表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
史上最強のメジャーリーガーは引退後は二度目の異世界で自由なスローライフを送りたい  作者: 葵彗星


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

56/66

第56話 動く壁の向こうへ

 いきなりどこからか矢が飛んできて、咄嗟に小石で弾き飛ばした。こんな場所で呑気に会話できないな。


「ごめんなさい、油断してたわ」

「だが……逃げられたか」


 走り去る足音が聞こえた。いや、待てよ。逃げた奴を追えばいいんじゃないか。


「待って! それこそ敵の罠よ。全く見当違いの場所に誘導される」

「そうとも限らないだろ。それに仮に見当違いでも、逃げたやつを捕まえて尋問すればいい」

「だから邪竜教団の魔道士達を甘く見ちゃダメ! 奴らにどんな尋問や拷問をしても無駄よ」

「……わかった。それより気を緩めるな、さっきみたいにどこから矢が飛んでくるか……」


 その時、俺の選球眼がわずかな変化をとらえた。


「どうしたの、急に黙って?」

「……動いてる」

「え? 何が……何が動いてるの!?」

「壁だよ。お前の後ろの壁……」

「か、壁……!?」


 シモーヌの後ろの壁に近づき、そっと手を当てた。今度は地面に目を向ける。

 やっぱりだ、間違いない。


「ほんの僅かだが……微妙にずれてる。見ろ」

「本当だ……よく気づいたわね」

「選球眼鍛えてたからな。どんなわずかな変化でも逃しはしない」

「せ、選球眼?」

「あぁ、まぁその……いつか詳しく話すよ」


 ここで野球の講義はやめておこう。それよりも、この壁の向こう側に間違いなくサリアはいる。さっき魔道士が遠くから矢を放った理由もう頷ける、俺達はもうすぐそこまで来ていたんだ。


「壁が動いてるのはわかったけど、この向こう側にどうやって行けば?」

「……下がってろ」

「ま、まさか……?」


 そのまさかだ。シモーヌも感づいて、後退してくれた。


「〈フルスイング〉!」


 シモーヌからもらった鉄球で壁ごと粉砕、とはならなかった。衝撃と爆発音は凄まじいが、壁は亀裂が大きく入っただけで崩れていない。気のせいか、壁にぶつかったというよりもさらに別の感触があった。


「ちっ……もう少しパワーを上げて……」

「待って! よく見たら結界が張ってあるわ!」

「なに? ということは……あいつらがこの向こう側にいるのは、ほぼ間違いない!」

「でも魔法の結界よ。物理的に破壊なんて無茶がある。それよりここは私の出番よ」

「お前に結界が破壊できるのか?」

「任せて! 〈ディ・バリア〉なら使えるわ」


 〈ディ・バリア〉は確か結界を破壊するための魔法だったな。シモーヌもそれが使えたとは驚きだ。となれば、ここは任せるか。


「……おい、もしかして……?」

「ダメみたい。私の魔力じゃとても……」


 なんてこった。一応〈ディ・バリア〉を発動したみたいだが、結界はビクともしていないようだ。かなり高レベルな魔法結界だな。


「あぁ、ここまで来て……一体どうすれば?」


 頭を抱えたくなるのは俺も同じだ。だけど、俺はふとある案を思いついた。これがいい案かどうかわからないが、それでも単純に力推しするよりはいいかも。


「……壁がなくなれば、結界もなくなるよな?」

「えぇ、そうだけど……そもそも壁を破壊することができないでしょ」

「いや……できるかも……」

「できる? どうやって……さっき試したけど力推しで破壊なんてできると思って?」

「いや、力だけじゃない。熱の力も借りるんだ」

「ね、熱……?」

「シモーヌ、お前の力も必要だ。俺の鉄球と重ね合わせれば、多分いけるはず……」


 俺が考えた案を言ったが、シモーヌは半信半疑の顔だ。


「……どうかな?」

「信じられない。でも……あなたのその話が本当なら……」

「まぁ、ものは試しだ。シモーヌ、いつでもいいぞ」


 俺は鉄球を構えた。シモーヌも杖を構える、なんだかんだで頼りになる魔道士だな。


「じゃあ……行くぞ!」

「〈フレイムピラー〉!」


 鉄球を天井まで投げ上げ、シモーヌの杖の噴出した火柱で鉄球を下から熱し続ける。火柱の勢いで鉄球は落下せずに静止して、徐々に高温に熱せられた。


 見る見るうちに鉄球は赤くなってきた。もうこのくらいでいいだろう。


「……うぅ……もう限界! ゴーイチ!」

「ありがとう、シモーヌ! どりゃあああ!!」


 今度こそうまくいくはず。超高温に熱せられた鉄球をフルスイングして壁に直撃させた。でも再び結界に阻まれる。


「やっぱり……ダメ?」

「いや、よく見ろ!」

「え……壁が……溶けだした?」


 思った通り、見る見るうちに壁がドロドロに溶けていく。さっきとの違いは鉄球が超高温に熱せられただけなんだけど、そのおかげで鉄球には莫大な熱エネルギーが込められている。

 それに加えて、俺がフルスイングで鉄球を壁に直撃させれば、さらにそのエネルギーは倍増する。エネルギーとして解釈するなら、この時鉄球は俺のフルスイングで時速1000km以上のスピードで壁に直撃している。


 運動エネルギーは物体の速度の二乗に比例して増える。そしてその速度の物体が壁に直撃すると、その衝突の際に壁に運動エネルギーが熱エネルギーとして転換され伝わるんだ。

 時速1000km以上の物体が壁に直撃した際の熱エネルギーは計り知れない。俺はシーズンオフで物理学を勉強してそのことを知った。試しに氷でできたボールを〈剛速球〉スキルで勢いよく壁に衝突させたら、バラバラに砕けた後にあまりの高温で溶けだしたんだ。


 この神殿内部は壁も床も大理石に近い成分でできている。大理石はだいたい1000度の温度で溶けると言われている。1000度の温度まで上げるには、ただ炎であぶるだけでは駄目だ。もっと高温に熱した莫大なエネルギーの球体を超高速でぶつける必要があるから、鉄球はもってこいだ。もっともその鉄球も溶けてしまうかもしれないが、仕方ない。


 数分も経たないうちに壁にすっかり巨大な穴が開いた。肝心の結界も壁に穴が空いてしまえば意味がない。このまま通り抜けられるぞ。


「凄い……でも、鉄球も溶けちゃったみたいね」

「いいさ。それよりシモーヌ、お前は急いでここから離れた方がいい」

「え? 急になに言い出すのよ?」

「お前も気づいているだろう。この先は……かなりヤバいぞ」

いつもご覧いただき誠にありがとうございます!毎日ご覧になっている読者様には心から感謝いたします。


この作品が気に入ってくださった方は高評価、ブックマークお願いします。コメントや感想もお待ちしております。またツイッターも開設しています。


https://twitter.com/rodosflyman

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