第77話 ワッツからの報告
「セリナ!?」
大声で助けを呼ぶセリナの声が聞こえ、突然目が覚めた。
俺は魔道船の救護室で寝ていた。寝る直前は夕方だったはず。とっくに日が落ちてもう外は真っ暗だ。
だいぶ寝込んでしまった。やはり相当疲れがたまっていたのか、いや、そんなことよりセリナが気になる。
さっきの夢の中でセリナが叫んでいた、助けを求めているようだったけど、セリナの身に何か起きたのだろうか。
「……いない?」
セリナは同じ救護室にいたはず。いや、それだけじゃない。
なんてことだ。セリナが看護していたあの傷ついた少女も消えていた。
どうなってる。セリナが連れ出したのか、そんなことするとは思えない。
ほかの連中が連れ出したのか、そういえばシモーヌはどうしているんだ。
わけがわからない。しかしいないことは事実だ。とにかくここにいても始まらない。一旦外に出よう。
洗面所に行って顔を洗って、頭を整理した。寝る直前、エンリケの計らいで行方をくらましたワッツを捜索するため、大量の兵士を動員させたことを思い出した。
もう日が暮れて夜だ。とっくにその捜索隊も帰ってもおかしくないはずだが、誰も帰ってないのか。
島が広いから捜索に時間がかかっているのか、にしても静かだ。静かすぎる。
「おい、誰か! 誰かいないのか!?」
魔道船の中を歩き回るも、人っ子一人いない。どうなってる。
サリアが寝ている部屋へ向かった。確かジュスランが看護していた、さすがに二人はいるはず。そう思って部屋のドアを開けた。
しかし、もぬけの殻だった。セリナだけじゃなくサリアまで消えたのか。
「サリアー! シモーヌ! ジュスラン! どこだああああああ!!」
船内に響き渡るほどの大声を出した。声量には自信がある、これで応答してくれ。
しかし返事はない。嘘だろ、俺以外誰もいないのか。
「……今のは!?」
音が聞こえた。距離、方角からして遠くない。
階段を上る音だ。入口の扉に伸びているタラップを誰かが上っているに違いない。
扉を開けて下を見下ろしたが、暗くて顔が見えない。明かりをつけて顔をのぞいた。
「……お前は?」
「あなたはゴーイチさん!! 驚かさないでくださいよ」
驚いたのは俺の方だ。一瞬誰だと思ったが、邪竜教団に侵入していたスパイのワッツだ。
「あの……ゴーイチさんだけですか? ほかの方は乗っていないんですか?」
「それを聞きたいのは俺の方だ! お前こそ、どこに行ったのか知らないのか?」
思わず大声を出して詰問してしまった。でもワッツは困惑したままだ。
「私も今しがた、この船に戻ったばかりでして……」
「今までどこに行ってたんだ? お前を探しにこの船に乗っていた兵士達が大勢捜索に出たんだぞ」
「え? そうだったんですか!? しかし誰とも会ってませんよ」
「誰とも……? 本当なのか?」
「ほ、本当です。信じてください……」
ワッツの表情からして、嘘をついているように見えない。仕方ない、質問を変えるか。
「そういえばお前に聞きたいことがあるんだ。奴隷の少女についてだ」
「え? なんですって? 奴隷……?」
「奴隷の少女が森の中で倒れていたんだ。かなり傷ついてな。セリナの治療で一命はとりとめたが、ほかにも奴隷の少女がいるかもしれないんだ。お前なら知ってるだろうと思って」
「…………」
「おい、黙ってないで何か言ってくれ。ほかにも奴隷の少女がいるんだろ。どのくらいの数だ。あとできれば捕らえられている場所も知りたい」
「……本当に奴隷がいたんですか?」
なんだって。ワッツの方から聞き返してくるとは思わなかった。かなり怪訝な顔だ。
「何言ってる? お前はスパイとしてこの島に潜入していたんだろ、知っているはずだ」
「それはそうですが……その……奴隷の少女なんて見たことありません」
「……なに!?」
耳を疑った。このワッツ、まさかこの期に及んでとぼけるつもりか。思わず肩を掴んだ。
「そんなはずはない! この目で見たんだ、森の中で傷ついて倒れてたんだぞ!」
「そんなこと言われましても、本当に……見ていないんです。この教団は奴隷なんて一人も使っていませんでした」
「……嘘だ!」
肩を揺さぶってみたが、やっぱりワッツは態度を変えない。
「ぐぅ! ほ、本当に見てないんですって……はなしてください!」
「まさか……いや、だが俺達は見たんだ。そしてこの魔道船に運んで救護した」
「そうなんですか……わかりました。ではあなた方を信じましょう。私も捜索に協力します」
「助かる。じゃあ、手分けして探すぞ。来い」
ワッツと一緒に船を降りた。外はすっかり夜だ。ワッツは神殿の中を探索していて、誰も来ていないと言っていた。
となると、少女を見つけたあの森の中だ。しかしまいった。昼間ならともかく、夜間で探すとなると暗いから時間がかかる。
「実は森の奥深くには誰も足を踏み入れていけないという禁断の洞窟がありまして」
「禁断の洞窟?」
「ボラリスが言っていました。誰も足を踏み入れるなと。私はスパイゆえ、入ったことあるのですが」
「……それで?」
ワッツはそこでかぶりを振った。
「特に何もありませんでした」
「何もない? 本当か、それは?」
「はい。洞窟の奥には広間があって邪竜の復活に用いるような祭壇もありましたが、まだ完成されていなかったですし、正直あまりに小さい。そこで儀式を行うと考えられませんでした」
「……わかった。ひとまずその洞窟から探索だ」
いつもご覧いただき誠にありがとうございます!毎日ご覧になっている読者様には心から感謝いたします。
この作品が気に入ってくださった方は高評価、ブックマークお願いします。コメントや感想もお待ちしております。またツイッターも開設しています。
https://twitter.com/rodosflyman




