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史上最強のメジャーリーガーは引退後は二度目の異世界で自由なスローライフを送りたい  作者: 葵彗星


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第73話 休息

 その時、シモーヌの顔を見て俺はハッとした。しまった。


「あぁ! えぇと……か、かなり小さな島の国だからな……多分お前も知らないだろう……」

「……そう……」


 危なかった。俺が勇者レイだとは知られてしまったが、さすがに異世界人だということまで知られると厄介なことになる。でも今のでうまく誤魔化せたかな。


「あ! 姉さんが降下し始めました」


 ちょうどいいタイミングだ。どうやら島を落下させる地点まで来たらしい。気づけば完全に大海原のど真ん中に来ていた。もう水平線まで陸地が見えないな。

 ここなら確かに津波が発生しても、陸地には届くまい。でもここは念のため、最後の一押しをするか。


「ちょっと、ゴーイチ何してるの!?」

「島の落下速度を少しでも下げるのさ。まぁ、見てろ」


 巨大な物体が超高速で落下した時のエネルギーは甚大だ。これだけ大きな島となると、ほぼゼロに近い速度で落下させないと相当大きな津波が起きる。


 やり方は簡単。今までは水平方向に鉄球を打ち続けていたが、今度は真上に飛ばす。島の自由落下は力を反対方向に加えない限り、ずっと落下速度が増し続ける。逆に言えば、常に上方向に引っ張り続ければそれだけ落下速度は減り続け、最終的にほぼゼロになる計算だ。


 俺の予想通りになった。島はかなりゆっくりと落ち続けている、見た感じ人の歩く速度とあまり変わらない。これくらい遅ければ十分だろう。


「凄い。確かにこれだけ遅かったら、津波が起きてもかなり小さくなるわね」

「着水します! 全員何かにつかまってください!!」


 操舵主の大声が聞こえた。これだけの速度まで落ちれば十分だ。鉄球を戻して、ゆっくりと魔道船が海に着水するのを見届けた。

 着水時にはかなり大きく揺れたが、予想されていた津波も数センチ程度で済んだみたいだ。


「うおおおお!! やった、大成功だ!!」

「奇跡だ! また奇跡が起きた!!」

「ゴーイチ、いや、勇者レイ万歳!!」


 船内にいた大勢の兵士達から祝福を受けた。あまりに大声すぎてさすがに照れるな。


「……やっぱりあなた、規格外よね」

「誉め言葉として受け取っておこう」

「皆さん、まだ終わりじゃありませんよ。島が海に着水したら、そのまま沈み続けますから……」

「あぁ、そうだな。島と魔道船を結んでいたロープをほどいて離陸しないと……」

「もうそれは済ませたわ」

「うわ、サリア!?」


 くちばしにロープを加えたサリアがいつの間にか甲板に着陸していた。


「さすが行動が早いな。助かるよ」

「…………」

「ん? どうした……サリア!?」

「姉さん! しっかり!!


 突然サリアがぶっ倒れた。体中汗だくで息がかなり荒い。


「……ごめんなさい……もう……限界……」

「全く……無茶しすぎだ……」

「そうですよ。サリア様の身に何かあったら……」

「姉さん……もう休んで……」


 すると次の瞬間、サリアの体が白い光に包まれた。今度は何が起きるんだ。


「う? これは……まさか……」

「……ただいま……」


 そういうことか。どうやら時間切れのようだ。元の姿に戻ったサリアが俺の目の前に寝そべったまま現れた。隣にラズリーもほぼ同じく横たわっている。


 元の姿に戻れてひとまず安心した。はやいとこサリアをベッドで寝かせて安静させないとな。


「いいベッドが船内にあるから、そこまで俺が運ぶ」

「……サリア様……」

「…………」

「大丈夫。ぐっすり寝ているだけだ。じゃあ、あとは頼んだぞ」


 サリアを抱えて甲板を出た俺が向かったのは船長専用の寝室だ。今のこの魔道船の船長は代理でエンリケが担っている。


「おぉ、ゴーイチよ。先ほどはよく……サリア様!?」

「だいぶ疲弊しているんだ。すまないが、そこのベッドを借りるぞ」

「あぁ……それはかまわんが……」


 背の高いサリアにとってこのベッドは少し小さすぎたかな。でも普通の船員の固いベッドに比べたらマシだ。


「ジュスラン様から聞いたのだが、サリア様はラズリーと融合して巨鳥と化していたとか……」

「そうだ。俺も最初見たときは驚いたけど、鳥となった後もちゃんとサリアとしての自我は生きていた。大魔道士ならではの芸当かな」

「融合……それは偉大なる魔道士が、昔から夢見ていた神域への侵入……」

「ん? 急になんの話だ?」

「いや……なんでもない。それよりゴーイチも疲れたんじゃないのか。今日はいろいろありすぎた」

「俺の体は大丈夫だ。それよりさっき島が着水したばかりだから、船がちゃんと離陸できるか見てくる。すまないがここでサリアの様子を見てくれないか?」

「ゴーイチ。その役目はお前の方が適任じゃないのか」


 何を思ったのか、エンリケがにやにやしながら俺の方をたたいた。


「知っているぞ、お前とサリア様との関係を……」

「か、関係って……よせよ。そんなことは……」

「はは、とぼけなくてもいい。私も同じ気持ちだ。サリア様の相手はお前以外に……」

「サリア!!」 

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