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親友の友達、私のクラスメイト  作者: 秋羽


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初めての気持ち

鷹野さんは思っていたよりもテンションが高くて、面白い人だった。




 2年生になってから初めて同じクラスになった彼女は、すごく目立っていた。


 綺麗な人。


 第一印象だった。




 周りの声は、高嶺の花。そう讃えていた。


 私もそう思う。


 人当たりはいいし、運動神経も成績もいい。


 困ってる人には声をかけるし、何より顔がいい。




 スタイルも良くて可愛い。


 アイドルだと言われても信じるぐらいルックスがいい。


 でも彼女はいつも元気で、色んな人と友達で、よくふざけていたりボケたりつっこんだりする人。




 私とはちょっと違う。


 友達になりたい。


 ずっと思っていた。




 そう思っていた鷹野さんの親友の雪と遊んでいたら鷹野さんに会えた。




 鷹野さんと話してみると、ほんとに楽しい人だってわかる。




 もうすぐ夏休みに入ってしまうのが辛い。夏休みになると学校がないから鷹野さんに会えない。


 私は部活でずっと学校にいるのに。




 夏休み前の私はそう思っていた。


 だけど、実際は違った。


 鷹野さんは毎週わたしと会ってくれるし、遊んでくれる。





 鷹野さんに会いたい…




 鷹野さんに連絡したらきっとすぐに返信が返ってくる。


 いつも連絡したら数分後には返信がある。そういうことが嬉しい。




 また遊びたいって連絡したい。




「宮下、次立ち順だよ」


「え、ごめん、ぼーっとしてた」




 今は部活中なのに鷹野さんのこと考えていた。今日は全然集中できない。




「宮下大丈夫?今日調子悪くない?」


「調子悪いかも、感覚が掴めない」


「まぁ、無理しないで」




 弓道部には集中力が大切なんて言うけど、今は全く集中できない。




 いつもできていたことができない。


 同じ部活の友人にも心配される。




「残念してないだけマシなのか。」


「一昨日は皆中(かいちゅう)連発だったのにね」




 弓道で立ちがあり、4本矢を飛ばす。


 残念というのは的に1本も(あた)らないこと。


 皆中は4本全て的に中ること。




 私はその日のテンションが自分の射に反映するから、わかりやすい。




 一昨日は鷹野さんと遊べて、嬉しかった。


 今週は部活があるから、鷹野さんに会えない。


 そう思うと落ち込んでしまう。やる気が出せない。





 鷹野さんに会いたい。





「今日はもう無理かも…」


「そんなに落ち込む!?珍しいね」




 中らないから落ち込んでる訳じゃない。


 私は中らないから落ち込むようなタイプじゃない。





「みやのぉ…」




 聞き覚えのある声だ。


 この声…鷹野さんだ。


 私は声にする方に視線を向けた。





 なんで?




