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魔導士学院生は、今日も元気ですっ!(落ちこぼれ呼ばわりされても、くじけません)  作者: nanoky


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(うふっ、無表情だと思ったけれど、結構表情あるじゃないの。ますます気に入ったわ。ほうら、私のことを睨みつけた、あれ?目を逸らしたわ、どうして???)

 

 話に割り込んできたツカリーゼを睨んだリーユエンは、ゲッと思った。学院に在籍していた頃、他学部の学生から、『乙女のツカリーゼ』の話を聞いていたから、目をつけられたら、まずいと思ったのだ。


(思い出した、あのやたら濃い顔の大男は、傀儡(くぐつ)術教授のツカリーゼだ。履修しなかったから忘れていたよ。あんなのに目をつけられたら、鬱陶しくて大変だぞ)

 

 見かけは男らしい軍人のようなのに、とても繊細で傷つきやすい乙女な性格で、(こじ)れるととても面倒な教授というのが、学生たちの噂だった。最短で卒業しようと、単位取得を冷徹に計算していたその頃のリーユエンは、教授の人となりについても情報収集に余念がなかった、そしてツカリーゼ教授の性格には難ありと判断し、傀儡術を選択しなかったのだ。

 

 リーユエンはツカリーゼの注意を引くまいと、そろそろ辞去しようとしたのに、学院長まで口を挟んできた。

「ツカリーゼ教授、例外とは具体的にはどういう事ですかな」


「私闘はもちろん禁止だわ、でもね、模範演技を二人で行うってことで、模範試合を行えばいいんじゃないの。そうすれば、エスメル先生の気も済むでしょう」

 

 リーユエンはチッと舌打ちしたいのをこらえた。

 模範試合なんて、面倒な事はやりたくなかった。だいたいエスメルごとき、六尺棒を振り回せば瞬殺できるのに、そんな面倒をかける意味がわからない。


 ところが、学院長は大乗り気になった。

「なるほど、それは良い考えだ。二人に模範演技として、試合を行ってもらいましょう。他の先生方や、学生・生徒たちにも、良い刺激になるじゃろう」

 そして、模範試合は、一週間後に行われることとなった。


 その翌日から、魔導士塔の改修工事が始まった。

 パオディンとヨーディンは、森の中へ分け入り、枝打ちを行って間伐材を手に入れ、それを法術で手早く乾燥、生木を製材できる状態へ変え、適当な長さに切り揃え、工事用の足場を組み始めた。


 その音を消すため、リーユエンは魔導士塔全体に防音結界を施した。そして、静かになった南側の庭園で、五人の生徒たちに調息法の指導から始めた。

 

「まず結果趺坐を行い、息を吐き出し、ゆっくり吸う。呼吸が落ち着いてきたら、目を瞑りなさい。そして、観想を行います。

 今日は、心の中に真円を描きなさい。心の中は、波一つない鏡のように平らかな水面、そこへ真円を描くのです。

 慌てる必要はありません。真円が現れれば、自身で真円であることがわかります。意識が乱れたら、また目を開け、呼吸を整えることから始めなさい。

 うまくいかなくても焦る必要はありません。何度でもやり直しなさい。ただ、真円を観想し続けなさい」

 

 静かな口調で語るリーユエンの指示が、生徒たちの心の中へ、土に染み込む雨のように届いた。いきなりそんな事を言われたら、こんな短調な作業はできないと不満に思うところだが、昨日面談で色々説明を受けたので、皆、納得しており、集中して取り組んだ。

 

 第三クラスの、育ち盛りばかりの生徒たちの栄養状態を心配した食堂の主任調理師が、昼食を作ってくれることになった。お昼前、ソアラスは食堂へ昼食を受け取るため、空へ飛び立った。それと入れ違いに、翼のある騎獣に乗った魔導士が一人、南の庭園へ降り立った。

 

 降り立ったのは、鉄灰色の山羊髭を生やした初老の、小柄な魔導士だった。その姿に気がつくや、リーユエンは素早く近寄り丁寧に揖礼した。


「シャオロンパオ先生、いかがなさいました?」


「急に訪ねてきてすまない。君と二人で話がしたくてな、少し時間はいいかね」

 

 リーユエンは、シャオロンパオを北側の庭園へ案内した。

 シャオロンパオは、法陣魔導術学部理論科の指導教授だった。かつて、在学中リーユエンを指導した恩師でもある。

 

 東屋に通されたシャオロンパオは、あたりを見回した。

「モーズレイの塔に目をつけるとは流石だ。私も、研究職に退いたら、ここを使わせてもらおうかと考えておったのだ。あいつが西側の庭園に作った風呂はもう使ったのか」

 

 シャオロンパオの問いにリーユエンはうなずいた。

「はい、毎日、生徒も入浴しています」」


「そうか、塔の中が嵐で壊れてしまったのは残念だが、改修すれば、また居心地が良くなるだろう」

 

 リーユエンは、土瓶から白湯を茶碗へ注ぎ、テーブルへ置いた。

「今日は、どのようなご用件でしょうか?」

 

 シャオロンパオは、丸縁メガネがずり下がったのを押し上げ、リーユエンを見た。

「今度、エスメル先生と模範試合をするだろう。そのとき、法陣八卦法で戦って欲しい。それをお願いしにきた」

 

 リーユエンは、意外に思い、

「法陣八卦法で戦うのですか。随分、派手な戦いになりますよ」と、言った。


 教授は頷き、

「構わん、派手にやらかしてもらった方が良い。最近の学生は、理論より実践ばかりやりたがって、法陣八卦法を疎かにしがちだ。この際、ドロメルの一画を崩してでも、我が学問の優位性を明らかにしたいのじゃ」と、応えた。


 そして、テーブル越しに身を乗り出し

「最近、あの両家がいがみ合うせいで、攻撃魔法ばかりが重視されがちで、理論面の研究が停滞しておる。しかし真の攻撃魔法は、理論の裏付けがなければ成り立たぬものであり、最大の効果は期待できない。

 あやつらは、持って生まれた属性と己の霊力や魔力だけの攻撃だ。それでは、魔導術の真髄にはいつまで経っても触れる事はない。だから、法陣八卦法で戦い、その効果を皆に知らしめてやって欲しい」と、熱心に訴えた。

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