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史上最強のメジャーリーガーは引退後は二度目の異世界で自由なスローライフを送りたい  作者: 葵彗星


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第64話 邪竜との激闘3

 アツアツに熱せられた鉄球が一瞬で尾剣の付け根の部分に激突する。

 その直後、見事に尾剣がカーンという音とともに、付け根からもぎ取られ上空に舞い上がった。


「シモーヌ、〈フレイムピラー〉を! セリナも援護してくれ!」


 舞い上がった尾剣は二人が炎の柱で持ち上げている。これで落下することはない。


「浮上するわ。みんな、しっかりつかまって!」


 サリアが一気に高度を上げ始めた。すぐに雲の中にまで入り込み、邪竜の姿も見えなくなった。

 決して逃げているわけじゃない。これをするにはちゃんと理由がある。


「みんな、大丈夫!?」

「……うぅ……はっくしょん!! 寒い……どうなってるの!?」

「簡単に説明すると、空高くまで上がり続けたら、気温が下がるんだ」

「なにそれ……そんなこと初めて知ったわ」


 俺も大人になるまで知らなかった。ある日飛行機に乗っていたとき、キャビンアテンダントが「外はマイナス40度の極寒です」

とアナウンスで話していたことがある。

 どうしてそんなに寒くなるのか、理由はよくわからないが地球では高度が100メートル上がるごとに。気温が0.6度下がる法則があるのだ。飛行機は通常1万メートルで飛ぶから、だいたいマイナス40度以下になる。


 この法則はこの異世界でも通用するんじゃないか。俺の予想通りだった。この世界でも地球と同じように雨も降るし雪も降るからな。

 これで冷却の問題については解決できた。

〈測定〉のスキルで気温を計ったら、ちょうどマイナス30度くらいになっていた。まだこの温度じゃ不安だ。もっと浮上してもらわないと。


「ご、ゴーイチ……これ以上は……」

「姉さん、しっかり!!」


 セリナが〈ヒートバリア〉で防寒してくれたが、さすがの俺でも寒くなってきたが、あと1000メートルくらいは必要だ。サリア、頑張ってくれ。


 ふと下を見たら、完全に雲に覆われて島が見えなくなっていた。それどころか邪竜の姿も見えない。恐らく俺達の飛行速度についていけてないんだろう。もう少し見失ってくれよ。


「ゴーイチさん……このまま……一度撤退しませんか?」

「突然何を言い出すんだ? ここまで来て逃げるだなんて……」

「勘違いしないでください、一度出直すんです。『ティアランピア』に戻って、応援を呼ぶんです」

「名案だわ。しゃくにさわるけど、あいつは強すぎる……一世とは違う」


 サリアまで同じことを言い出した。それに乗じたのかシモーヌも頷いた。

 ここで逃げるのか。それは俺のプライドが許さない、しかし三人の疲労度を考えれば、ここは撤退が得策か。


「……わかった。サリアに任せよう。『ティアランピア』の方角は……」


 そう言いかけた途端、突然視界が暗くなった。

 一体何が起きた。まだ雲の中にいるが、確かに大きな黒い影が動いている。その正体はすぐにわかった。


「……ディンフォース!?」

「嘘でしょ、もうあんな高さまで!?」

「ニガサン……」


 なんてやつだ。すでに先回りして、俺達を見下ろす高度まで浮上していたのか。見誤った。


 ちょうどその時、雲を突破した。ディンフォースが太陽をすっぽり覆い隠して、俺達を見下ろす位置まで浮上していた。

 おまけに直後に口を大きく開いて、巨大な火炎球を生成し始めた。まだあんな魔力が残っているのか。


「サリア、避けろおおおおおお!!」


 叫んだ直後に火炎球が一直線に向かってきた。間一髪でサリアも浮上して回避に成功した。

 安堵した瞬間、急に体が浮いた。見下ろしたらサリアが俺の体から離れていた。


 一体何が起きた。サリアが明らかにダメージを受けている。何かが衝突したんだ。

 そうか。邪竜には長い尻尾がある。たとえ剣がなくなっても、体を吹き飛ばすくらいは簡単だ。サリアの回避する動きを読んで、そこめがけて尻尾を振り上げたのか。


「サリア、しっかりしろ!!」

「私は……大丈夫! それより二人は?」


 そうだ。シモーヌとセリナの二人はどこだ?


「私はここにいます! シモーヌさんはあそこ!!」


 セリナはちゃっかり俺の体にしがみついていた。でもシモーヌはどこにも見当たらない。


 セリナが俺の左上の方角辺りを指差し、その先にはシモーヌが浮かんでいるのが見えた。あんな高さまで吹き飛ばされたのか。

 シモーヌはまだ尾剣を〈フレイムピラー〉で溶かしていた。だけどまずいぞ。あそこにいたら、ディンフォースに狙い撃ちにされる。


「二人とも、しっかり!!」


 サリアが態勢を立て直し、俺とセリナを乗せた。でもシモーヌは離れている。なんとか引き付けられないか。


「まずい、邪竜の口が……」


 また再び火炎球を形成し始めた。しかも今度は俺達じゃなく、シモーヌに狙いを定めている。

 シモーヌは浮かんだままだ。避けられるわけがない。

 どうするべきか。方法は一つだ。


「このままじゃシモーヌさんが……」

「……危険だが……これしかない」

「ゴーイチさん、何を!?」

「瓦礫を拾っておいてよかった。シモーヌ!! ちょっと痛いが我慢しろおおお!!」

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