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魔導士学院生は、今日も元気ですっ!(落ちこぼれ呼ばわりされても、くじけません)  作者: nanoky


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 リーユエンが学長室で話し合いを終えた頃、彼女の指示通り、ソアラスは五人の生徒を魔導士塔から、海岸部の丘陵地帯に立つ、学院の食堂舎へ運ぶため飛行中だった。その背には、小柄なタロナ、その後ろにタロナより大柄なモンシェン、さらにその後ろにはさらに大柄なロージーが乗り、彼の丈夫な、猛禽の足のようにかぎ爪のついた前足には、右前足にハンツォン、左前足にはマルテンがしっかりつかまれていた。

(ヒエェー、地面が斜めに見える。もう、目が回りそうだ。ソアラスのやつ、女の子ばっかり背中に乗せたがって、前足でつかむのに、体重差が大きいとバランスが悪いからって、俺とマルテンをつかんで飛ぶとはあんまりだよ〜)

 ハンツォンは、タイ鳥族だ。

 翼があるのだから、飛べるのが当然だと思われがちだった。けれど、タイ鳥族は、体の大きさが災いし、転身ができても地上を走るだけで、筋力が付かなければ飛ぶこともできないのだ。ハンツォンも、格闘技も武術も苦手の筋力不足で、ヒョロヒョロした痩せっぽちなため、転身したら立派な翼と見事な尾羽のあるタイ鳥へ変われるのだが、今だに飛べないのだ。その上、情けないことに高所恐怖症気味だ。背中に乗り、足場が安定していればまだしも、上半身をかぎ爪で握りしめられ、足と頭をダランと下げた状態では、迫ってくる地面に恐怖するしかなかった。

 一方、山の谷間で岩場を飛び跳ねて育ったマルテンは、左前足で握られたまま、地上の景色を見回しご機嫌だった。

(さすが魔獣だ。飛ぶのも早いし、一気に五人全員運べるのだから、これなら、毎日夕飯にはありつけそうだな。それにこの絶景、上からだと、中央山嶺の頂上から、島の端まで浮遊島の全景が見えるんだから、素晴らしいよ。でも、雨の日は諦めるしかないかな、濡れるの嫌だし・・・)

 

 ソアラスは、食堂前の敷地にゆっくり下降し、ごく低い高度で羽ばたきながら停止すると、まず前足を開き、この二人を地上へ飛び降りさせた。それから自身も着地した。

 ソアラスが食堂前の広場に着陸したとき、ちょうどそこへ二回生の生徒たちと担任二人が来合わせた。第二クラス担当のエスメルは、夕日を背に降り立った魔獣を見て、思わず叫んだ。

「十八号じゃないのっ、どうして解放されたのよ」

 昨日、魔獣が逃げ出したと一時騒然となり、その後、魔獣は確保されて、騎獣舎へ戻されたはずだった。

 エスメルの後ろから、第一クラス担任のペリオンが現れた。

「あれ?あの豹頭に蝙蝠の翼、禍々しくも凶悪な姿は、悪名高い十八号じゃないか」

 ペリオンは、魔獣の、黄金の眸が光る獰猛な顔を見上げながら呟いた。

 十八号は、五年前に、ピセツキー教授が、実技演習中に、北嶺の奥地で生捕りにした魔獣だった。改良調整を施し、調整魔獣化は完了したが、野生味が他の魔獣より強く残ってしまい、誰にも懐かなかったのだ。しかし、知能が高く、戦闘能力も高い十八号を、自分の使役獣にしたいと狙っている者は多く、エスメルもその一人だった。

 そこへ、学院長、リーユエン、パオディン、ヨーディンが現れた。ソアラスは、いち早くリーユエンの姿を見つけ、そばへ近寄り、人形になると鼻面を彼女の肩へ擦り寄せた。

「主〜、ちゃんと生徒たちを連れてきたぞ。褒めてよ〜」

 いきなり黒髪の見目麗しい若者に姿を変えた十八号を見て、エスメルの顔色が変わった。

「どういうことっ、リーユエンにくっついた?人形になったってことは、あいつが名付け親になったということなのっ」

 エスメルは、学舎から移動してきたピセツキー教授を見つけ、ものすごい勢いで走ると、肩を掴んで話しかけた。

「教授っ、十八号は(あるじ)持ちになったの?どういうことよ、私が主人になりたいからってお願いしていたのに、勝手に主人を決めるなんて」

 エスメルの凄まじい剣幕に、教授は思わず後退(あとじさ)りながら、両手を胸の前でひらひらさせ、

「エスメル先生、お腹立ちはご尤もだが、十八号は自ら主人を選んだのだ。私には、どうすることもできなかった。残念だが、十八号のことは諦めてくれ」と、彼女を宥めようと懸命に訴えた。

