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ツカリーゼは、カーリヤとナーガムへ、動力炉の中で起きた一部始終を話した。
話を聞くうちに、カーリヤとナーガムは、さらに厳しい顔つきへ変わった。
「魔力素の暴走は抑えられて、技師長と整備士長は、もう安定運行が可能だと言ってました。それは、明妃殿下が、謎の術を使って、太極石を落ち着かせたおかげだと思います」
ツカリーゼは話をしながら、二人の玄武の顔つきに厳しさが増したので、不安を感じていた。口には出せなかったが、明妃のやったことは、もしかしたら、玄武の禁忌に触れる事だったのだろうかと、気になった。
話し終えたツカリーゼを、カーリヤがまっすぐ見つめた。
「ツカリーゼ先生、あなたは聡い方だから、もう、私たちの反応で、ちょっとまずい事態だというのは理解できているだろう」
「いえ・・・はあ、そうですね。でも、私に理解できることではありませんから」
「謙遜しなくていいよ。あなたが心の中で推測していることがほぼ正しいからね」
「カーリヤ様っ」
ナーガムが思わず制止するのを、カーリヤは右手を挙げて遮った。
「ツカリーゼ先生は、私の見るところ、魔導士の派閥争いからは一線を画しているようだ。リーユエンには、味方が必要だからね。ツカリーゼ先生にも、もう少し詳しく説明することにしよう」
ツカリーゼは、内心狼狽えた。
(ツカリーゼの独白)
巽陰大公カーリヤなんて、伝説の大玄武よ。一生お目にかかることなんかないと思っていたのに、今、私の目の前でお茶を飲んでいらっしゃるのよ。もう、信じられないわ。私は、学院島でただ人形ちゃんを作って、美しいものに囲まれて生活したいだけなのに、何だか、とんでもないことに巻き込まれちゃったのかしら・・・でも、明妃殿下は、あんなにボロボロになっても学院島を守ろうとしてくれたのだから、私もできることがあれば、やはり協力するべきなのかしらねえ・・・
ナーガムが、ツカリーゼには聞こえないように、巽陰大公へ念話した。
「カーリヤ様、まさか秘訣に関わることを告げられるおつもりですか」
カーリヤは頷いた。
「それを説明しなければ、明妃の行動の意味がわからないだろう。法力酔いがますます悪化して、法力を与えて速攻で治すこともできないのだから、代わりに手足となって動いてくれる、信頼のおける凡人が必要だよ。
今は昇格試験期間で、猊下は、法座主府宮の外へは出られない。
ダルディンはミレイナと結婚したばかりで、今は領地に籠る大切な時期だ。呼び戻すことはできないからね」
ナーガムは微かに不満を滲ませて言った。
「私は、猊下に命令を受けて、昇格試験期間中なのに、外へ出されてしまいました」
「それは、気の毒だが、仕方ないね」
「いえ、そうではなく、私が手足となって働けば、それで済むのではとー」
ナーガムは、当然そういう目的で、自分が外へ出されたと思っており、巽陰大公が、重大な秘訣を明らかにしてまで、能力の劣る凡人を協力者として取り込もうとするのはなぜなのか、理解できかねたのだ
「もちろん、畳地連結を勝手に行った法力の持ち主は、おまえが突き止めるのだ。しかし、これには、どうやら凡人の争いも絡んでいるからね、凡人で使える者も必要だ」
そこで、念話をやめ、カーリヤはツカリーゼへ、説明した。
「ツカリーゼ先生は、魔導士なのだから、法座主と明妃が行う瑜伽業のことは知っているだろう」
「はい、もちろんでございます」
「私が猊下から聞いた話によれば、学院島の動力炉の動力源である太極石が劣化して、交換が必要になり、その交換をするために、学院は十日の臨時休業に入ったそうだね」
「詳細は聞いておりませんが、メンテナンスのためと説明は受けました」
「実はね、リーユエンが、後期授業開始からいきなり休職したのは、動力源である太極石を用意するためだったんだよ」
「えっ、太極石って、魔石鉱山から採掘するんじゃなかったのですか」
ツカリーゼは、話が見えなくなって混乱した。太極石は魔石の一種と思っていたからだ。
カーリヤの瞳が縦長に変じ、ツカリーゼを見据えた。
「よくお聞きなさい。太極石は、魔石とは全く異なる物質なんだよ。
あれはね、法座主と明妃が瑜伽業を行い、お互いが陽極と陰極となり、霊気を対流させ、練り込んで作り出す、純粋な魔力素の結晶なんだよ」
「エエェェッ」
ツカリーゼは、まさに秘訣に関わることを聞かされ、真っ青になった。
(それって、秘中の秘ってやつじゃないの?私、こんなことを聞かされたら殺されちゃうかもしれない)
カーリヤは、迫力のある笑みを浮かべた。
「安心おし、あなたの身には何も起こりはしないよ。見かけは魔王みたいな邪悪オーラ満開だが、あなたの中身は、美しいものを愛好する、善良な魔導士だ。だから、私は、これほど重大な事柄について、話しているんだよ」
そう言うと、カーリヤは、お茶で喉を湿らせた。
「リーユエンは一年近く前にも瑜伽業で大量の太極石を作った。それでも、学院島の動力炉へ回す分が用意できなかったんだ。学院長に泣きつかれ、仕方なく、大急ぎで瑜伽業を行ったんだ。
何しろ猊下は、三年に一回開催の昇格試験のために、宮殿から出られなくなってしまうから、日程に余裕がなかったんだよ。
瑜伽業自体は大成功だったけれど、想定外のことが起こってね。
詳細は言えないけれど、リーユエンは体調を崩してしまった。それで、一月の間、魔力行使を禁止されていたんだ」
「えっ、一月って、まだ半月くらいしか経ってないじゃありませんか」
「そうだね、あなたの話を聞く限り、リーユエンは、おそらく、太極石と三極石を安定させるため、そこから出てくる魔力素を、自分の陰極を通すことで練り合わせ、一つの流れへ整えたのだろう。それは、瑜伽業で明妃に課せられた役目なんだよ。普通の状態ならまだ耐えられたのだろうが、その前に行った瑜伽業で、法力酔いを起こして、まだ回復していないからねえ。とうとう、内傷が生じてしまったのだ」




