↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔導士学院生は、今日も元気ですっ!(落ちこぼれ呼ばわりされても、くじけません)  作者: nanoky


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

125/137

(125) 

 ペリオンが、学院島へ戻ろうと出発しかけたところへ、父デリオンが法座主府から戻ってきた。

 険しい顔で執務室へ向かうデリオンを見て、ペリオンは何かあったのだと確信し、学院島へ帰るのをやめて、父の後を追った。廊下の途中で立ち止まったデリオンが、ペリオンを振り返った。


「執務室へ来てくれ」

 

 父に従い、ペリオンは当主の執務室へ入った。


 デリオンは、執務机の椅子に腰掛けると、机に肘をつき額を抑えて、しばらく無言だった。それから、呻くように言った。


「ドロメルを蹴落とすはずだったのに、このままでは、我々は破滅だ」


「父上、どうなさったのですか」 

 

 冷静さを欠いた父の言葉にデリオンは驚いた。これほどまでに絶望した父の姿を見たのは、初めてだった。


「エスメルが、何らかの方法でリーユエンを拉致したのは、間違いない。それに動力炉から魔石を強奪したのは、学院を退学処分になったカスパルだ」

 

 ペリオンは、父の言葉を聞きながら、一体何が父をこれほど絶望させたのかと、不思議に思った。デリオンは、顔を上げ、ペリオンを見た。


「カスパルは、下層区のタウナギ横丁で、違法薬物を提供する店を営業していた。そこへ、一月ほど前から、ポルブが出入りしていたのだ」


「えっ、ポルブですか・・・」


 ペリオンは、ポルブの始末を、父が配下へ命令したに違いないと思っていた。けれどそれは、自分の勝手な推測だし、命じたとあれば密命であろうから、口にはできなかった。


「死体の確認を怠ったのだ・・・愚か者めが・・・」

 デリオンは唸るよう言い、歯軋りした。それから、また続けて話した。

「強奪事件があった時の、動力機関室の映像を見せてもらった。それには、水霧術を使い、エスメルの幻像が映し出されていた」


「水霧術?しかし、ポルブには、そんな高等術は、使えないはずですよ」


「私もそう思いたいが、水霧術は我らサラザルの秘術だ。ポルブでなければ、他のサラザルまで関わっていることになる」

 

 ペリオンは、叙勲式の夜に会ったポルブの姿を思い浮かべた。充血した両目とその下の黒々とした隈、魔力覚醒剤に頼りきりの、魔力が枯れ果てる寸前の惨めな姿だった。


「私が見たとき、彼の状態は、魔力が枯れ果てるのも、そう遠い未来ではない印象でした。水霧術だけならともかく、人の幻像まで映し出すには、恐ろしいくらい魔力を消費するでしょう。彼には無理だと思います」

 

 デリオンは、息子をまっすぐ見た。


「おまえは知らんだろうが、魔石が奪われたとき、機関室の技師と整備士、それに都の動力保安局の職員も殺された。それが、氷結させた後、粉砕されていたのだ」

 

 ペリオンは、しばらく絶句した。


「・・・そんなバカな、粉砕できるほど凍り付かせるなんて、あり得ない」


「私も驚いたが、報告書にはそう記載されている。それに、青鷺洞というパスカルの店へ踏み込んだが、客用の椅子が粉砕されていた。木片が粒子状になっていた。おそらく氷結して粉砕したのだと思う」


「まさか・・・別の術なのでは?」


「その可能性もあるが、いずれにせよ、並の使い手ではないし、恐ろしいほどの莫大な魔力量がなければ、無理だろう」


「しかし、カスパルも、ポルブだって、はっきり言って魔力の点ではもう落伍者ですよ」


「何が起こっているのか全く訳が分からないが、背後にヨーダム太師、いや、それ以上の力を持つ魔導士がいるのかもしれない」


「ヨーダム太師を上回る魔導士なんて、もはや凡人ではあり得ないでしょう」


「なるほど、凡人でない可能性はあるな。ポルブを早急に拘束しなければならない。サラザルは一切関わりがないことを明らかにしなければ、明妃が絡むこととなった以上、猊下の怒りが何よりも恐ろしい。我々は、また居場所を失うことになる」


「そこまで深刻な事態なのですか?」

 

 デリオンは、ペリオンを陰気な目で見上げた。

「深刻だ。猊下の明妃への寵愛は常軌を逸している。あのお方に危害を加えたのが、サラザル、ドロメルということになれば、両家ともにタダでは済まない。猊下がその気になれば、凡人の命など容易く奪えるのだからな」


「・・・・・私が何か手伝えることはありますか?」


「・・・そうだな、離宮へ行って、第三クラスの生徒たちの面倒を見てやりなさい」


「第三クラス?リーユエン先生は、生徒を離宮へ連れて行ったのですか?」


「ツカリーゼ先生によると、第三クラスの生徒は、家が遠方の者たちばかりだから、リーユエン先生は、離宮へ連れて帰り、そこでも授業を行なっていたそうだ」

 

 ペリオンは、彼女がそこまで生徒を気遣っていたことを知り、驚いたし、自分は臨時休業の間の生徒の過ごし方など、全く注意を払わなかったことが恥ずかしくなった。


「わかりました。離宮を訪ねてみましょう」


 


 その頃、離宮では、生徒たちが荷物を整理し、帰り支度を始めていたが、リーユエン先生はいつまで待っても戻ってこなかった。

 

 ハンツォンは、自分がまとめた荷物を見下ろし、呟いた。

「先生、どうしちゃったんだろう。何の連絡もないなんて、誘拐されたのかなあ」


 ロージーが、ハンツォンを睨んだ。

「バカなことを言わないで、この玄武の国内で、明妃殿下を誘拐しようなんて人はいませんわ」

 

 マルテンが、ロージーを冷めた目で見た。

「何言ってるんだ。どこにだってバカな奴はいるんだぜ。明妃殿下だろうが、誰だろうが、誘拐する奴はいるさ」


 モンシェンが反論した。

「でも、先生は魔導士の格好をしていたんだよ。魔導士なんて、面倒臭いから、普通は誘拐なんかしないと思うよ。たいしてお金を持っていないし、魔導術で反撃されるかもしれないからね」

 

 さっきから黙っていたタロナが、思い詰めた表情で言った。

「私、リーユエン先生の行方を探せるかもしれない」

 

 ロージーがタロナをのぞき込んだ。

「それ、本当なの、どうやって探すの?」


「大祖母ちゃんから聞いたことがあるの。共情したことがある人のことを一心に思えば、また心を繋げられるって、ただ、物凄く力がいるって・・・でも、先生を見つけ出さなくちゃ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。