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魔導士学院長ドゴロフは、二回生のクラス編成表を目の前に、頭を抱えこんでいた。
「一体何をどうしたら、こんなクラス編成になるのじゃ?」
他の魔導士より襞数の多い、そして光沢のある上質の、玄色の魔導士服、胸飾りには、学院長の徴である玄武と魔導士方陣(五芒星に星宿図と八卦図)を組み合わせた紋章入りの胸飾り、顔は丸みがかった輪郭に丸みをおびた鼻、いつも穏やかで静かな目元、口は波打つ長髭に覆われて見えることがない。けれど、多分、今はへの字に曲がっているに違いない。
学院長の大きな執務机の前で、総務部長のアデレンも、困りきった顔で相槌を打つしかなかった。
「エスメル先生が、あのような調子で煽るものですから、ペリオン先生も意地になってしまわれまして、結局、深夜まで生徒の取り合いになって、最後はくじ引きされておられました」
その説明を聞き、学院長は、フウーッと長く大きなため息を吐き出した。
「まったくエスメル先生には、困った。指導者としての力量はあるが、野心が表に出過ぎておる。いくら名家のドロメル家の一員とはいえ、あまりに恣意的なクラス編成ではないか。で、結局残りの五名は三クラスめに入れると言うておるのだな」
「はい、第一クラス十名、第二クラス十名、第三クラス五名の不規則な編成となってしまいました。それから、これが、担任お二方の指導計画書でございます」
総務部長が差し出してきた指導計画書を、こんなの見たくないと思いながら、学院長は目を通した。そして、予想通りの内容に、またまた長ーいため息をもらした。
総務部長は、恐る恐る切り出した。
「学院長、第三クラスの担当は誰にいたしましょう。今のところ、二人の教師の対立に恐れをなし、誰もやりたがらないのですが・・・」
学院長は腕組みして黙り込んだ。
一昨年まで、低学年の基礎指導は、四百歳の老魔導士モーズレイが担当していたのだが、昨年引退し、田舎に塔を賜り、研究生活に入った。今、低学年を担当している二人の教師は、もともと高学年の実技指導担当教諭なのだ。低学年の基礎指導に、そもそも適正があるのかどうかすら疑わしいのだが、魔導士学院への大口寄付者であるドロメル家とそれに対立する、これまた大口寄付者であるサラザル家の一員である教師の希望を無碍に断ることはできなかったのだ。しかし、一学年の学期末試験の課題といい、そして今学年の指導計画内容といい、もうこれ以上看過することはできないと、学院長は決断した。気は進まないが、クラス編成表と指導計画書を手に重い腰を上げ、立ち上がった。そして、総務部長へ
「ちと、出かけてくる。第三クラスの担当はわしが指名する。それまで、編成発表は控えてくれ」と指示し、執務室の外の中庭へ出ると、使い魔である畢方鳥を召喚し、大空へ飛び立った。




