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史上最強のメジャーリーガーは引退後は二度目の異世界で自由なスローライフを送りたい  作者: 葵彗星


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第70話 ボラリスの正体

 せっかく無事に帰還できたというのに、とんだ歓迎を受けたな。


「あいつらちょっと思い込みが激しすぎるんじゃないか? いくらなんでも、鳥の影を邪竜と見間違えるだなんて……」

「仕方ないわよ。ラズリーと融合して大きくなったこの体だとなおさらね……」

「そう……確かに竜っぽく見えるかも……」

「セリナ様ー!! よくぞご無事でー!!」

「サリア様は!? サリア様はいずこへ!?」

「邪竜は!? まさかあなた方が倒されたので!?」


 島へ着陸してそうそう、駆け寄って来たティアランピアの兵士達に囲まれて質問攻めにあった。まさかもうここまで来ていたとは。


「……ゴーイチ殿……」

「おや、あんたは……ギルドマスター!? どうしてここに!?」

「話せばいろいろと長くなるんだけど……多分彼らがここに来たのは、エンリケさんのおかげなのよ」

「……なんでシモーヌが知ってる?」

「はは。もう全部話してもいいんじゃないか」

「……そうですね……」


 シモーヌはエンリケと一緒に秘密裏に邪竜教団について調査をしていたらしい。この邪竜教団にも、すでにスパイは潜入していた。

 なるほどな。どうりでやたら邪竜教団について詳しいわけだ。ただの二流魔道士だと思っていたのに、予想外な大役に抜擢されてたんだな。


「……私も、エンリケさんには昔いろいろと世話になってね。勇者レイの話もだいぶ聞かせてもらっていたの」

「懐かしいな。しかし……私の話は嘘ではなかっただろう?」

「えぇ、おかげさまで……こうして巡り合えただなんて、夢にも思わなかったわ」

「なんだ。まさかあんたも俺の正体知っていたのか?」

「当然さ。旧ギルドカードを、あそこで受け取ったからな」


 しまった。そういえば、過去の討伐履歴が記録される仕組みだっけ。

 待てよ、まさか俺の正体はほかの奴らにも知れ渡ったのか。


「安心しろ。このことは、一部の人間以外には秘密だ」

「い、一部の人間って……」

「王宮関係者の間、とだけ言っておこう」


 王宮関係者、王族の周囲にいる人間達か。確かにあいつらなら、俺が勇者レイだとは知っている。まさか百年後に戻るとは夢にも思わなかったろうな、戻ったらどんな顔でお出迎えされることやら。


「それにしても、本当によく無事に戻ってきてくれた。この折れた棍棒が落ちていたのを見たときは、もう駄目かと思ったが……」

「あ!? それは……」


 エンリケが差しだしたのは、俺が持っているミスリル製の棍棒の残骸だ。さっきのディンフォースとの激闘で奴にとどめを刺した鉄球をフルスイングした際に破損したんだ。あの鉄球の大きさだと無理もない。この島に落ちていたとはな。


「ありがとう……でも、リカバリはできそうにないな、これじゃ」

「念のため聞くが……その……奴は?」

「あぁ、邪竜ディンフォースなら……倒したぞ」


 周りにいた兵士達は一気にざわついた。対してエンリケはさほど驚いていない、まぁ俺の正体を知っているからな。


「奴にとどめを刺した際に生じた爆発の衝撃で、かなり遠くまで飛ばされてね。帰還するのに時間がかかった」

「みなさん、信じられないかもしれないけれど本当です。ゴーイチさんのおかげで邪竜ディンフォースの生まれ変わりは無事討伐されました。私と姉さん、そしてこちらにいるシモーヌさんもハッキリ目撃しています」

「本当に……全員ご無事で……よかった……うっ……」

 おいおい、エンリケが急に泣きそうな声になるとは。いかついギルドマスターの印象だったのに、意外な一面もあるんだな。


「エンリケさんも昔、ハヴィエール卿にはお世話になったことがあってね」

「大丈夫ですよ、エンリケさん。私の方こそ、ご迷惑をおかけして本当に申し訳ありませんでした」

「いえ、セリナ様が謝る必要はございません。私達がもっと早く奴らの動向に気付いていれば……」

「そういえば、邪竜教団の連中は?」

「神殿内に教団の残党らしき奴らは残っていなかった。多分逃げたんじゃないか?」

「残党どもは問題ありません。問題なのは……頭領」

「頭領? 教団のボスか……確か白い法衣に身を包んだ男か?」

「そうだ。名前はボラリス、こちらで素性を調査したところ、かつて宮廷魔道士だった男だ」

「宮廷魔道士?」

「まさか邪竜教団の頭領になっていたとは。陛下もたいへん嘆いておられた」


 ボラリスという男にどんな過去や背景があったのか。いろいろと気になるところだが、俺達も完全に邪竜との戦いで忘れていた。あいつは今どこだ。

 

「私が徹底的に痛めつけたから、もう戦う力は残っていないはず。悔しいわ、とどめをさせなかった」

「な!? 今のは……!?」


 エンリケと周りの兵士達がぎょっとした。突然巨大な鳥がしゃべりだしたから無理もないか。


「安心しろ、今のはサリアだ」

「え? ジュスラン様……」

「……兄さん……」

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