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魔導士学院生は、今日も元気ですっ!(落ちこぼれ呼ばわりされても、くじけません)  作者: nanoky


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 マルテンは、自分が魔導士の修行をするのは、時間の無駄だと、本音では思っていた。

 

 自分の霊力がそれほど強くないことは自覚していたし、村の中で、一族のための(まじな)い医師になって治療を行うだけなら、魔導士修行を真剣にやる必要はないだろうと思っていた。ただ、伯父である呪い医師のもとで本草学を学ぶうちに、薬草が使い方によっては毒草になったり、毒草がごく微量なら難病を治す薬になったりする、そんな実例を知るうちに、本草学をもっと詳しく勉強したいと思うようになった。


 そして、呪い医師から、魔導術の基礎を収めて、それから、呪い医師の仕事の手伝いをすればいいと言われ、学院を受験したのだ。だから、最初から本草学が目的で、魔導術については、真剣に極める意欲がなかったのだ。

 

 リーユエンは、寡黙なマルテンの態度から、何となく、この生徒は魔導術に真剣に取り組む意欲に欠けている事に、気がついていた。これから彼らに指導していかねばならない、導引術や調息法は、興味のない者には退屈極まりないし、その修練の方法は拷問のように辛く思えるかもしれない。マルテンの様子では、途中で投げ出してしまう確率が高そうに思えた。


(甥っ子か・・・本当にあの偏屈者のパパディにそっくりだな。自分が興味のある事以外は全然受け付けない(かたく)なさ、この一族の特徴なのだろうか)

 

 パパディは、周囲との協調性に欠く偏屈な性格が災いし、優秀な男であるにも関わらず、さまざまな役所の部署をたらい回しに移動させられ、不遇を囲ってきたのだ。

 ところが、昨年、いつも膨大な量の書類決裁に追われて困ったリーユエンは、南荒へ行く前に、押し寄せ続ける書類決裁を代行させるため、乾陽大公に頼んで、彼を内閣府の秘書の一人に抜擢してもらった。すると、見る見る頭角を現わし、今や、筆頭の秘書長官に出世したのだ。


(霊力はさして強くはないけれど、この我が道を貫く態度、太々(ふてぶて)しいまでの(きも)の座り具合、修行を積んでいけば、必ずや、膨大な魔力を受け入れられる核を、身内に成せるだろう)

 

 性格に難があろうとも、魔導士としての資質に恵まれているのだから、逃したくない人材だった。


「秘訣に関わる事なので、君には、あまり詳細に話すことはできないが、君の伯父である呪い医師が、魔導士学院へ君を入学させたのは、魔導士としての教養を身につけさせるのが目的ではない。呪い医師になるには、魔導士の修行が避けて通ることはできないからなんだ」

 

 マルテンは、顔をあげ、先生を直視した。この先生がいい加減なことは言わない人だと、マルテンには分かっていた。だから、先生がなぜそんな事を言い出したのか、是非知りたいと思った。


「それって、どういう事なのですか」


リーユエンの顔に一瞬微かに笑みが浮かんだ。宝石のような紫眸の光が増し、マルテンはドキッとした。けれどほんの一瞬で、先生の顔はまた元の厳しい表情に戻った。


「薬草を患者に用いる時は、乾燥したものを擦り潰し、粉薬として服用させたり、煎じ薬を服用させたりする。けれど、純粋に薬理効果のある成分だけを抽出し、丹と呼ばれる練薬を作る方法もあるのだ。

 それを可能にするには、錬成術を収める必要がある。そして、錬成術を習得するには、その前段階として、(ルン)と呼ばれる気を取り込むことで、自身の経絡とチャクラの状態を整え、魔力を通して制御できる状態にまで、身体機能を高めることが必須なのだ」

 

 マルテンは俄然興味が湧いてきた。

 

 村にいた頃、呪い医師の診察所の薬棚には、一箇所だけ厳重に鍵のかかった収納棚があった。ある日、その棚の扉を開けて、呪い医師は、マルテンに瓶に入った結晶を見せてくれた。


『マルテン、これは、丹と呼ばれる錬成された薬だ。先々代の呪い医師が、魔導士学院の教授の指導を受けて精製したものだ。わしには、これを作ることはできない。興味があるなら、魔導士学院で、この製法について勉強しなさい』と、呪い医師は言った。それで、学院を受験する決心をつけたのだ。

 

 マルテンは、今日も決断した。

「分かりました。俺は、先生のご指導で、修行に励みます。よろしくお願いします」


 マルテンの次の面談者を、ロージーとタロナのどちらを先にしようか、リーユエンは迷った。

 そして、話を聞いたらどっと疲れる予感しかないロージーを、気力が残っているうちにと思い、先にする事にした。

 

 呼ばれたロージーは、満面の笑みを浮かべ、東屋へやって来た。

 

 リーユエンは、ロージーには今さら取り繕っても白々しいだけなので、表情を和らげて彼女へ椅子を勧めた。

「王女殿下が、まさか、魔導士学院を受験して、合格していたなんて、存じ上げませんでした」

 

 ロージーは、慌てて両手を振った。

「お願いだから、ここではロージーで通して頂戴。私、正体がバレたら国へ戻るという条件をお父様につけられてしまったの」


 リーユエンは、横目でチラッとロージーの足元を見た。

「陰護衛はいないの?」

 

 ロージーはうなずいた。

「魔導士学院の敷地内は、強い結界の中にあるから、陰護衛を地面に潜ませるのは無理だって、ザリエル将軍に言われたの。それで、お父様は、私の正体がバレたら身の安全が保てないから、即刻退学して帰って来いって、条件をつけたのよ」


「なるほど・・・で、どうやって、あの難しい試験を突破したんだ?」

 

ロージーは得意げに顎をあげ、答えた。

「魔導庁長官のミネリオスから個人授業を受けましたの。その時、黄金獅子の力を魔力へ変換する方法を教わりましたの。お父様も似たような方法で受験を突破したそうですわ」

 

リーユエンはそれを聞いて、眉を顰め厳しい顔になった。

「前にも言ったが、それは君の生命力を削る事になるんだぞ」

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