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史上最強のメジャーリーガーは引退後は二度目の異世界で自由なスローライフを送りたい  作者: 葵彗星


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第76話 謎の少女2

「……なるほど、奴隷がいたとは。それは想定外だったな」


 部屋に入って来たエンリケに事情を説明した。エンリケもかなり渋い顔をしている。


「もしかして、まだ生き残りがいるのかも」

「可能性は高いな。でも島が広いし、なにより地下に大神殿もある。一人残らず見つけ出すのは時間かかるぞ」

「いや、近道というわけではないが。この島について詳しい奴なら一人いるぞ」

「あぁ……例のスパイか。確かワッツって名前だっけ」


 ワッツに洗いざらい聞き出せば、あと残りどれくらい奴隷がいるか、どこに脱走した可能性が高いか、全て聞き出せるな。


「そういえばワッツさん、さっきから姿が見えないけど今どこに?」

「地下の神殿に行くと言っていたな」

「神殿に?」

「なんでも、ボラリスがどこへ逃げたか、その足掛かりが掴めるかもしれないと言ってたな」

「そうか。セリナ、少女を頼んだぞ」


 セリナの治癒魔法ならひとまず安心だろう。とにかくワッツに会って情報収集だ。


「じゃあ、早速俺が行ってくる」

「おい、ちょっと待て!」


 突然エンリケが呼び止めた。


「聞いたぞ。まだディンフォースを討伐した直後だというのに、休む間もなく働いているそうだな……」

「それがどうした。言っておくが、俺の体力をなめるな」

「……ふぅ、全くお前という奴は……」

「ゴーイチさん。あなたが倒れたりでもしたら、きっと姉さんが心配します」

「そういうことだ。ジュスラン様率いる部隊と、俺が連れてきた王宮兵士達だけで捜索させる。お前は休んでいろ」

「……わかった」


 二人の言う通りだ。確かに俺は働きすぎたな。ここはお言葉に甘えることにしよう。


 窓から外を眺め、兵士達が大勢神殿に向けて出発した。意外にも人数が多くて驚いた。まぁこれだけの数がいれば安心できるな。

 さて、エンリケには強気なことを言ったが、なんだかんだで休めるのはありがたいな。ちょうど空きのベッドがあって、俺も寝よう。

 ベッドに体をうずめると、すぐに眠気が襲ってきた。体は嘘をつかないな。今日は一日いろいろありすぎた。明日はいい一日になれよ。


*


 ゴーイチがベッドで寝て約十分後、一人の少女が同じ部屋で目を覚ました。少女はすぐに体を起こし、室内を見回す。


 隣のベッドに耳が尖ったエルフの少女、そのさらに隣のベッドに人間の男が寝ている。

 エルフの少女、人間の男、二人の顔を見て少女は頭の中にある記憶がよみがえる。そして強烈な頭痛が走った。


「……うぅ……痛い……わ……わたし……は……」

「……はっ!? 気が付いた!?」


 隣のベッドで寝ていたセリナが目を覚まして、すぐに少女に身を寄せた。


「大丈夫!? まだ完治はしていないの、だから無理しないで。寝てていいから」

「……こ……ここは……どこ……」

「魔道船の中よ。大丈夫、もう助かったから」

「も……戻らなきゃ……」

「戻る!? 何言ってるの。もう邪竜教団は壊滅したわ。あなたはおうちに帰れるのよ!」

「……邪竜……教団?」

「あなたを奴隷としてこの島で働かせていた連中よ。大丈夫、私達がもう撃退したから。ついでに邪竜もね」

「…………違う……」


 セリナの言葉は少女の記憶と食い違っていた。


「違う? あなたは奴隷じゃないの?」

「……違う……逆なの……」

「逆って、その……何が言いたいの、あなたは?」

「……ボラリスは?」


 さっきから自分の話を聞いているのか聞いていないのか、少女との会話が嚙み合わない。セリナはかまわず質問に答えた。


「……逃げたみたい。大丈夫、そのうち行方を掴んで見せるから」

「……見つけないと……」

「何言ってるの? 変なこと言わないで、とにかくあなたは休んで……」


 セリナが強引に少女の体を掴んで寝かせようとした。だが少女が手ではたいた。


「触るな、エルフごときが!」


 突然口調が変わった少女に戸惑う。でもなんとか寝かせないと。そう思ってもう一度少女の肩に腕を伸ばしたその時。


「……え!?」


 少女に手で叩かれた部分が痛み出す。すると痛み出した部分が急に黒ずみだした。その黒ずんだ部分から黒いもやが徐々に噴出してきた。


 気のせいではない。セリナがどれだけ手で払ってても、魔法をかけても黒いもやが消えない。次第に意識が薄れ、セリナは床に倒れ込んだ。


 天井を見上げると、少女の顔が自分を見下ろしていた。その顔は不気味に微笑んでいた。そしてあどけない少女の顔はどこにもない。セリナはようやく気付いた。


「……あぁ、そんな……ゴーイチさん……」

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