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史上最強のメジャーリーガーは引退後は二度目の異世界で自由なスローライフを送りたい  作者: 葵彗星


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第68話 セリナのメッセージ

 エンリケとジュスランが魔道船に乗り込み移動を開始して、はや一時間は経過した。ひたすら北西の方角へ進路を保ち、向かった先はほかでもない『天空竜の跡地』だ。


「見えてきました。あれがそうです!」

「あれが……『天空竜の跡地』……」


 操舵室内にいた誰もが初見だった。天空に浮かぶ巨大な島を目の当たりにし、その場にいた全員が見入った。


「なんて巨大な島だ。あんな島が空に浮かぶとは……」

「おい、見ろ! あれを!」


 ジュスランが即座に何かに気付き、島の入口近辺を指差した。


「あれは……何かの残骸か?」

「ケンティマヌスの破片です」

「ケンティマヌス?」

「この島の最終防衛兵器ですよ。簡単に言えば、巨大ゴーレムの魔物です」

「……なぜそんなことを知っている?」


 ジュスランが訝しげな眼でエンリケを睨んだ。


「お言葉ですが、今は詮索をしている場合ではないかと……」

「……そうだったな。操舵主、速度を上げろ」


 島に近づくにつれ、その全貌が少しずつ明らかになってきた。さっき見つけたケンティマヌスの残骸の破片があちこちに散らばっている、間違いなく激戦があった。


「若様、あれを!!」


 部下の衛兵の一人が何かを見つけ叫んだ。ジュスランとエンリケも窓際により、その視線の先を追った。


「魔道士です! 魔道士が倒れています」

「ローブの色からして……間違いなく邪竜教団の一人でしょう」

「操舵主、ここへ着陸しろ!」

「ジュスラン様、何をお考えで?」

「決まってる。生きてるなら……尋問するまでだ」

「はやまってはいけません。簡単に口を割るような連中ではありませんぞ」

「そんなことはわかっている。だがこの広大な島を、むやみやたらと捜索するのは時間がかかる」

「……ですが……」

「なんだ? 妙にあの魔道士のことを気にかけているようだな。たかが邪竜教団の下っ端だろ」

「……わかりました。ならば私にお任せください」

「お前に? それはいいが、しくじったら責任はとってもらうぞ」

「若様! この島の最奥部に神殿らしい建造物を発見しました」

「そうか。ならばお前達はその神殿内部を捜索しろ!」


 ジュスランが操舵主に着陸を命じた。

 着陸後、すぐさまエンリケとジュスランの二人が倒れていた魔道士に駆け寄った。

 うつ伏せに倒れていた魔道士の体を抱きかかえ、顔を覗いたエンリケはハッとした。


「……遅かったのか……」

「い、いえ……そういうわけでは……」

「紛らわしい反応をするな。生きてるなら、早く起こせ!」

「……うぅ……ご、ごほっ!!」


 魔道士は咳ばらいをし、目を少しだけ開いた。そしてしばらくエンリケの顔を見ると、腕を急に掴んだ。


「エンリケ殿!! よかった……ここを見つけられたんですね!!」

「ワッツよ。そなたこそよくぞ無事だったな!」


 二人の邂逅に思わずジュスランが呆気にとられた。


「……どういうことだ。まさかお前達、知り合いか?」

「そうです。この男は旧友のワッツと言いまして、スパイとして邪竜教団に潜入させていたのです。長年の潜入工作が実って、今ようやく奴らの本拠地を暴き出すことに成功しました」


 それを聞いてジュスランはわなわなと震えだした。


「な、なぜそんな大事なことを今の今まで黙っていた!?」

「申し訳ございませぬ。奴らの本拠地が確実に見つかり、我々が到着するまではどうしても外部にスパイの存在を秘匿せねばならず……」

「秘匿だと!? 私は『ティアランピア』のエルフの長だぞ!! いっぱしの冒険者と同等な存在だと思っていたのか、貴様は……」


 激高したジュスランを周囲の部下たちがなだめた。


「こらえてください、若様!! 今はお嬢様方の捜索が最優先ですぞ!!」

「……あぁ、そうだったな!! ワッツとやら、セリナとサリアはどこにいる!?」


 ワッツは即座に人差し指を立てた。


「……どういう意味だ、それは!?」

「……ディンフォースを討伐するため男の戦士とともに……鳥に乗って空高く……」


 ジュスランは口を開けたまま固まった。そして空を見上げた。


「……馬鹿な……何を考えてる?」

「私は確かに見ました。あの火山の河口から、巨大な黒い竜が復活したのです。あれは間違いなく、ディンフォース……」

「やはり……ディンフォースはどこへ消えた?」


 ワッツは咳払いをしつつも事細かに仔細を語った。


「ちょっと待て、巨鳥に乗っていたのはゴーイチと女性二人だけと? サリアの姿は見てないのか?」


 ワッツはかぶりを振った。ジュスランは考え込んだ。


「どうしました? なにか引っかかるのです?」

「まさか……サリアはついにあれを使ったのか……」

「あれ、と言いますと?」

「お前は知らなくていい。とにかくセリナ達はもうこの島にいないようだ。となれば……」

「ジュスラン様ー!!」


 島の神殿内部を捜索していた衛兵たちが大声を出しながら駆け寄って来た。先頭の衛兵が紙きれを手に持ち、ジュスランに差し出す。


「これは……セリナの字?」

「恐らく……我々へのメッセージかと……」


 ジュスランが読み上げた。


『お兄様、もしこの手紙を読んでいるのなら無事にここまでたどり着けたのですね。時間がないので手短に書きます。私達は決心しました。ゴーイチとサリア姉さん、そしてシモーヌさんと一緒にあの邪竜ディンフォースを倒します。百年前の災禍を二度と繰り返すわけにはいきません。もし私が死んでも恨まないで、そしてゴーイチさんのことも。こんなわがままな妹で本当にごめんなさい。』


 読み上げてジュスランは黙り込んだ。周囲にいた部下の衛兵たちも同じく消沈した。


「……よくも……セリナとサリアを……」


 突如ジュスランが魔道船に乗り込もうとした。たまらずエンリケが追いかける。


「ジュスラン様、何をお考えで!?」

「決まってる!! あの邪竜を倒す、私自らの手で!!」

「お待ちください!!」


 魔道船に乗り込もうとしたジュスランの腕をエンリケが掴んだ。


「お一人だけ行かせるわけには……いきませんよ」

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