「十八号が、自分で主人を選んだですって、それも、あのリーユエンを選んだっていうの。そんなの、ありえないわ」

 エスメルは、教授と話し合っても(らち)が開かないと思い、(きびす)を返し、今度は、リーユエンへ近寄った。その時、ちょうど、リーユエンは人形になったソアラスの顎の下をこそばし、ソアラスはご機嫌で喉を鳴らしていた。それを横目に見るパオディンは、

(チェッ、こいつ、明妃に撫で撫でコチョコチョしてもらって羨ましい。魔獣なら、まさか猊下も妬かないだろうしな)と、思った。そこへ、荒々しい足音を立て、(まなじり)を釣り上げたエスメルがやって来た。

 足音に気がついたリーユエンは、振り返って彼女を見た。けれどエスメルは、それを無視し、ソアラスへ

「十八号っ」と、大声で叫んだ。ソアラスは、口を尖らせ

「俺をそんな呼び方で呼ぶのはやめろ。俺にはソアラスって名前があるんだ」と、不機嫌な声で言ったが、相手が誰なのか気がつくと目を見開いて、エスメルを指差し叫んだ。

「あんた、チャ⭐️⭐️⭐️ルをいつも差し入れしてくれた姐ちゃんじゃないかっ」

そう、エスメルは、十八号をなんとかして手懐けようと、好物のおやつ、チャ⭐️⭐️⭐️ルを持参し、騎獣舎へ足繁く通っていたのだ。

 リーユエンは、生徒たちが全員揃っているのを確認すると、食堂へ先導して歩き始めた。

「待ちなさいっ」

 エスメルは叫び、前に回り込んでリーユエンの進路を塞いだ。リーユエンは、エスメルを見下ろし

「生徒たちを、時間内に席へ着かせたい。通してください」と、頼んだ。

 けれどエスメルは、目を怒らせ、

「十八号がどうして、あなたを主人にしたのよ、一体どんな手を使ったのよっ」と叫んだ。

 リーユエンは内心鬱陶しい女だと思いながらも、冷静な口調で

「ソアラスの方から、私を主人にしたいと言って来たのです。ソアラスに聞いてくださいな」と、答えた。するとリーユエンの背後にひっついていたソアラスが首を伸ばし、

「チャ⭐️⭐️⭐️ルの姐ちゃん、悪いな。俺は、一等強い奴が好きなんだ。リーユエンは、最強だ。俺の主人に相応しいのはリーユエンなんだ」と、牙を見せてニヤリと笑った。

 ソアラスの言葉とその笑いは、エスメルの負けん気を刺激し、激しく燃え上がらせた。しかし、リーユエンと生徒たちは、もう食堂の中に入った後だった。

 

 週末、食堂は正式な晩餐のため、大広間が解放される。学院内で、緊急必須の用事がない限り、教授、教師、学生、生徒たちは、皆、大広間に集まり、晩餐に出席するのが慣例だった。学院長から、晩餐に招待されたパオディンとヨーディンは、リーユエンと一緒に上段の教師の席についた。一方、生徒たちは、下段にある、上級生である三回生以上の学生席の後方、生徒席へ移動し席についた。第一クラスと第二クラスの生徒たちは、早速第三クラスの生徒を揶揄おうとしたが、彼らの席の後ろには、ソアラスが仁王立ちし、睨みを効かせていた。

 金眸、黒髪の、端正だが野生的で剣呑な顔立ちの若者に、第一、第二クラスの生徒たちは、チラチラと視線をやり、

「あいつ、誰だろう」

「第三クラスの奴に訊いてみろよ」と、互いに肘をつつき合った。

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