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史上最強のメジャーリーガーは引退後は二度目の異世界で自由なスローライフを送りたい  作者: 葵彗星


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第84話 大精霊の祠

「兄さん行ってくるわね!」


 サリアのその一声が聞こえた直後、呼び止めようとしたジュスランだったがもう二人の姿は消えていた。


「い、一体……何がどうなって……?」

「……なんということだ。まさか空まで飛べるとは」

「空を飛ぶ? ゴーイチにそんな芸当が……馬鹿な」

「はは……さすが勇者レイだな」


 水平線の彼方まで飛んでいく豆粒のような人影を放心した状態で二人は眺めた。


「魔道船よりも速く飛べる人間なんて、おそらくレイだけでしょうな。うらやましい」

「…………」

「おや、どうされました? ジュスラン様」

「エンリケ……率直に聞きたい。ゴーイチのことについてどう思う?」

「……そうですね。私が今まで出会った男の中で間違いなく最強……」

「強さとか、そういう話ではない。器量の話だ」

「器量ですか……?」

「すまん……ならば質問を変えよう。あの男は……その……サリアを幸せにできるかな?」

「え? そ、それは……」


 唐突な質問にエンリケは面食らった。ジュスランの目を見つめたエンリケは回答に困った。本心を話すと、ジュスランの気を損ないかねないからだ。


「……いえその……まず彼は人間でして……」

「……サリアは……あいつを……愛してる……」

「……!?」


 思わぬ言葉にエンリケも固まった。


「正直信じたくないが……もしサリアが人間の男と、恋に落ちたと知られたら……」

「……私は……こんなこと本当は申したくないのですが……」


 ここで変に気を使うのはよそう。エンリケは腹を決めた。


「サリア様の意志を尊重すべきかと……」

「…………そうか」


 意外にもジュスランは穏やかな顔で見つめ返した。もしかしてジュスランも察しているのか、サリアに相応しい男が誰なのか。


「では逆に聞きますが、ゴーイチ以外でサリア様に相応しい男はいらっしゃるのですか?」


 ジュスランはその質問に答えられなかった。やがて船から部隊の兵士が降りてきて二人を呼び、二人は船に戻った。


*


 俺達の体はあっという間に島が見えなくなるくらいの上空彼方まで飛んだ。ものの五分も経たないうちに、深い霧に覆われた山々が水平線に見え始める。あれが“禁断の地”と呼ばれる『ティアべリス山』、いかにも強大な魔物の巣窟といった恐ろしい外見の山だ。〈測定〉スキルだと標高は3000メートル以上もあるらしい。

  

 3000メートルとは凄いな。日本だと富士山並の高さということだ。確かに外見もどことなく似ている。まるで里帰りしたような気分だ。

 この山に大精霊がいる。エルフの民ですら“禁断の地”と呼ぶほどの存在なのだ、一体どんな奴なんだろうか。今度こそこの目で拝んでみたい。


 ひとまず開けた場所を見つけたので、そこに着陸した。だいたい位置的に山の中腹部か、〈測定〉で正確に高度を測ろう。


「だいたい地上から2000mくらいの場所だな。さて、大精霊様とやらの祠はどこかな」

「…………」

「ん? どうした、サリア?」

「もう着いたみたい」

「なに!?」


 サリアが茫然として見つめた先に大きな洞穴が見えた。ただの洞穴じゃない、明らかに人口的に彫られ周囲も大理石で固められている。入り口の両脇には、神殿に用意されているような神聖な燭台の上に炎が灯されている。


 さっきの島の神殿とも雰囲気は似ている。大自然の深い山の中でここだけ明らかに異様な造りだ。


「まさか一発で祠を見つけて着地するだなんて。きっと大精霊様があなたを呼び寄せたのね」

「いや……たまたまさ。きっと」


 なんかサリアの言っていることわかる気がする。気のせいか、洞穴の奥から俺を招き寄せるような霊的な何かを感じる。


「シモーヌはとっくに中に入ってるはずよ。急ぎましょう」

「……待て!」

「どうしたの?」

「あの文字は?」


 ふと入口の上部の石板に刻まれた文字に飛びついた。一見しても読めない、でもどこかで見た記憶がある。


「あぁ、その文字ね。ごめんなさい、私も読めないの。古代文字はかなり漁ったつもりだけど……」

「……サンスクリット文字……」

「え? あなた読めるの?」

「いや、俺も読めない。でも……これはサンスクリット文字だ」

「……サンスクリット?」


 思い出した。間違いなくこれはサンスクリット文字の一種だ。サンスクリット文字とは俺がいた地球の古代インドの言語。海外旅行でインドの文化遺跡を巡った際に何度も目にした。


 一体なんでこれがこんな場所に。それともたまたま似ているだけか。


「すまん、一刻を争うんだったな。中に入ろう」


 大精霊に会えばなにかわかるかもしれない。ひとまずは少女を助けるほうが先決だ。

いつもご覧いただき誠にありがとうございます!毎日ご覧になっている読者様には心から感謝いたします。


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