話した。

 

 他の四人もうんうんと頷いた。


「では、これを見て」と、リーユエンは、『詳説 陰陽脈絡経絡図』へ、ごく微小な魔力を送り込んだ。


「おおっ」

 みな、一斉にどよめいた。


 詳細に記された色付きの陰陽脈絡経絡図が紙面から捲れ上がり、ユラユラと立ち上がり、それはたちまち立体化して目の前に展開されたのだ。

 

 リーユエンは、一尺弱の指示棒を取り出し、頭部を指した。

「まず、チャクラの位置を確認しよう、この立体図の中で、銀色に輝く球体、花びら模様が刻まれている、これがチャクラで、体の中の七箇所に位置する」

 

 リーユエンは、絡み合う経絡の中から、銀色の柔らかな光を放ち風車のように回転するチャクラを順番に指し示した。

 

「四神獣大鵬拳の導引術を最初に行うのは、体の筋肉をほぐし、関節を緩め、経絡の循環を盛んにするためだ。そして、その後、調息を行うのは、精神状態を明鏡止水境にまで落ち着かせ、チャクラと経絡の動きを自身で感じ取れるよう集中するためだ。だから、この三科目の履修速度には、ばらつきがないことが望ましい。選り好みをすると、チャクラと経絡の動きを知るための妨げとなってしまう」

 

 皆、理由を説明され、目を見開いて頷いた。皆の反応を確認し、リーユエンは、また頭部へ指示棒を向けた。


「普段の頭部は、眼・耳・鼻・舌・身から入ってくる外部の情報、色・声・香・味・触の刺激に常にさらされ、またそこから生じるさまざまな意識・感情の生成消滅が絶えず繰り返される状態だ」と、リーユエンが説明し、指示棒が軽く頭部に触れるや、そこが、赤、青、緑、黄、白と目まぐるしく色を変えながら光った。


 さらに続けて、

「そこで、観想を行い、明鏡止水境に至ると」と、また頭部を指示棒が軽く触れた。すると、突然、目まぐるしかった光が消え、水色の柔らかな光が現れた。


「これが、仮に明鏡止水境に至った状態としよう。この境地に至れば、外部の情報、十二処すなわち、眼・耳・鼻・舌・身及び色・声・香・味・触から解放され、これによって初めて自分自身のチャクラと経絡の動きを感じることができる。調息行気は、明鏡止水境にある精神と同調し、肉体の作用を鎮め、チャクラと中央経絡を感じるための行法だ」

 

 リーユエンが、立体図の前で指示棒を軽く振った。すると、チャクラは輝き回転をはじめ、経絡は脈動し、青白い光が水のように流れ始めた。


「うわ、すごく綺麗」

 

 タロナは目を輝かせ、立体図を見つめた。他の生徒たちも、その神秘な眺めにしばらく魅入られた。


「階梯が上がるにつれ、修行内容は増えてくるが、二回生の段階では、まず、経絡の絡まる場所にあるチャクラを意識し、中央経絡をしっかり己自身で捉えること、

 これが現段階での課題だ。魔導士の階梯は、段階ごとに修行が積み重なっていく。

 先のことを説明すると雑念となり、修行の妨げとなるので、現段階の調息行気では、チャクラを意識し、中央経絡を捉えることに集中しなさい。何か質問はありますか?」

 

 ハンツォンが、恐る恐る挙手した。

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