第65話 邪竜との激闘4 ~決着~
シモーヌが俺の方を見た。これから俺が何をするか予想ができたのか、瞬時に防御魔法を張ったようだ。
勘のいい女でよかった。瓦礫をシモーヌめがけて投じた。直後に邪竜も火炎球を放った。
「当たった!!」
「相変わらず無茶なことするわね」
これしか方法がないからな。火炎球は放たれたが、俺の投げた瓦礫の方が早くシモーヌにぶつかった。その衝撃でシモーヌも落下して、なんとか回避に成功した。
「シモーヌ、しっかりしろ!!」
「……うぅ……大丈夫……もっと優しく助けてよ」
「あの状況で無理言うな。それにしてもよくあの態勢で〈フレイムピラー〉を発動できるとは」
「だてに修行重ねてないのよ」
「でもその……尾剣はどこに……?」
「……ごめんなさい。もう魔力が……ないわ」
「……そうか」
これで最後の頼みの綱がなくなった。シモーヌは救出できたが、代わりに巨大な尾剣がなくなった。となれば、やはり撤退しかないのか。
「いえ、あれを見て!!」
「あれ? あぁ、まさか!?」
なんてことだ。サリアが見下ろしたその先に、きらきら光る丸い球体が落下していた。ちょうど邪竜の火炎球が落下したその軌道上にある。
不幸中の幸いだ。邪竜の火炎球の高火力で尾剣を極限まで溶かし、さらに上空の冷たい外気にさらされたことで冷却され、巨大な鉄球に変わったんだ。
「……はは、これは凄いな……」
「あの二世さんにはお礼を言わなくちゃね」
「全くだ。サリア……わかってるな?」
「もちろんよ。ゴーイチこそ、しくじらないでよ! 〈フルパワー〉!!」
サリアの魔力が最大限にまで上昇した。直後に急降下し、尾剣の位置と並んだ。
間近で見たらかなりのデカさだ。バスケットボールの倍くらいはあるな。でもこのサイズなら、いけるはず。
「……よっと、重いな……」
「ゴーイチ、早く撃たないと! ほら、また来た!!」
邪竜はやはり俺達を追って来た。サリアも魔力を最大限に高め加速したが、それに追いつくスピードとは。
でも体は嘘をついていない。さっき胴体に生じた穴の付近から血が噴き出しているが、そんなこと気にもしないのか。
いいさ。どんどん体力を消費してくれ、これからもっと恐ろしいショーをお見せするからな。
「サリア、念のため浮上してくれないか」
「浮上……そうね、その方がいいわ」
「ここからでも十分届くわ。何考えてるの?」
高度が大事なんだよ、高度が。今はとにかく邪竜を完全に見下ろす位置につくことが大事だ。
「来るわ!!」
邪竜が動きを止めて、口から火炎球を発射してきた。
サリアはうまい具合にかわしてくれた。邪竜が動きを止めてくれたこの一瞬の隙を逃しはしない。よし、完璧に見下ろす位置にまで浮上したぞ。
「ここならいいか……みんな、これが最後の勝負だ。力を貸してくれるか?」
シモーヌもセリナも黙ったまま頷いてくれた。シモーヌは力を使い果たしたように見えるが、それでも俺を信頼してくれるのかふらつきながらも立ち上がる。その努力、無駄にはしない。
「〈スーパーエンハンス〉!!」
二人のダブルエンハンスのパワーは強力だ。力がこれでもかとばかり漲ってくる。
邪竜は顔を見上げて俺達を捕捉した。また口を開けたな、さっきと同じ手か。
「グガラアアアアアア!!」
「さんざんてこずらせたが、もう終わりだ。二度目の異世界は……ゆっくりスローライフを満喫したいんでな。〈フルスイング〉!!」
巨大な鉄球は俺の棍棒に叩きつけられ、瞬く間に邪竜の顔に激突した。それから巨大な爆発が起き、あたり一面何も見えなくなった。
サリアと一緒に俺達三人は爆発の衝撃で、吹き飛ばされた。かすかに聞こえたのは、雷鳴のごとくとどろいた邪竜の断末魔の叫び声だった。
◇
「若様、一大事でございます!!」
エルフの町『ティアランピア』のハヴィエール公爵の邸宅の執務室のドアを、衛兵隊長があわただしくノックした。執務室内にいたジュスランは、たまらず開けて中に招き入れる。
「一体、何事だ? サリアとセリナが見つかったのか!?」
「いえ、そうではなく……北西の『トロンピア山』の山頂で上空を監視していた部隊からの報告なんですが……」
その報告内容を聞いたジュスランはしばらく絶句し固まった。そしてたまらず聞き返した。
「……間違いないのか、それは?」
「何度も見返したようですが……確かに北北西の遥か上空の彼方に、巨大な黒い竜の影が飛んでいたそうです」
「その方角は、巨大な雲の塊に覆われていたようですが……それでもその黒い竜の影だけは、はっきり見えたそうです」
「……北北西……といえば、まさかそこは……」
ジュスランが想像していた地名を衛兵隊長が先に答えた。
「『天空竜の跡地』が浮かんでいると言われています」
「数時間前に、ゴーイチとラズリーがその方角目掛けて高速で飛行していたのも、確かにその部隊は目撃しています……」
「……くそ! なんということだ!」
ジュスランはたまらず机を拳で叩いた。窓の外に目をやり、思わずため息をもらす。苛立ちを隠せないジュスランに、部下たちも何と言葉を返したらいいかわからない。
「若様、その……こんなことは申したくないのですが、その黒い竜の正体というのは……」
「言うな! それ以上は!」
ジュスランもその事実を知っていて、思わず制した。邪竜の名前と姿が、脳裏に浮かぶ。だが信じたくもない事実だ。
目を閉じてうつむき、しばらく考え込む。そして決心した。
「魔道船を起動させろ。今すぐに『天空竜の跡地』へ向かうぞ!」
「魔道船!? しかし……この前故障したばかりで……修理は終わっていますが、点検と最終調整がまだです」
「今は一刻を争う事態だ! そんな悠長なことしている場合か!! 起動させるんだ!!」
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