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魔導士学院生は、今日も元気ですっ!(落ちこぼれ呼ばわりされても、くじけません)  作者: nanoky


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105/134

(105)

 リーユエンより背が高く、青い僧衣の上に、銀と翡翠緑の法衣姿、禿頭の玄武僧が広場を横切り近づいてきた。銀と翡翠緑の袈裟がけの法衣は、法座主の側近である五執行にのみ許された衣である。法座主宮の執務を執り行う五執行が、宮殿の外へ姿を現すことは滅多にないことだった。

 

 リーユエンは、突然現れたその玄武僧が、五執行のうちの誰なのだろうかと目を細め、凝視した。

 

 彼女の前まで歩いてくると、その玄武僧は丁寧に揖礼した。


 リーユエンは、彼が何者かやっとわかり、衝撃を受けながらも、深々と辞儀した。

 玄武僧は、上体を起こすと、頭を下げたリーユエンへ、柔らかな声で言った。


「おやめください、あなた様が私に頭を下げられては、私は猊下よりお叱りを受けてしまいます」


 リーユエンのそばにいたツカリーザは、頬を赤らめた。

(まあ、なんて、涼やかな、お美しい佇まいの方なのかしら、それに何て素敵な声なのかしら、凄いわ、一体何者なの〜)

 

 頂が尖り気味の頭に、広々とした額、眉は鳳の翼のように穏やかな弧を描き、涼やかな鳳眼、鼻筋はすっと通り、有るか無きかの笑みを浮かべた薄い口唇、計り難い表情である。

 まさに理想を体現したような美青年の登場に、ツカリーゼの胸は高鳴った。


「昇格試験の最中に、総執行が宮殿の外に現れるとは、驚きました」

 リーユエンは、玄武僧へ言った。


 総執行と呼ばれた彼は、ぼうっと見惚れるツカリーゼと、訳がわからず固まっているザカリンへ、典雅な揖礼を行い自己紹介した。


「私は、法座主府内府、総執行のナーガムと申します」

 

 ツカリーザは、驚愕した。

「ええっ、あなた、総執行なの!」

 

 総執行は、法座主府では猊下、明妃につぐ、第三位、側近中の側近だった。


 微笑を湛えたナーガムは、魔王のような顔を引き攣らせたツカリーゼへ

「左様でございます」と頷き、次に、リーユエンへ向き直ると、笑みを消して言った。


「猊下は、昇格試験のため、宮殿を出ることができません。それで、私を代わりに遣わされたのです。こちらでも学院島で起きた事件のことは把握しております。島が墜落しないよう、半日は支えることができますが、それが限界ですのでご承知おきください。それから」

 

 ナーガムはリーユエンに近寄り、耳元で声を潜めた。


「何者かが、畳地連結を玄武国内で行ったのを検知しております」


「えっ、魔導士では?」

 

 リーユエンの問いに、ナーガムは首を振った。


「ヨーダム太師ではありませんし、まして殿下でもありません。それにー」と、さらに声を低めた。


「法力を検知しておりますが、我々の知る法力ではありません」


「・・・・」


 法力は、玄武ごとに固有の特徴があり、調べれば誰の法力か分かるのだ。


「未知の玄武ですし、その法力がひどく汚染された、限りなく魔に近いものでした」


「震陽大公では?」


 ナーガムは激しく首を振った。


「あれはもう再起不能です。領地の岩戸の中に閉じこもったきりですよ。とにかく、お気をつけください。それから、学院島までは、私が畳地連結でお送りします」


「総執行、それは・・・・」


「殿下は、療養中でいらっしゃるのですから、私にお任せください。

 そのために猊下は私を遣わされたのです」

 

 ツカリーゼは、療養中というのが聞こえて驚いた。

(えっ、もう治ったって言ってたけれど、まだ具合が悪いの?)


 ツカリーゼと目があったリーユエンは、すっと視線を逸らした。それからザカリン教授へ、揖礼し話しかけた。


「ザカリン教授、追加の太極石が三十個用意できないため、三極石を持って参りました。研究用の指定を受けていたものを持ち出すことになってしまい申し訳ございません」

 

 ザカリン教授は、顔を引き攣らせ、胸の前で両手を振り、頭も何回も振った。

 一度は立ち消えた、リーユエンは明妃だという噂が、目の前にいる、法座主府の玄武僧の態度から真実だと気がついたのだ。

 気位高く、世俗からは超越した態度をとる玄武僧が、凡人のリーユエンにここまで丁重な態度を取るとしたら、明妃であるのは間違いなかった。


「と、とんでもないことでございます。私の研究用になど全く烏滸がましいことです。 学院島が墜落の瀬戸際にあるのですから、どうか、ご存分にお使いになってください」

 

 ザカリン教授が冷や汗をかいて話しているところへ、パパディがようやく技師と整備士を連れて現れた。

 

 パパディへ近寄ると、リーユエンは、耳元で「ウラナに伝言してください」と言い、何事かささやいた。


 パパディは苦笑を浮かべ、それを聞き取った。

「承知しました。お任せください」

 

 リーユエン、ザカリン教授、ツカリーゼ教授、技師と整備士五人は、広場の真ん中に立った。


 リーユエンはザカリンとツカリーゼヘ

「学院島の中央山嶺中腹にある、動力機関室の隠し扉を思い浮かべて、それ以外は考えないでください。総執行が、法力で私たちをそこへ移動させますから」と、説明した。

 

 ナーガムは彼らから三丈離れた場所に結果趺坐し真言を唱え始めた。彼らの前に黄金色の天蓋が現れ、彼らを包み込んだ。そして、白光が辺りに広がり、何も見えなくなった。

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