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魔導士学院生は、今日も元気ですっ!(落ちこぼれ呼ばわりされても、くじけません)  作者: nanoky


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 魔導士学院のある浮遊島は、外観は、千丈(約3キロ)四方の小島にしか見えない。

しかし実際に足を踏み入れると、白砂に覆われた浜辺は延々と続き、海林を抜けると現れる草原も果てまで行き着くには数時間かかる。そして、林を抜けるには半日、森に分け入り、中央の山嶺の頂上まで行きつこうとしたら、三日もかかる。もちろんこれは徒歩での場合で、三回生以上の学生なら、騎獣を操ったり、飛行術を習得して移動するので、不便を感じることはないのだ。

 

  しかし、一、二回生の間は、移動手段が徒歩以外にない。

 そのため、学院の学舎や図書館、食堂に近い、海岸近くの林の中に建つ、古びた山小屋風の建物が、彼らの宿舎に指定され使われてきたのだ。

 ところが、昨年、魔導士学院島は、数十年ぶりに大嵐の回避に失敗し、一、二回生用の宿舎の一棟が落雷の直撃を受け、屋根が壊れ使用不能状態となった。元々、老朽化が進み、応急的な修理では間に合わないため、全館改修工事中なのだ。


 リーユエンは、学生たちが靴を履き替えたのを確認すると、彼らの荷物を二頭の騎獣の鞍へ綱で括り付けた。そして、彼らとともに、グリムエール老師の魔導士塔へ出発した。リーユエンは、騎獣二頭の手綱を握り、彼らの後ろを歩いた。

 

 生徒の一人、ひょろっと背の高いマルテンは、フードを引き被るとうつむいて歩き出した。

 第一クラスのモジャモジャ頭の担任も、第二クラスの真っ赤な髪の金切り声がうるさい担任も、大嫌いだった。それに、担任の力を(かさ)に、自分たちをいじめる生徒たちも皆嫌いだった。あんな宿舎にずっといるくらいなら野宿した方がマシだと、ずっと思っていた。自分たちの担任となった先生は、躊躇うことなくすぐさま宿舎から連れ出してくれたので、血も涙もない担任だと思ったモンシェンとは違い、マルテンは、リーユエン先生は、顔は綺麗で優しそうに見えるけれど、なかなか骨のある人だと感心していた。


 生徒の一人、ハンツォンはまたまた落胆した。

(俺は、本当についてないよ。南荒では神聖大鳳凰教の教団へやっと入団できて、さあ、これから魔導術の勉強を頑張ろうって張り切っていたのに、いきなり、魔導術が誰も使えなくなりましたなんて、ありえない事態になって…あれが、そもそもケチの付き始めだったんだ)

 

 ハンツォンは、南荒からわざわざ北荒の玄武国までやってきたのだ。

 それというのも、昨年、新教皇就任式の際、大事件が起こり、教皇や僧たちの自分勝手に愛想を尽かした、大鳳凰のアプラクサスは南荒を去り、南荒の僧魔導士は一時法術を一切使えなくなり、教団の中で授業を受けることができなくなった。


 そこへ、ハンツォンの住む町の領主であるタイソンファ公爵が、教団内の学生たちへ救いの手を差し伸べてくれた。その救済策が、北荒玄武国の魔導士学院への留学生派遣であった。

 

 魔導術を勉強したいハンツォンは、教団内での勉強を諦め、公爵の援助を受け魔導士学院を受験して合格した。そして、魔導術が勉強できると期待していたのに、一回生の学年末試験では、南荒にいた頃、魔力の枯渇で実技ができなかった経験不足の彼は遅れをとってしまい、成績が振るわなかった。そのため、第三クラスへ編入されてしまい、せっかく北荒まで来たのに、まだ、魔導術らしきものが何も勉強できない状態だった。そして、今日はついに宿舎を追い出されてしまった。


(教団の僧魔導士も高飛車で嫌な態度の奴が多かったけれど、玄武国の魔導士だって似たようなものだな。第一クラスも第二クラスの担任も最低だよ。第三クラスの担任が病気で休職中だからって偉そうにして、ったく腹が立つ。南荒で修行さえできれば、こんな北の果てまで来なかったのに・・・今度の担任もなんだか、得体が知れないし、これからどうなるんだろう)

 足取りも重く、心の中も同じくらい重苦しかった。


 サンロージアは、もう興奮状態だった。

(担任が、リーユエンだなんて、私ったら何て幸運なのかしら、やはり、黄金獅子に生まれた私は、強運の星の下にあるのだわ)

 

 魔道具騒動の後、魔道具は全て処分し、魔導術には関わらないと思ったけれど、しばらくすると、それではダメだと思うようになった。魔導術のことを何も分かっていないから、イカリオスに、甘い言葉で惑わされてしまったのだ。


 サンロージアは、自分は好奇心が強いから、また将来魔道具と知らずに何か変な物に手を出してしまったり、魔導術を使う悪巧みに巻き込まれないとも限らない。そういう事態を防ぐには、やはり、自ら魔導術を勉強し、理解するべきだと思った。それで、両親と森番小屋に隠遁するお祖父様にも、魔導士学院を受験したいと許しを願ったのだ。もちろん王太子である兄にも相談した。


 その結果、受験することは認めてもらったのだ。ただ、陛下も王后も、お祖父様も、兄も、誰一人、サンロージアが合格するなんて思っていなかった。ところが、サンロージアは、魔導庁長官の特訓の成果もあり、見事合格し、魔導士学院の生徒となったのだ。


 (でも、入学したらがっかりでしたわ。先生同士は(いが)み合うばっかりだし、授業もなんだか活気がなくて面白くないし、学期末試験も玄武岩を()れだなんて、あんなの、黄金獅子へ転身すれば簡単に叩き破れるのに、私は気が散ってしまって、玄武岩の端を少し削る程度にしか破れなくって、成績が振るわなかったせいで、第三クラスに入れられてしまいましたけれど、そのおかげでリーユエンに受け持ってもらえるなんて、本当に何が幸いするかわからないわ。明妃のお姿も素敵だけれど、魔導士服を着た、ストイックなリーユエンも素敵だわ、これから、面白くなりそうだわ)

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