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本編の論文題名の◆の伏字ですが、特別にお教えします。
「太極石」、「法力」、「玄武甲羅」です。
やばい内容の論文ばかりですね〜、イヒヒヒッ
リーユエンは、生徒を見ながらつぶやいた。
「今から塔へ帰っても、どうせ、夕飯を食べるために戻ってくるのだから、時間がもったいないな」
それを聞きつけたロージーが目を輝かせた。
「そうですわ、敷地の中を散策しましょう。夕飯の時間までは、自由時間にしましょうよ」
リーユエンは、授業をサボろうと企むロージーに、目を眇めた。
ロージーは、それでも厚かましく、手を合わせ、目をキラキラさせて
「ねっ、いいでしょ。私たち、寄宿舎を追い出されてから、敷地の中をゆっくり散策することもできなかったのですから」と、訴えた。
リーユエンはため息を吐いた。寄宿舎を追い払われ、遠い魔導士塔にいて、学院内を見て回れなかったと訴えられると、可哀想になったのだ。
「では、自由行動にしよう、夕べの鐘がなったら食事をし、その後、食堂前の広場に集合して戻るから、それまで自由にしなさい」
タロナは、リーユエンを見上げて質問した。
「先生は、何をするんですか?」
「私は、図書館へ行く。導引術の本を見る」
それを聞いたタロナは目を輝かせた。
「それ、私も見たいです」すると、モンシェンもマルテンも
「僕も見たい」「俺も見たい」と、言い出した。
リーユエンは、
「図書館へ行きたい者はついてきなさい」と言い、歩き出した。
黙っていたハンツォンは、皆について行った。一人残されかけたロージーは、
「皆様お待ちになって、私も気が変わりました。やっぱり図書館へ行きます」と、後を追いかけた。
図書館は、六角形、六階建ての本館と、六角形の各面から伸びる廊下の先にある六つの分館からなる。
リーユエンは本館に入り、まず受付へ行った。
本館は中央が吹き抜けで、六箇所に階段があり、各階は壁とは垂直に接するよう書架が規則正しく配置され、無数の巻き物や書籍が並んでいた。劣化を防ぐためか、窓は一切なく、書架ごとの横に取り付けられた、魔導ランプの柔らかな光のみが光源であった。
一階の中央の、巨大な六角形のカウンターへ行くと、リーユエンは、導引術関係の図書目録を調べ、閲覧希望図書の申請書を記入し、それから分館の中にある学習室の利用申請を出した。
しばらく待つと司書が、彼女の希望した書籍と、学習室の鍵を持ってきた。リーユエンは本と鍵を受け取ると、分館の一つへ向かった。
本館の外に出ると、青々とした芝草と、北荒松の林が広がり、爽やかな風が吹き通った。生徒たちは、自分たちを寄宿舎から追い出した、憎っくきエスメル先生に勝利したリーユエン先生を、尊敬の眼差しで見つめながら、後についていった。
彼らが本館から出ていったのと入れ違いに、魔王のような男が入ってきた。
「あら、ツカリーゼ先生、何か調べ物ですか」
司書の一人が彼に声をかけた。ツカリーゼは、声を潜めて尋ねた。
「リーユエン先生の書いた論文の目録ってあるかしら、あったら閲覧したいのだけれど」
「リーユエン先生ですか、さっきこちらに生徒さんと見えられてましたよ。あの先生の書いた論文ですね。お調べしますから、少々お待ちください」
カウンターの前で待っていると、先ほどの司書が戻ってきた。
「こちらが一覧表です、驚きましたね、禁書指定ばかりですよ。まさか、黒魔導術の対抗方法とかをご研究なのですかね?」
「えっ、全部禁書なの?」
ツカリーゼも驚いた。
「あっ、でも二つだけ、解除の申請が出ていますね」
司書は、論文目録を手渡した。ツカリーゼは、カウンターの周りの長机の一つに席を取り、目録に目を通した。
『竜石錬成による瞬間錬成兵器術』(八百七年)
『八卦法陣法の連続発現と、展開・組合せの可能性の一考察』(八百七年)…閲覧禁止解除申請中
『幾何学図面応用による八卦陣暗記法』(八百八年)…閲覧禁止解除申請中
『畳地ニ点連結法◆◆◆利用による到達点延伸について』(八百十五年)
『陰陽両極循環円の作動による◆◆一点衝突による瞬間移動について』(八百十六年)
『◆◆◆◆の強度と破壊到達点について』(八百十六年)
「はあ?題名まで伏せ字ってどういうことよっ」
ツカリーゼは驚いたが、目録の下欄に注意書きがあった。
「何々、『竜石錬成による瞬間錬成兵器術』は第四階梯到達者以上は閲覧を許可する、
◆部分及び論文の閲覧は、第六階梯到達者のみ閲覧を許可する、
なお『◆◆◆◆の強度と破壊到達点について』は、第七階梯到達者のみ閲覧を許可する…
何なのよ、これって、第七階梯なんて、この二百年余り到達した魔導士なんて一人もいないじゃないの、そんなの、齢三百年越えの長老以外閲覧できないってことなの…一体どうなっているのよ」
魔導士には、修行の進捗、魔導術への理解によって、階梯と呼ばれる階級があった。
魔導士学院卒院者は、最低で第二階梯もしくは優秀なら第三階梯への到達が必須で、そこまで到達できない者は卒院が認められず、中途退学するしかないのだ。
ところが、ここからの修行はさらに厳しく、ツカリーゼも漸く第五階梯に達したところで、魔導士学院の中ですら、第五階梯に達する者は数人しかいないのだ。
「ヨーダム太師が第九階梯、学院長が第八階梯、シャオロンポウ教授は確か第六階梯到達者だったはず。あと、そうだわ、冶金錬成学科指導教授のワリーロフ先生は第六階梯到達者だったわ。
この論文を書いたリーユエンは、第六階梯到達以上だってこと?
でも、あの子は八百七年に卒院したところなのよ。たった七、八年で第六階梯に進むなんて、絶対無理よ。どんなに早くても数十年どころか百年以上かかるはずよ」
ツカリーゼは、目録を睨んでしばらく考え込んだ。
(そうだわ、ワリーロフ先生もヨーダム太師の直弟子だったわ。それなら、リーユエンの師兄よね。あの人に訊いてみようかしら)




