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魔導士学院生は、今日も元気ですっ!(落ちこぼれ呼ばわりされても、くじけません)  作者: nanoky


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(130)

 リーユエンが監禁された場所は、プドラン宮殿の外、北嶺の麓に広がる湖水草原、その別荘地の外れにある山荘だった。

 山荘のかつての所有者は、カスパルの父、元財務大臣であったクレスパで、息子を勘当する直前に、彼は山荘をカスパルへ譲渡していた。


 湖水地方は、真冬は氷雪に閉ざされるが、第七月から第八月は避暑地として賑わう。けれど今は第九月の中旬を過ぎ、避暑客は宮殿内へ引き上げ、人通りはすっかり減っていた。


 ナーガムからの念話による連絡で、玄武兵は山荘へ駆けつけ、太極石強奪の実行犯は皆、捕縛されたが、ツォンパは、すでに姿を消してしまい、捕縛できなかった。

 

 

 プドラン宮殿中層区十条の小さな区画で、隠居生活を送っていたカスパルの父クレスパも、法座主府からの召喚を受け、取り調べを受けた。しかし、カスパルと似た冷たい面差しのクレスパは、「あの者は、数年前に勘当した、一族とは縁のない者だ。我らは、一切関わりない」と、言い切った。

 

 彼は、牢屋の格子越しに変わり果てたカスパルの姿を見ても、表情筋の一つすら動かさなかった。そして、ナーガムへ、帰り際に言った。

「私は、素行を何度も改めるよう忠告した。勘当する際にも、生活には困らないように土地や家屋を譲り渡したのだ。それでも、あのような有様となったのだから、どうしようもない。

 魔導士修行などさせるのではなかった。なまじ、魔力が強かったために、すっかりのめり込んで、官吏になっておれば、あのようにはならなかったのかもしれない」

 

 クレスパは少しだけ後悔を滲ませた。けれど、彼が侘しい隠居生活を送ることになったのも、官吏同士の派閥争いに敗れ、公金流用の責任をとらされたことが原因なのだ。あのカスパルが、彼の後を継いだとしても、同じ運命だったかもしれない。


 ポルブが捕縛されたと知らせを受けたデリオンも、早々に事情聴取に応じた。そして、先々月に、一族への背信行為が明らかとなり、追放処分が下ったため、サラザル一族とは無関係であると、再度説明した。


 その時、リーユエンはまだ青あざの残った顔で、デリオンへ確認した。

「では、ポルブの処分はこちらで決定してもよろしいのですね」


 デリオンは、無表情に頷いた。

「構いません。どうぞ、殿下のお気に済むよう、煮るなり焼くなりお好きになさってください」


 法座主府に連行された者たちは、全員、魔導士医師の診察を受けた。

 ナーガムら、玄武兵と戦った際の外傷以外に、カスパルとエスメルについては、ツォンパが体内に入れた魔核のために、深刻な影響が出ていると、医師は診断した。

 やはり、リーユエンの推測と同じで、魔核の力を制御できる核殻が形成されていないため、法力が消えれば、死を迎える、というのが、結論だった。


 

 エスメルを引き取りにきたグレゴルは、法座主府内の一室で、その宣告を聞き、取り乱した。いつもは厳しいグレゴルが、涙を流し、髪を掻きむしった。そして、医師に縋りついた。


「エスメルを、娘を助ける方法はないのか。魔力を使えなくなっても構わない。娘を失わずに済むのなら、いくら費用がかかっても構わない。体の一部が必要なら、私の一部を差し出そう。どうか、娘を助けてくれっ」

 

 魔導士医師は、臨時休業中でたまたま都に滞在していた魔導士学院医学部のラザノル教授だった。


「私も、エスメル様をお助けしたいとは思います。けれど、私の医学知識では、一度体内に入った魔核を取り除く方法がわからないのです」

 

 ラザノル教授は、ドロメル一族の者だ。貧しい両親のもとに生まれたが、当主に才を見出され、援助を受け魔導士学院に入学し、医学部教授にまで上り詰めたのだ。ドロメル宗家には大恩があるので、何としてでも恩に報いたかった。しかし、己の知識や技術では、玄武の入れた魔核になす術がなかった。


 辛そうにうつむくラザノルに、グレゴルは、医師として告げた冷酷な宣言が、事実なのだと理解した。そして、再び、当主としての冷厳な態度を取り戻した。


「いや、無理を言ってすまなかった。それで、エスメルは、今は容体は落ち着いているのだな」


「はい、総執行のナーガムが、法力を入れてくださったので、今は安定しております。ただ、総執行がおっしゃるには、法力は三日間しか入れられない。それ以上は、拒絶反応が出るだろうと言うことです」


「三日か・・・」

 

 グレゴルは、絶望に瞑目した。

 エスメルは、ドロメル一族の中でも突出した魔力を持っているので、グレゴルは、将来を期待し、今まで厳しく接してきたのだ。けれど、あと三日の命と聞いて、もっと娘らしい経験をさせたり、もっと甘やかせてやればよかったと、後悔の念が湧き上がり、止まることがなかった。

 

 当主の悲嘆を慮り、ラザノルはしばらくしてから、遠慮がちに切り出した。


「当主、私ではお力になれませんが、リーユエン先生は、明妃殿下でいらっしゃると聞き及びました。それならば、法座主猊下に、リーユエン先生ならお願いできるのではありませんか?私では不可能ですが、もしかしたら、法座主猊下ならば、何か方法をご存知かもしれません」

 

 グレゴルは涙に濡れた顔をあげ、ラザノルを見た。


「そうか、法座主猊下なら、あるいは・・・リーユエン先生に会わせてくれ、お願いだ」

 

 グレゴルを椅子にかけさせ落ち着かせた後、ラザノルは、総執行ナーガムの元へ行った。そして、当主グレゴルを、至急明妃殿下に目通りさせて頂きたいと願った。

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