終理目:崩れるモノ
「どうしてそんな平然としていられるの?」
私は隣に座っている彼にそう聞いてみた。
今いる場所は暗く彼の顔はうっすらとしか見えないが、それでも彼であることは認識できる。
「僕だって正直怖い…でも、この年で村を出ても生き残れる保証がないから」
「それでも私は…」
私はその言葉に続く言葉を出すか少し迷ってしまったが、結局零れ落ちるように言ってしまった。
「この村を出たい」
「…しょうがないなぁ、それじゃあ僕もついて行くよ」
「本当に!?」
「しっ。声が大きい。ここから見えなくても、まだ村の住民が僕たちのことを探してるかもしれないから」
「あっ、うん」
本当は村の真相を見て見ぬふりをして、人の肉を食べる方が良かったのかもしれない。
私の前からいなくなる前にお母さんが言ってくれた言葉『大勢は少数の為に。少数は一人の為に』というのは私が生き残る最善の手かもしれない。
それでも…
『大切な人を失いたくない』
* * *
「…て、起きて」
「うー…なにー?」
「もうそろそろ辺りが暗くなってくる。村の人に見つかり辛いだろうから今のうちに行動しよう」
彼が入念に周りを確認し、村の人がいないことを私に知らせると『ついてきて』とでもいうように私を一瞥した後に歩き出した。
「足元くらいから気を付けて」
数メートル先しか見えない程暗くなった獣道を、カサコソと音をたてながら進んでいく。
「うわぁ!」
先導をしていた彼が大声と共に急に見えなくなった。
「どうしたの!?」
少し進んで彼が消えた辺りを見渡すと、草むらの先が綺麗に崖になっていて、今にも落ちそうな体を片手で支えていた。
「待ってて!今助けるから!」
「ごめん…」
「謝らないで!すぐに助けるから!」
私は考える間もなく彼の手を取ると、引っ張り上げるように力を入れる。
目を閉じている彼は静かにこう呟いた。
「もう…いいよ」
「諦めないから!私、もう大切な人を失いたくない!」
一緒に遊んでたあの子も、隣の家のあの子も、優しくしてくれたあの人も。
みんなみんないなくなってしまった。
「『大勢は少数の為に。少数は一人の為に。』」
「嫌だ!」
「僕の手を掴んでいたら君は僕と一緒に落ちてしまう。僕の手を離せば君だけは助かる」
「嫌だって言ってるでしょ!」
「我儘で強情で…それでいてとても強いな」
「私は強くなんかない!身近に要る大切な人を何人も失ってきた!だから、だから…」
私は力を抜いた。
手にはたくさんの力を込めたまま、引っ張る力を抜いた。
* * *
「ねぇ、これから用事があるから一緒に来てくれない?」
「うわぁ!」
私の隣に少年が急に現れ、目の前にいる子供にそう言った。
「う…うん……」
困惑したといった様子だったが、子供は少年にそう返した。
「それじゃあ行こっか」
私は彼が差し出した手を握ると、突如空洞の中へと飛ばされた。
「…ねぇ?」
「ん?どうしたんだい?」
「私に隠していること…あるよね?」
「やっぱり、君は言わないと納得してくれないか…」
彼は私の返答を待つことなく言葉を続ける。
「あの村は君が元いた村だよ」
「なんで隠してたの…?」
「隠してた方が良いと思ったからさ、記憶も戻さないで新しい生活を送った方が良い」
「そんなのって…」
私は走り出した。
ここがどこなのかも分からないが、本能の赴くままに走った。
そのまま……目の前から地面が消えた。
「あっ…」
「危ない!」
その瞬間、天に向かって伸ばした手が誰かに握られた。
「あれ…」
私はこの光景を知っていた。
いや、知っているの方が正しいかもしれない。
積み木が落ちた時の様に頭痛に襲われ、私は昔のことを思い出した。
彼を助けられないと思った私は、彼と一緒にこの崖から転げ落ちた。
うん。なにもかも覚えている。
どうもLrmyです。
正直、裏設定に基づいて話していることが多々あるので、説明を兼ねて次話を投稿するかもしれません。
それでは、また次回にお会いしましょう!ではでは~




