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魔導士学院生は、今日も元気ですっ!(落ちこぼれ呼ばわりされても、くじけません)  作者: nanoky


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 ツカリーゼがつぶやくと、耳聡いシャオロンポウ教授がささっと近寄り、

「ツカリーゼ先生、あの論文を書いたのは、リーユエンなのじゃ」と、教えた。

 

 突然、傍に湧き出た山羊髭教授にギョッとしたツカリーゼは、身を仰け反らせながらも好奇心が勝り質問した。


「あの先生が書いたの?」


「そうじゃ、わしの先任の主任教授が、理論走るばかりで荒唐無稽、実戦向きではないと禁書指定にしてしまったのだ。だが、本人は立派に使いこなしておる」と、得意(ドヤ)顔で解説した。

 

 ツカリーゼは突如思い出した。

「リーユエンって、あの火傷のあったおチビちゃんなの?」

 

 今から九年余前、シャオロンポウ教授の元に通う、小柄な学生がいた。右側の顔は人形のように整っているのに、左側は焼け爛れ紫色に変色していた。どうしたわけか、その学生は、用心深い野生動物みたいにツカリーゼを徹底的に回避するため、遠目に見ることしかできなかった。ただ、法陣八卦法の講義には熱心に通っていて、よく見かけたのだ。


「あのおチビちゃんが、あんなに立派になったのね、でも男の子だと思っていたわ。女の子だったなんて・・・ちょっと意外ね」


 演習場の中では、エスメルが気を取り直し、「火雷召喚」と、叫んだ。頭上には、火炎をまとい、雷を放つ竜が現れた。

 

 リーユエンは、「(ディィ)(フン)(シュン)」と唱え、「地より風を上らせ、火を解放せよ」と命じた。鼎の周りから凄まじい上昇気流が沸き起こり、鼎の中の火精は風に解放され一気に上昇するや、上空で逆巻く火の渦となった。


「見ろっ、エスメルの火精が、リーユエンに操られているぞ」

 

 エスメルは、火精の支配権を取り戻そうとしたが、強力な抵抗にあった。上空に待機させる竜を制御するのに、膨大な力を費消するため、取り戻すことを諦めるしかなかった。けれど、火竜の攻撃力、破壊力は絶大なので、自分の勝利を確信していた。


「火竜よ、攻めよ、焼き尽くせっ」

 エスメルは、火竜を、リーユエンめがけて放った。

 

 リーユエンは、両手を天へ高々とあげ、「(レイ)(ティアン)(ダァ)(ヂュアン)」と唱え、「風と火よ、天へ登り火雷をなし、もって火竜を駆逐し、天地の歪みを正せっ」と、鋭い声で命じた。

 

 新たな法陣、金色の光を放つ「雷天大壮」の陣が出現し、法陣は旋回しながら水平に倒れ、急上昇した。そして、上空で、リーユエンの操る風精と火精に融合し、火竜の真上で停止した。その瞬間、爆発的な光が下方向へ広がり、雷鳴の大音響が轟き渡った。

 

 エスメルは眩しさに目を瞑り、凄まじい衝撃波の直撃を受けて「キャアーッ」と悲鳴をあげた。

 

 演習場の中は、一時閃光とその後に湧き上がった煙と土煙で、何も見えなくなった。

 

 学院長が、結界障壁担当の教授へ、解除を指示した。結界障壁が解除されると、土煙がドット外へ流れ出し、金属の焼ける匂いがあたりに立ち込めた。


「うわっ、雷精がこんなに高密度に集結するなんて、初めての経験だよ」

 

 障壁を解除した法陣魔導術部実践科教授トロフィーセは、丸メガネを片手でずり上げながら、つぶやいた。空気中に、まだ雷精の微弱な放電が残り、強い炭酸水を口に含んだ時のように、皮膚をピリピリと刺激した。

 

 エスメルは地に倒れ伏し、リーユエンは最初と同じ場所に何事もなかったかのように立ち尽くしていた。勝者は、誰の目にも明らかだった。

 

 学院長が立ち上がり、救護班の出動を命じた。救護班は、担架を運び入れ、エスメルを担架へ乗せた。救護班の者へ、リーユエンは、「落雷の衝撃で気を失っただけで、怪我はさせてませんから」と、報告した。

 

 学院長が見学席から下へ降り、演習場の中のリーユエンへ歩み寄り、隣に立つと、見学席へ向かって

「勝者はリーユエン」と、高々と宣言した。


 第三クラスの生徒たちは、

「やった、リーユエン先生勝った」と、皆、歓声を上げた。

 

 あたりは騒然とし始めた。


「おい、あれ見たか、八卦陣を連続発動させるなんて、聞いたことがないぞ」


「それに、あれって全然仕込みなしだよな。八卦図を予め描きもしないで、どうやって発動させたんだ」

 

 学生たちは、見たこともない術の発動に興奮し、リーユエンを質問責めにしようと、見学席から我先にと演習場の中へ入ろうとしたが、突然、動きを止めた。サラザルの当主が動き出したのだ。

 

 リーユエンは、土埃りで白くなった魔導士マントを脱ぎ、バタバタと振り埃を落とした。そこへ、サラザル家の当主が見学席を降り、リーユエンに向かって歩いてきた。学生たちですら、魔道士界に隠然たる勢力を張り巡らせるサラザルの当主デリオンの動きに、恐れ慄いた。その上、さらに、ドロメル家当主グレゴルまでもが立ち上がり、近寄った。

 

 デリオンはにこやかな笑みを浮かべ、

「リーユエン先生、お疲れ様、先程は失礼なことを言ってしまった。お詫び申し上げる。さすがは、ヨーダム太師の高弟だ。見事な戦いぶりだった」と、声をかけた。

 

 リーユエンは、マントを手に持ったまま、揖礼し

「恐れ入ります」と、言葉少なに応えた。


 そこへグレゴルも近寄り、

「リーユエン先生、エスメルを打ち負かすとは大したものだ。その術は一体誰に師事して習ったのかね」と、尋ねた。


 その質問には、横合いから学院長が

「リーユエンは、二回生の時、八卦法陣法について、シャオロンポウ教授の元で研鑽に励んだのだ」と、説明した。


 そこへ神出鬼没のシャオロンポウ教授が現れ、見学席の方を見回し、大声で

「『八卦法陣法の連続発現と、展開・組合せの可能性の一考察』及び『幾何学図面応用による八卦陣暗記法』この二論文を、次の討論会で発表する予定だ。皆、それを読めば、今日の連続展開について、理解できるようになる。まあ、実践できるかは別問題だがな」と、宣言した。 

 

 リーユエンは、その場はシャオロンポウ教授に任せればいいやと思い、そっと集団から離れ、第三クラスの見学席へ戻った。

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