第53話 ケンティマヌスの弱点
シモーヌが取り出したもの、それは紛れもなく鉄球だ。
なんて立派な鉄球だ。そしてなんて気が利くやつだ、パーティーに入れて正解だった。
「ありがとう、それがあれば百人力だ。さっそくこっちへ」
「きゃあ!!」
「シモーヌ!?」
鉄球は降って来たが、シモーヌがどこかへ消えた。その瞬間、洞窟内が大きく揺れた。何が起きたんだ。
「……がぁあああ!!」
遠くから微かに聞こえてきたのは、ゴーレムのおたけびだ。ついにここが見つかったか。
よく見たら、巨大な腕の影が動いている。振り下ろした衝撃で、シモーヌが吹き飛ばされたみたいだ。
かろうじて鉄球は入手できた。シモーヌの努力は無駄にしないぞ。
天井の穴から外に出たいが、ゴーレムにどうぞ見つけてくださいと言っているようなものだ。罠というのはそういうことか。だとしたら、入り口から出るしかない。
下を見下ろしたが、やっぱり地面がない。踏み外したら一貫の終わりだ。でもやるしかない。
「ぴきぃ!!」
「ラズリー!?」
そうか。お前がいたのを忘れてたぜ。まるで俺の心の声を聞いていたかのように飛んできやがって、さすがサリアの心の友だな。
ラズリーに乗って反撃開始だ。ゴーレムから離れると、さっきみたいに熱光線で攻撃されるから、ある程度は距離を詰めないといけない。
だけどさっきとは違って、俺には鉄球がある。さいわい硬さと大きさは良好だ、空気弾とは段違いの威力になるはず。
「じゃあな、でかぶつ!」
鉄球を奴の顔に狙いを定め、〈フルスイング〉した。直撃した瞬間、すさまじい衝撃音と爆発が生じた。
やっぱり想像以上の威力だ。爆発の威力でゴーレムの顔は粉々に粉砕された。これで決着か。
「よし、これで中に……」
「ぴきぃ!?」
「うおっ! これは……腕か!?」
突然ラズリーが距離を取った。よく見たら、ゴーレムの巨大な腕がまだ動いていた。
いや、ただ動いているだけじゃなく、正確に俺達に狙いを定めてパンチしてきたんだ。顔は粉砕されたはずなのに、まだ生きてるのか。
「なんだあれは!? 再生してるじゃないか」
さっき粉砕したはずの顔にバラバラになった破片が集まりだしている。鍾乳洞で戦った鎧の魔物と違って、こいつには再生能力があるのか。
予想外だな。しかも再生速度も尋常じゃない、もう元に戻りやがった。また一からやり直しかよ。
幸い鉄球は俺の元に戻って来たが、次の打球でも倒せるか不安だ。仕方ない、アレを使うか。
「スキル〈ブーメラン打法〉!」
このスキルなら、打った鉄球も曲線を描いて俺の手元に戻ってこれる。あとは奴の体が再生する前に、ひたすら打ち続ければ。
でもこの〈ブーメラン打法〉には一つだけ欠点がある。
何度も鉄球を撃ち続けたが、そのたびに奴の体が凄まじい速度で再生しやがる。鉄球が俺の元に戻ってくるまでに時間がかかるが、その間に戻るからきりがない。
これが〈ブーメラン打法〉の欠点だ。曲線を描くから、一直線に放たれるライナー打球と違って、速度が落ちてその分威力が下がる。
鉄球がもう一つあれば、この問題は解決したが。奴の再生が終わる前になんとか仕留められないか。
「ゴーイチ、聞こえる!?」
「シモーヌ? 生きていたか?」
外壁の上部にシモーヌが立って俺に呼びかけている。魔道士だけが使える〈リモートボイス〉か。
「当り前じゃない、あの程度でやられると思って?」
「そうは思っていなかったさ。それより、お前はそこから島の中へ入れるのか?」
「入れるけど、あなたを置いて行けるわけないじゃない!」
「気持ちは嬉しいが、ここは俺に任せろ。セリナもサリアも神殿の中にいるはずだ。早く二人を助けるんだ」
「ぐがあああ!!」
いかん。会話していたら、あっというまに再生が終わった。
「ゴーレムの弱点なら知ってるわ。そいつは雷に弱いの」
雷が弱点だと。それは信じがたい、ここは空の上だ。いつ何時、雷が落ちてきてもおかしくない場所にいる奴が雷に弱いだなんて。
「いいから、私の言う通りに動いて。そうすれば……いけるはず」
「……わかった。お前を信じよう」
ここはシモーヌに賭けてみるか。言う通りに鉄球を奴のどてっ腹めがけて〈フルスイング〉で直撃させた。
鉄球は戻ってきはきたが、相変わらず効いてないな。腹部の部分に思い切り穴が空いて、さっき光線を発射させた部分が丸見えになってる。
待てよ。さっきのシモーヌの話が本当なら、あの部分はゴーレムのコアなのか。そういうことか。
「〈サンダーボルト〉!」
シモーヌが魔法を唱えた。強烈な雷が空から奴のコアめがけて降り注ぐ。
「ぐぎゃあらぁあああ!!」
効いてるぞ。しかも再生も止まったようだ。今なら攻撃し放題。
「……いや……そうだ! シモーヌ、鉄球に〈サンダーボルト〉を!」
いいことを思いついた。弱点が雷なら、俺の鉄球を帯電させればいい。シモーヌは俺の意図をくみ取って、即座に動いてくれた。さすが優秀だ、助かる。
戻って来た鉄球はバチバチに感電してた。これを奴のコアに直撃させれば、壊滅的なダメージになるはず。
「うおおおおおお!!」
バアアアアアアアアアン!!
「……ごぉ……おおお」
手ごたえは十分、これまで以上に効いたようだな。直撃したコアは破壊され、奴の体はもろくも崩れ去った。
「……凄いわ。本当に倒したの、あのケンティマヌスを!」
「ケンティマヌス? そんな名前だったのか。まぁ、それよりシモーヌよ。ありがとう、お前の協力のおかげだ」
人差し指と中指を立ててピースサインを見せた。だけどシモーヌは腑に落ちない顔をしている。
「……どういうこと、それ?」
「いや……これは“勝利”を祝う時の仕草だよ。ピースサインといって……」
「ごめんなさい。私、今そんな気分じゃないの。でも、あなたがよければ帰ってでも……」
「え? 何言って……あ……」
またやらかしたな。今俺が見せたピースサインは、元々は英語の「ヴィクトリー(Victory)」の頭文字から来てるんだ。この世界で通じるわけがない。
でも、今のシモーヌの反応からしてピースサインは、この世界では別の意味で解釈されているのか。どんな意味だ。
いや、そんな疑問にふけっている場合じゃないな。やっとゴーレムは倒したんだ。とにかく急いで中に入って、あの二人を救出するぞ。
いつもご覧いただき誠にありがとうございます!毎日ご覧になっている読者様には心から感謝いたします。
この作品が気に入ってくださった方は高評価、ブックマークお願いします。コメントや感想もお待ちしております。またツイッターも開設しています。
https://twitter.com/rodosflyman




