47話 絶望と希望
「またこうして戦うことが出来るとは……運命というのは面白いな」
「貴様が辿る運命は、あと少しで余が終わらせる」
グラティオラスは稲妻を作り出し、グラデラに向けて打ち放つ。
だがそれを避けようともせず、体全体で受け止めた。
それでも尚、グラデラは平然としている。
前よりも強くなっている気がする……。
フネアスの闇の力を復活に使いだけでなく、さらに力を強めるために吸収したのか?
こうなってしまっては面倒だな。
もし本当に、昔よりも力が増しているのだとすれば、余は勝つことができない。
「どうした、グラティオラスよ。お前の力はこんなものか!」
吸収した稲妻を手の平の中で凝縮すると、同じようにグラに向かって打ち放った。
だがグラティオラスが放った稲妻に対して、威力が数倍にも膨れ上がっている。
グラティオラスは稲妻を掴むようにして、破壊の力を使い消滅させた。
グラデラに破壊の力を使用できればいいのだが、果たして使ったところで効果はあるのだろうか。
もしあるのだとすれば、少しでも触れてしまえばグラデラを殺すことができる。
まずは試してみるか。
近距離戦に変更し、両手に剣を構える。
「次は剣で戦うか? いいだろう。お前の内臓を地面に撒いてやるぞ」
グラデラもそれに合わせて、右手に剣を出現させて両手で構える。
だがその構える姿に、グラデラの方が余裕を感じさせる。
両者同時に前進をして、一瞬にして距離を詰める。
後はここから、人間では到底脳内で理解できない程の戦いが繰り広げられる。
剣の動きだけが追えないのではない。
両者の体さえ、目視することは出来ないのだ。
ただ見えるのは、いや、聞こえるのは、剣と剣がぶつかり合う音だけ。
首を狙った剣を頭を下げて躱すと、グラティオラスは体を翻して下から腹を切り裂くようにして、剣を振り上げた。
しかし、それを読んでいたのか、剣で軽く受け流しグラの右腕を斬り落とした。
「ぐっ……」
一旦後ろに下がり右腕を再生する。
もし創造の力がなければ、永久に腕を失っていたところだった。
決して右腕を囮にした攻撃だった訳ではない。
それなのにも関わらず、右腕を斬り落とされたのだ。
再生出来るとはいえ、痛みは本物。
今の一瞬の出来事のせいで、グラティオラスの集中力は散開していった。
「遅い、遅いぞ。昔のお前はもっと速かったぞ」
お前が強くなったんだ、と言おうとしたが、ギリギリのところで口を開くのを止めた。
まるで、誉めているような感じになってしまうと思ったのだ。
だから別の言葉を口にする。
「まだ本気を出していないだけだ」
「そう言う奴は大抵本気を出している。違うか?」
違わない。
何も違わない。
実際私は本気を出している。
それなのに、あいつは余裕そうにしている。
だからもう少しだけ力を使う。
両手を広げると、グラティオラスの体が光り始めて、三十体以上の分身が出現した。
「なんだ? 幻影か?」
分身したグラティオラス達は、グラデラを囲うようにして円を作り槍を放つ。
「数が増えれど所詮は幻影。本物だけ避ければ問題はない」
四方八方から向かってくる槍を避けようとせず、ただ目の前にいるグラティオラスだけを見つけた。
そのグラティオラスは、まだ槍を投げていない。
その槍さえ避ければ何の問題も――。
「がぁっ……なぜ……」
だがその考えが、とても愚かだったとすぐに思い知った。
背中には槍が突き刺さり、腹を突き破り貫通した。
その間にも、次々と槍は刺さり続けていく。
腕、肩、足、首……。
ありとあらゆるところに、それは突き立てられていく。
クソ……!
これ以上刺されてたまるか……!
グラデラはすぐさま周りに結界を張り、自分の身を守った。
結界にぶつかった槍は、光の粒になり散開していく。
「残念だったな。ただの幻影ではなくて」
「どうやったのだ」
「どうやるも何も、余は創造と破壊の神だ。創造の力で、余自身を作り出すなど出来て当然だ」
と、言っても本当に余自身かと言われれば、半分正解で半分不正解だ。
今作った分身達は、余の外見そっくりだが中が違う。
恐らく余の力の半分以下のはずだ。
しかし、それでも居ないよりはマシだ。
分身達が相手にして間に、余は回復を――。
そう考えた直後、肩を触れられた感覚が走り後ろを振り返った。
「どうして……」
「お前の方こそ、残念だったな。あれはもう、私ではない」
いるはずのない者がそこに居たのだ。
今目の前で槍で突き刺され、瀕死の状態のなっていた、そいつが、グラデラが、無傷で笑っているのだ。
突然の出来事に理解することが出来ず、そしてグラティオラスは背後から剣を突き刺された。
「うっ……ぁ……」
口から血が溢れ出し、力が抜けた体は言うことを聞かず、地面に向かって一直線に落下して行った。
地面に激しくぶつかり、体全体に痛みが走る。
痛みが体中を走る中、創造の力を使って傷口を塞ごうとするが、全く塞がっていく様子がない。
それどころか、血が流れる量が増えていっている。
あの剣に何か仕組まれていたのか……。
神である余は……悪魔の手によって死ぬのか……。
空中に浮かぶグラデラは、まだ笑みを浮かべ続けていた。
◇◆◇
ここはどこだ……?
暗すぎて何も見えない。
もしかして俺は……死んだのか?
何も出来なかったまま?
嘘だろ?
結局俺は役立たずのままだ……。
昔も今も、これからも。
でも死んだから、これからなんてないか。
「いいや、まだ君は死んでないよ」
誰の声だ?
気になり周りを見渡して見るが、誰かがいる様子はない。
「フフ、今行くよ」
そう声が聞こえた直後、俺の胸が白く光り初めて、砂のような物が目の前で舞い始めた。
それはゆっくりと集まっていくと、人間の形になっていき、色や髪も生えいく。
そして、銀の髪を生やす一人の少年へと姿を変えた。
「やっと会えたね。まあ、会えるわけもなかったけど」
「えっと……誰……?」
「ふふふ、そんな反応になって当然だよね。だって僕は、君なんだから」
簡単なようでとても難しい話だ。
なぜこの少年は、そんな意味不明なことを急に言い出し、そして微笑んでいるのか。
「まだ分からないかな? 僕はね、反射の神シーミナだよ」




