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魔導士学院生は、今日も元気ですっ!(落ちこぼれ呼ばわりされても、くじけません)  作者: nanoky


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(129)

 ナーガムが、タロナを経由し、無意識界からリーユエンへ呼びかけた。


「明妃殿下、ナーガムです。目を開けて、周囲をご覧になって、現実世界と私の意識をつないでください」

 

 タロナの傍にナーガムが来ている。

 それを知ったリーユエンは、失血のため、遠のきそうになる意識を懸命に保ち、重い瞼を開けようと努めた。

 

 瞼が痙攣し、突如、カッと見開いた。のぞき込むエスメルとポルブの顔、それから薄暗い剥き出しの裸木の梁が、視界に入った。


 その瞬間、ナーガムが、「掴んだっ」と叫んだ。

 彼の体から、赤色に金色の混じり合う法力が放射され、ナーガムとタロナの姿が、中庭からふっと消え失せた。

 

「タロナが、総執行と一緒に消えてしまいましたわ」

 タロナの傍にいたロージーが、慌てて周囲を見回した。


 ウラナは、「大変、生徒さんが消えてしまいました、どういたしましょう」と、珍しくオロオロし始めた。


 ペリオンは、二人が消えた場所に視線をすえたまま、(あの玄武は、法術を用いたのかっ、あの赤金色の霊気の輝き、やはり凡人とは桁違いの力だ)と、大きな力の差に脱力した。


 

 タロナの額に手を当てたまま、ナーガムはリーユエンが閉じ込められた隠れ家へ一気に畳地連結した。


 リーユエンの傍にいきなり、小さな子供を連れて、長身僧形姿の若者が現れた。

 ポルブは驚き、部屋の隅まで一気に飛び下がり、エスメルはその場で棒立ちとなった。

 

 ナーガムは、寝椅子にぐったり横たわるリーユエンを見つけ、叫んだ。

「明妃殿下っ」

 

 エスメルを押し除け、ナーガムはリーユエンをのぞき込んだ。そして、腫れ上がった顔と、肌けた衣から見えた胸の傷に、激しい怒気が湧き上がり、眸が一気に縦長に細まり、赤金色のオーラが全身から火焔となって現れた。


「一体、誰がこんな酷いことを」

と、言いながら、リーユエンの首へ目がけて法力を撃ち、一気に首輪を破壊した。


 首輪が外れ、自由を取り戻したリーユエンは、上半身を起こした。

 

 そこへ、扉を開け、食事を運んできたゴーズリー、バーカンダーが現れた。二人は、僧形の侵入者に気がつくや、身体強化をかけて、筋肉を盛り上がらせ、牙を剥き悪鬼の形相となり、二人同時に襲いかかった。

 しかし、法座主府一の怪力僧の異名をとる、総執行ナーガムの敵ではなかった。


 ゴーズリーの下顎は、ナーガムの左アッパー一撃で、顎が粉砕し、部屋の隅まで吹き飛んだ。バーカンダーは、ナーガムが、スネを狙って上から打ち下ろした踵蹴りで、骨が複雑骨折し、戦闘不能となり、悲鳴をあげ、痛みに床を転げ回った。

 

 リーユエンは、その間、タロナを抱き寄せ、懐へ保護した。


「先生、大丈夫」


「大丈夫よ、こんな危ない真似をして」


「ごめんなさい、でも、先生をどうしても見つけなくちゃと思って、大祖母ちゃんから、一度共情できた人とは、自分が強く望めば、また心を繋げられるって聞いたから、勝手に繋げてしまいました。ごめんなさい」

 

 リーユエン先生は、自分のことを嫌ってしまうかもしれないと思った。それでも、先生を見つけたから、構わないとタロナは思った。


 リーユエンは、肌が触れると共情するかもしれないのに、タロナをギュッと抱きしめた。


「ありがとう、タロナ、でももう二度とこんな危険なことはしないで、約束よ」


「はい、先生、もうしません」

 

 タロナは、先生に抱きしめてもらって、とても安心した。大好きなリーユエン先生が無事に見つかって本当に良かったと思い、すごく幸せだった。

 

 ゴーズリーとバーガンダーを制圧したナーガムは、もう一人床に転がるカスパルに気がついた。


「どうしたのだ、この男は、拷問でも受けたのか」

 ナーガムは、しゃがんで、カスパルの脈を診ようとした。

 

 タロナを抱き上げたままリーユエンが、彼に近寄り警告した。


「その男には気をつけて、武器を隠し持っているかもしれない」

 リーユエンの言葉に、ナーガムは、掌に法力を集中させ、カスパルの体を走査した。

 すると、衣の隠しポケットから、違法薬物と毒を刃先に塗ったナイフが見つかり、回収した。


「物騒な奴だ。毒を塗りつけたナイフまで持っていたぞ。

 この男、妙に顔が青黒く、浮腫まで出ているが、なぜなんだ?」

 

 リーユエンは、ナーガムへ、その男カスパルとエスメルが、騙されて魔核を与えられたことを話した。


 ナーガムもその話に衝撃を受けた。

「何とっ、白玄武の残党が関わっているのかっ」

 

 エスメルがリーユエンへ近寄ると、跪いた。

「リーユエン、いえ、明妃殿下、私を助けて、師匠は、自分のことを玄武で、かつての白玄武、ヨギを開祖とする、ヨギ派の玄武魔導術の承継者だ、と言ってたわ。

 私は、魔核を体に入れられてしまったの。騙されたのよ。お願い、助けてっ」

 

 リーユエンは、目に涙を溜めて、自分を見上げるエスメルを見下ろした。そしてナーガムへ、尋ねた。


「一時的に、エスメルとカスパルの体内の魔核の周りを、あなたの法力で守ることはできますか?」

 

 ナーガムはくっきりとした輪郭の眉をしかめ、しばらく考えた。


「魔核を入れると聞いて、裏があるとも思わないなら、はっきり言って魔導士失格だ。

 わざわざ法力を費消する値打ちもない。だが、まあ、守るとしても、三日ほどが限度だ。

 魔核を入れた元の法力と、私の法力は異なるので、それ以上、法力を通し続けたら、拒否反応が出るだろう。三日が限度だ。それで構わないのなら、法力を通すが・・・」

 

 リーユエンは、蹴飛ばされて腫れ上がった瞼の下から、ナーガムを見て言った。

「すぐ、法力を通してください」

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