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史上最強のメジャーリーガーは引退後は二度目の異世界で自由なスローライフを送りたい  作者: 葵彗星


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第58話 復活の阻止

 突然どこからか男の声が聞こえた。声の主が聞こえたほうに向かって進むと、そこにはボロボロに負傷した白いローブの魔道士が倒れていた。シモーヌが見た瞬間、あっと口を開けた。


「あなた、ボラリス!?」

「……やはりお前か。ゴーイチを手招いたのは……」

「なんで俺の名前を? いや、そんなことより……お前が邪竜教団の頭領だな」


 かすかに感じるが間違いなく強大な邪気を秘めている。恐らくサリアとの激闘でかなり消耗しているだろうが、それでも油断ならない奴には違いない。とにかく、今はサリアの救出が最優先だ。


「サリアに何をしたか知らないが、今すぐ解放してもらおうか」

「……じきに解放されるさ。心配するな……」

「なに? おいシモーヌ、こいつらの企みがわかるか?」

「……なんとなくだけど……でも……信じたくない……」


 シモーヌの表情からして、おそらく知っているな。


「……もう間もなく誕生するのだ。我々の……いや、この世界の……新しい神が……!」

「新しい神だと? 一体なんだって言うんだ……」

「姉さん!!」


 セリナが叫んだ。天井にぶら下がっていたサリアの様子がおかしい。さっきよりもかなり魔力が上がっているように感じる、まさか回復したのか。

 いや、違う。これはサリアの気じゃない。サリアのようでサリアじゃない、一体なんの気だ?


「これは……何が起きようとしてる?」

「あぁ、そんな。嘘でしょ……」

「……ふふ、もうすぐだ……」


 その時、地面が一瞬だけ大きく揺れた。そして天井一面に、黒い竜の影が見えた。

 不吉な予感がする。二度目の異世界で初めて全身が震えるほどの悪寒、まさかこの俺が恐怖を感じるとは。

 そうだ。これと同じ経験は二度目だ、一度目は二十年前。



 二十年前、それは冬の季節だった。北の国境付近の山中の村で、人々が謎の竜の怪物に襲われているという噂を聞きつけ俺は修行がてらその村に向かった。


 ある程度修行を重ねて実力を身に着けたと過信した俺は、その竜を退治してやろうと意気込んでいた。でも現実は違った。

 いざ対峙したそいつは、それまで遭遇した魔物とは比較にならないほど巨大だった。いや、体の大きさだけでなく、そのおぞましい程の邪悪で巨大な魔力に俺は圧倒された。


 俺は地球にいた頃に見たファンタジー映画やアニメで登場するドラゴンなんか可愛いものだった。本物の竜は別次元の怪物だった。いや、あとから知ったんだがどうやらその竜だけ特別視されていたんだ。その竜の名前、嫌でも忘れない。


「邪竜……ディンフォース……」

「そうだ! ディンフォース様は確かにほろんだが、その卵は生きていた。二代目がついに誕生するのだ! サリアの魔力を生贄にしてな!」

「そんな! 早く止めないと!」

「……ああああああ!!」

「サリア!?」


 サリアが悲痛な叫び声をあげた。苦しんでいる、いやあれは抵抗しているのか。気のせいか、さっきよりも魔力が落ちている。


「サリア様はまだ諦めてないわ。天井からぶら下がっている触手で魔力を吸収しているはず。アレさえなんとかすれば……」

「……無駄なことを。今更抵抗しても遅い」

「シモーヌ、そいつを黙らせろ」

「ゴーイチ……でも頼みの鉄球がないわ。どうするの?」

「あの……これを使ってください」

「セリナ? それは……剣か」

「護身用の短剣です。魔力も込められています」

「ありがとう。絶対に姉さんを助けてみせる!」


 セリナから渡された短剣は長さ五十センチほどの小ぶりの長さしかない。でもないよりかはマシだ。さすがに俺の棍棒では、あの触手は斬れない。


〈ハイジャンプ〉でサリアのいる高さまでは一瞬で行けた。だが天井からぶら下がっている触手に掴もうとしたその時。


「うっ!? くそ……足を!」


 別の触手がどこからか伸びてきて、俺の右足首に絡みついた。そしてまた別の触手がどこから伸びてきて、今度は左手首に絡みつく。何が何でも、邪魔はさせないつもりか。


「俺をなめるなあああ!!」


 足に絡みついた触手は鍛え上げた脚力で強引に引きちぎった。すかさず短剣で左手首に絡んだ触手も斬り落とし、右手でサリアに絡みついている触手を掴んだ。

 これで落ちることはない。まずは一本だけでも斬り落とす。だけどナイフを突き刺そうとしたが、なぜか刃が入らない。


 よく見たら、この触手だけ異様に太くて固い。いや一本だけじゃなく、サリアに絡みついている触手はどれもこれも同じ太さだ。

 本命の触手だけ簡単に斬り落とせなくしているのか。いやらしいことをしやがる。


 サリアの顔が目に入った。苦悶の表情を浮かべたままだが、おそらく必死に抵抗しているんだ。

 時間がない、しかしこのままじゃ触手は斬れない。なにかいい案はないか。


「〈フレイムピラー〉!」

「シモーヌか? いつの間に!?」

「ゴーイチ、さっきの壁と同じ原理よ!」

「……そうか。ありがとう!!」


いつもご覧いただき誠にありがとうございます!毎日ご覧になっている読者様には心から感謝いたします。


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