 なんで夏休みなのに鷹野さんが学校にいるのか。




 鷹野さんは宮野(みやの)って呼んだ。





 それは同じ部活で違うクラスの子だった。




 弓道部の射場に鷹野さんが来るのは初めて、おどろいたけど、何故かドキドキした。




 私に会いに来た。


 そういう理由だったらいいのに。




「みさきどうしの、わざわざここまで来て」


「これ、頼まれてたもの持ってきたんだから感謝してよ」


「あ!ありがとう、見学してく?」


「帰るから大丈夫」




 遠くで2人のやり取りを見ながら胸の奥が、少しだけざらつく。


 私に会いに来たならいいなぁ。なんて都合のいいことを考える。





「あ、宮下さん」




 心が躍った。私を呼ぶ声がこんなにも透き通るのか。




 思わず駆け足で近づいた。





「鷹野さん、久しぶりだね」


 もっと言いたいことがあったはず。


 なんだか恥ずかしいから言えない。




「弓持ってるのかっこいいね」


「ありがとう…!みていく?」




 鷹野さんはさっき帰るって言ってたのを聞いていた。


 だからこんなこと聞いても意味がないのはわかってるけど、もしかしたら見てくれるかもしれない。


 そんな期待をしている。




「そうだなぁ、じゃ見ていこうかなぁ」


「ほんと!がんばるね!」




 嬉しい。心做しか指が震えていた。やる気が出てきた。


 鷹野さんが見てくれるだけで嬉しい。




「皆中するぞぉ」




 鷹野さんではない友人に意気込みを聞かせ、やる気に溺れそう。




 雑念しかない。心を落ち着かせることができない。


 このスポーツ向いてないんじゃないか。そう思ってしまう。




 鷹野さんが見てくれているだけで、原動力になる。


 だけど、緊張する。


 自分でもわかるほどに心拍数が上がっている。


 友人に見られるだけでこんなにも緊張するのか。




 今まで見られるということに意識をしていなかったからこんなに緊張するのは初めてだった。





 カンッ




 4本目を引き終わった時に聞こえた音だった。




「惜しい。蹴ったか」




 皆中を逃した。


 的を矢で蹴ってしまった。あと少し。




 3中。残念連発だったさっきとは比べ物にならない。普通に考えればいい成績。


 だけど、悔しい。


 試合でも感じたことのないぐらいに悔しい。




「宮下さんすごいね!めっちゃかっこいい!」




 鷹野さんの所へ戻ったら褒めてくれた。


 嬉しい。もっと褒めて欲しい。




 もっと頑張りたい。




 もっと私を応援して。




 もっと一緒に居たい。




 他の誰かじゃない、もっと私を見ていて。




 そんなこと…思ったことなかったのに。




「鷹野さん、もうすぐしたら部活終わるから一緒に帰らない?」


「あーいいよ!中庭で待ってるよ」




 少し考えたように見えたけど、了承してくれたから深く考えないことにした。




 鷹野さんが射場から出ていって、部員の輪に戻る。




「さっきのって鷹野さんだよね」




 興味深い顔をして聞いてくる。




「そうだよ」


「やっぱり可愛いね、宮下友達だったの?」


「うん、めっちゃ喋る訳じゃないけど、ほらクラスメイトだから。」




 友達。そう。大切な友達。




 もっと仲良くなりたい。もっと知りたい。


 ただそれだけ。




「よぉし、部活するぞ」




 みんなが少し引くぐらいにやる気を出していた。


 普段の私はやる気がない訳では無いが、こんなにも真剣に取り組んだことはなかった。




 鷹野さんの存在はいつしかどんどん大きくなってきた。




 それに私は良くない感情のひとつの名前にようやく気づいた。




 ――独占欲。




 こんな感情鷹野さんはきっと困る。




 これ以上鷹野さんが私の中で大きくならないで欲しい。


 じゃないと、今以上に求めてしまう。




 誰も望んでいたい感情は捨てた方がいい。




 誰も得しない。




 部活が終わる時間まで今までにないぐらい頑張って、片付けも素早く終わらせた。




 いつもだらだら着替えてたのに、今日は駆け足で部室を離れた。




 校舎に囲まれた中庭に向かうと、鷹野さんはベンチに座っていた。




 屋根がある訳ではないけど、木々が影になっている。




 鷹野さんが日焼けしないように守ってくれる木々に感謝をした。




「ごめん、お待たせ」


「全然いーよー、座ってただけだから」


「何見てたの?」




 鷹野さんはさっきまで上を見ていた。


 なにかある訳では無さそうだった。




「雲になりたいなーっておもって」


「雲に?なんで?」




 わたしは知らぬ顔で鷹野さんの隣に座った。


 肩と肩が触れ合えそうなほどに近い。




 友達なら普通なのに、何故かぎこちない。




「自由そうじゃん」




 私は言葉につられて空を見あげた。


 雲は風に流れに乗って流れていた。




「鷹野さんがああやって流されると困る」


「どーして?」


「会えなくなるでしょ…」




 恥ずかしい。


 普段あまりに言わないようなことを言ってしまって、かなり後悔してる。




「宮下さんに会えなくなるのは困るから今のままがいーね」




 彼女は手を握ってくれた。


 ドキッとしてしまう。




 以前にも彼女から手を握られたことはあった。


 その時よりも緊張してしまう。




「帰ろっか」


「うん…」




 鷹野さんは手を離さなかった。


 繋いでた手は駅まで一緒だった。




 鷹野さんの体温が心地よかった。




 私は……一体何を思ったのだろう。




 鷹野さんは、私を………




 友達でも手は繋ぐ…それだけの事だろうか。




 でも…私は緊張している。


 友達よりも深い感情を持ってしまった。




 この感情に名前はつけない。




 友達以上の関係はなんなのだろうか。


 私には答えが見つからない。




 彼女は一体何を思っているのか。知りたい。教えて欲しい。




 じゃなければ私は、私じゃなくなるかもしれない。

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