第62話 邪竜との激闘1
なんてことだ、間違いなく邪竜の声で俺の本名を言った。こいつは二世のはずなのに、俺のことを覚えてるのか。
「多分、先代の記憶を引き継いでるのよ。今のあなたの攻撃で、記憶がよみがえった」
「そうだったのか。よぉ、俺の事覚えてくれてありがとよ」
「なに呑気に挨拶してるのよ。冗談が通じる相手じゃないでしょ!」
「……先代ノ……恨ミ……ココデ……晴ラス……」
「恨みだと? 勝手に暴れまわって、地上を滅茶苦茶にしたのはどこのどいつだ!?」
「……人間……ミナ……滅ブベシ……」
「そっちがその気なら……もう容赦はしない!」
「ゴーイチ、やっちゃって!!」
俺は一度こいつに勝っている。同じことをもう一度やるだけだ、何も難しいことはない。
だけど、妙にしっくりこない。確かに俺の打球攻撃は効いているみたいだけど、ちょっと簡単に行き過ぎていないだろうか。
「……ファアアアアアア!!」
「うっ!! 翼で防御しやがった!!」
さすがにやられっぱなしというわけじゃないか。巨大な翼を胴体を隠して防御態勢に入った。
でも、そんなのは関係ないぜ。翼ごと、鉄球で貫いてやる。さっきよりも〈フルスイング〉のパワーを上げればいけるはず。
「弾かれた!?」
「あれは結界魔法よ。なんて巨大で凄まじい魔力なの」
こいつ、ただ翼で防御しただけじゃなくその上から結界魔法でさらに鉄壁な態勢に入るとは。ここまで強力な結界はそう簡単に張れない、さっきまでサリアの魔力を吸収していたからだろう。
「あの結界は強力すぎるわ。どうすれば?」
「決まってるさ、強引に突き破って見せる。シモーヌ、俺に強化魔法を……」
「待って。そんなゴリ押しな戦法で破れるほど、甘くはないわ。それより私に任せて!」
「サリア、まさか結界を破る方法でもあるのか?」
「結界なら、ラズリーと融合した今の状態なら簡単に突き破れるはず。見てて」
サリアは随分と強気なことを言う。でも隣のセリナは俺の顔を見た。「信じて」と目で訴えてる。
「よし……サリアに任せる」
「シモーヌ、念のため〈エンハンス〉を!」
シモーヌの強化魔法がかかると、サリアの体が光りだした。気のせいか、また体が一回り大きくなったように見える。
そして、サリアの体がゆっくりと上がっていった。どんどん高度を上げ、邪竜を完全に見下ろす位置についた。体をゆっくりと傾け、長く鋭い嘴を邪竜の体に向けた。
「サリア……まさか?」
「そのまさかよ! しっかりつかまってて!!」
次の瞬間、一気に加速して急降下し嘴が邪竜の結界に衝突した。
予想通りの攻撃方法だ。しかしこんなやり方で本当にいけるのか。
凄い勢いで火花が立っている。激しい魔力のぶつかり合いだ。相手はすでにサリアの魔力を吸収した邪竜だ、でもサリアは諦めていない。
「サリア様、諦めないで。〈エンハンス〉!」
「姉さん、負けないで。〈エンハンス〉!」
二人ともサリアに強化魔法を唱えて少し勢いが増してきた気がする。気のせいか邪竜が苦しんでいるようだ。もしかしていけるか。
「……コォオオオ!!」
「まずい! 離れろ!!」
邪竜が不気味な咆哮が聞こえた。直後に、頭部の角から赤い光の球体が飛び出しこっちに向かってきた。あれは魔法弾か、この態勢でも反撃ができるというのか。
「なんて奴だよ、また振り出しに戻ったか」
「でもいい感じだったわ。もう一度同じ個所で試せば」
「いや、また反撃されるぞ。それより俺にいい考えがある。ちょっと危険かもしれないが……」
思いついたアイデアを話した。即興で考えたせいか、シモーヌもセリナも呆気にとられた。
「……どうかな?」
「いけると思う。あなたを信じるわ!」
「本当か? よし……じゃあさっきと同じ感じで頼む。二人も援護をしてくれ!」
「わかったわ。〈マジックバリア〉!!」
シモーヌとセリナのW結界、これで角から飛び出してくる魔法弾は防げる。サリアがさっきよりも高い高度まで浮上した。
その間に俺も準備だ。この作戦は俺とサリアの息を合わせるのが重要、慎重に狙いを定めないと。
「いつでも行けるわ。ゴーイチ、打って!!」
「任せろ! うおおおおおおおおお!!」
サリアが一直線に邪竜の胴体に向け降下する。その軌道の延長線上に狙いを定め、俺は全力で鉄球を〈フルスイング〉した。
〈フルスイング〉で打った鉄球もやはり邪竜の結界に阻まれる。これは予想通り、だがまだ終わりじゃない。
「今度こそ!!」
間髪入れず急降下したサリアの嘴が、鉄球に激突する。次の瞬間、結界に大きなひび割れが生まれた。
「よし! いけえええ!!」
「グバオラアアアアアアアアア!!」
結界が激しい音とともに割れた。そのまま勢いを下げずに鉄球と同時に邪竜の胴体を貫いた。
俺の予想通りだ。激突してさらに勢いが増した鉄球はサリアの衝突によって相乗効果が生まれ、威力が倍増した。さすがの邪竜の結界も耐えられなかったな。
「……やった?」
「姉さん、大丈夫!?」
「えぇ、なんとか……本当に無茶なこと考えるわね」
「すまない。でも……サリアこそ、一発で決めるなんて、やるじゃないか」
「あなたの無茶ぶりには慣れてるから」
本当になんてすごい女だ。激突した衝撃でくちばしの先端がすっかり火傷しているが、まるで気にしていないな。
「……コオオオ……」
「今のは邪竜の声? まさか……」
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