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魔導士学院生は、今日も元気ですっ!(落ちこぼれ呼ばわりされても、くじけません)  作者: nanoky


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 ロージーと話す機会を狙う第二クラスのゲレッツォが、斜め向かいに腰掛ける彼女へ話しかけた。

「ロージー、おまえたちの後ろに木偶(でぐ)の坊みたいに突っ立っている兄ちゃんは、誰なんだ?」

 馴れ馴れしい口調で話しかけてきたゲレッツォに、無礼者めっ、とロージーはムッとしたが、ここでは身分を明らかにすることはできないのだ。引き攣った微笑みを浮かべ、ゲレッツォへ

「彼はソアラス、リーユエン先生の契約魔獣ですわ、昨日十八号が先生との契約を望んで、リーユエン先生が名を授けたのです」と、紹介した。

 ゲレッツォは、目を見開き、口も開けた。

「十八号って、学院で最強の魔獣だろ、おまえらの担任、あんな凄い奴を使役するのか」

 驚き騒ぐ他クラスの生徒たちへ、ロージーはドヤ顔になった。

(そりゃ、あのリーユエンですもの、うちのお父様はメロメロで、お兄様はいまだに未練たっぷり、猊下だって頭が上がらない明妃ですわよ。魔獣の一頭や二頭、従えて当然ですわよ)


 湯気の立つスープと前菜の盛り合わせが、傀儡術専門のツカリーゼ教授が制作した、召使人形によって、次々に運ばれ、給仕されていった。パオディンは好奇心いっぱいで、辺りを見回した。

「へえ、魔導士学院ってなんか楽しそうなところだな。法学院は辛気臭いから、こっちで勉強したくなってきた」

 リーユエンは、小声で

「馬鹿なことをおっしゃらないで、ちゃんと法学院へ入学してください。離陰大公閣下や、猊下の、お顔を潰すことはどうかなさらないでくださいませ」と、ささやいた。

 パオディンは口を尖らし

「わかったよ。塔の破損箇所を直して、生徒が住める状態にしたら、ここで事前修行をして、法学院へ入学するよ」と、返事した。内心では、

(へへっ、明妃が俺のことを心配してくれてる、なんか嬉しいな)と、ニヤついていた。

 

 エスメルは、リーユエンの方へ何度も視線を飛ばし、いら立っていた。十八号は、自分が目をつけていたのに、それを横から()(さら)うような真似をされて、怒りがおさまらないのだ。それなのに、見すぼらしい貫頭衣姿の若者と話しこんで、こちらの方を全然見ないのだ。緑色の瞳は剣呑な光で、ますますギラついた。


 給仕が済むと、学院長が立ち上がり、新しく赴任した教師としてリーユエンを紹介した。

「休職中のガンダル先生に代わり、魔導士概論の臨時講師であるリーユエン先生が赴任することになった。八百七年の卒業生だ。よろしく頼む」

 たちまち、教師の間にざわめきが広がった。

「八百七年の卒業生って、あの『竜石の錬成師』か」

「凄いのが赴任したなあ」

「リーユエンって、あんなに背が高かったか?」

 ざわめきの中、リーユエンは立ち上がり、

「二回生、第三クラスの担任リーユエンです、よろしくお願いします」と、一礼した。

 ペリオンは、『竜石の錬成師』という言葉が聞こえハッとした。

(『竜石の錬成師』って、確か最短でも六年かかる学院を、たった二年で試験を突破して卒業した伝説の神童じゃないか。確か分家のポルブが八百五年に入学し八百十四年の卒業生だったな。あいつに聞けば、情報が集められるか・・・)

 最短は六年だが、実際のところ、落第が多く、卒院するまでに、大多数は八年から十二年かかると言われる魔導士学院で、ただ一人、たった二年で、しかも八百七年の首席で卒業したのがリーユエンなのだ。当時でも、二年で卒業なんて有り得ない、何か不正行為があったに違いないと噂になったのだ。けれど、学院長は何も言わないし、他の教授たちも、リーユエンは実際に試験を受け、素晴らしい成績を残したと証言した。リーユエンは入学時点ですでに基礎教科は指導の余地がないほど完璧に習得し、いきなり専門課程に入りそれを二年で終わらせたのだ。どうしてそんなことが可能だったのか、是非理由を探り出したいと思った。

(秘密を探り出して、同じように指導して神童を生み出せば、私の教師としての評判が高まる。うまくいけば、上級教育課程の主任指導教官あわよくば教授の座だって狙えるはずだ)

 ペリオンは、俄然リーユエンへの関心が高まった。

 教師席のそういう騒ぎは、上級生のテーブルに阻まれ、二回生たちの耳にまで達することはなかった。ただ、皆、リーユエン先生が紹介されているなと思う程度だった。

 

 傀儡術教授のツカリーゼを、学生たちは密かに「魔王」とあだ名していた。大柄で、派手な目鼻立ち、黒々と太い眉ははっきりした輪郭で、鼻も口も大きく、毒々しいほど派手で、学生たちの乏しい想像力で考える、地下世界に君臨する魔王にイメージがピッタリなため、そのように呼ばれていた。けれど、ツカリーゼは恐ろしい外見に似合わず、中身は繊細な手芸乙女で、傀儡人形作りが研究と趣味を兼ねた生きがいだった。そして、今日、久しぶりに、ツカリーゼは創作意欲を掻き立てられる逸材を見出したのだ。

(あの()、去年、後半の半年だけ、魔導士学概論を臨時で受け持った子ね。そばで見るとすっごく整った綺麗な顔だし、プロポーションも抜群にいいじゃない。創作意欲が俄然掻き立てられるわ)

 ツカリーゼは、こっそりリーユエンを観察し、あとで人形を作ろうと思い立った。

(私の創作意欲を掻き立てるのは、大抵男なんだけれど、女で、創作意欲を掻き立てられたのは、明妃殿下以来だわ。先月の復位式パレードで見て、天啓を受けたと思ったのよね。それが、こんなに短期間のうちにまたもや女人形を作りたくなるなんて、私ったら、どうしちゃったのかしら・・・)

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