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魔導士学院生は、今日も元気ですっ!(落ちこぼれ呼ばわりされても、くじけません)  作者: nanoky


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「北荒系統の魔導士にとって、神聖大鳳凰教の基礎訓練科目である気功調息法に相当する基礎訓練は、導引術と調息法だ。

 体内から外気へ通じる凡そ七万二千存在するといわれる経絡は、体の中央経絡と、頭頂から足首までの七箇所のチャクラで絡み合い繋がっている。その繋がりを緩め、(ルン)と呼ばれる気を通し、肉体を自在に制御できてこそ、魔導術を正確精密に操ることができる

 

 実際の訓練法は異なっていても、目的とするところは同じだ。そして、段階が上がると、体内により強大な魔力を貯蔵するための核を作る修練を行うのだ。

 だが、南荒の魔導士は、現在魔力を喪失した状態で、風を通すところまでは指導できても、恐らく核を作る修練を指導できる者はいないだろう。


 将来、南荒の僧魔導士が、魔力を復活したとしても、体内に核がなされなければ、膨大な魔力を操ることはできない。君が、そこまでの段階に進みたいのなら、不安や不満があっても、魔導士学院で修練を積む方がいいだろう」

 

 ハンツォンは、背中に電流が走るような衝撃を受けた。

 まさかリーユエン先生が、自分のために玄武魔導術の根幹をなす理論をここまで明らかにし、説明してくれるとは予想外で、その事に強く感動したのだ。


 魔導士としての階梯を上るには、よほど霊力に恵まれた者以外、いずれかの段階で、外部から魔力を取り込まなくてはならないのだ。南荒の僧魔導士たちにとって、それは教皇だけが付与できる神聖力だと信じられてきた。

(けれど、昨年の大事件について、漏れ伝わってきたあれやこれやで、ハンツォンは教皇がそれを付与するという説明には、疑念を抱くようになっていた)


「やはり、北荒の魔導士も、外部から魔力を引き込むのですか」

 ハンツォンは、恐る恐る尋ねた。リーユエンは首肯した。


「それが何なのか、秘訣に関わる事なので、この場で教えることはできない。だが、そのために、調息術と導引法を究め、階梯を上げていかねばならないのは、本当のことだ」

 

 ハンツォンは椅子から立ち上がり、リーユエンへ揖礼した。

「先生、俺の迷いを振り払っていただきありがとうございました。俺は、先生のご指導のもと、魔導士学院で修練に励みます」


 リーユエンは、面倒なロージーの面談の前に、男子生徒の面談を済ませてしまおうと考えた。それで、ハンツォンの次の面談は、マルテンを呼んだ。

 

 マルテンは、リーユエンより頭一つ分背が低い。吊り上がり気味の目尻で、髪と眉は銀灰色、虹彩は中心近くが青味がかった青磁色だった。

 端正といってもいいくらいの目鼻立ちだが、全体の雰囲気はやさぐれているというか、斜に構えているというか、独特な雰囲気の少年だった。それに寡黙で、ほとんど喋らないのだ。

 

 ムスッとした顔で椅子に腰掛けたマルテンを見ながら、リーユエンは内心で不思議に思っていた。こういう雰囲気の男を、知っているような気がしたのだ。


 リーユエンはマルテンの書類に視線を移し、そこに雪豹族と書かれているのを見て、ため息を押し殺した。そして、もうこれは最初に質問して、確認しておく方がいいだろうと思った。


「マルテンだね、君のご親族に、都で役人をしている人はいるのか?」

 

 てっきり自分の授業態度とか、今後の進路希望について、質問されるのかと思っていたマルテンは、意外な質問に一瞬固まった。それから、ぼそっと

「はい、一人います。伯父が宰相府で働いています」と、答えた。すると先生が、


「差し支えなければ、その伯父上のお名前を伺いたい」と、言った。

 

マルテンは、伯父貴の名前が俺の勉学と何の関係があるんだと不思議に思いながらも素直に答えた。

「俺の伯父の名はパパディです」

 

 リーユエンはまたしても額を右手で抑え、呻き声が出そうになるのを押し殺した。

(勘弁してくれ〜五人の生徒のうち、私と関わりのある役人の親戚が二人もいるなんて、どうしてだ?私に対する嫌がらせなのか?)

 

 マルテンは突然苦悩の表情?を浮かべた先生を不思議そうに見つめた。

 

 リーユエンは気を取り直し、質問を続けた。

「君は、一回生の実技試験の成績が悪かったが、自分では原因は何だと思う?」

 

 マルテンは、肩をすくめた。

「俺が勉強したいのは、攻撃魔法ではなくて、本草学です。

 俺の出身地の(まじな)い医師が、もう高齢で後継が必要なんです。

 呪い医師の後継は、呪い医師の姉妹の子が養子に入って引き継ぐのが慣例なんです。

 それで、呪い医師の妹の子である俺が、後継になるのが決まっています。

 

 本格的に引き継ぐ前に、魔導士学院で勉強してこいといわれて、ここに来ました。

 でもここに来たのは本草学を究めるためで、攻撃魔法を究めるためじゃありません。

 攻撃魔法の練習をする時間があるのなら、その代わりに本草学の本を一冊でも多く読みたいのです」

 

 リーユエンは話を聞きながら、眉尻を下げて宙を仰いだ。

 

 確かに本草学にしか興味がないのなら、試験の成績が悪いのは、当然だ。中級以上になり、本草学の課程へ進めば、成績は上がるだろう。けれど、魔導士を目指すのなら、本草学ばかり勉強させるわけにはいかず、他の科目に興味を持たせる必要があった。


「本草学を学ぶのは大変結構なことだが、実際に患者を治療するには、魔力を通すことも必要だ」

 リーユエンに指摘され、マルテンはうなずいた。


「それに、薬草を採りに森の奥深くへ分け入れば、昨日のように突然魔獣に襲われることもある。そんな時に、攻撃魔法を全く何も知らずに、どうやって自分の身を守る?弓矢や剣、まあ、君は雪豹族だから、転身して戦う選択肢もあるだろう。けれど、攻撃魔法を知っていれば、生き残る可能性は高くなるだろう」

 これについてもマルテンは首肯した。そして、リーユエン先生は、理詰めで攻めてくるから、厄介だなと思った。

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