46話 神達の戦い
クソッ!
なんなんだよこいつらは!
戦いの最中で言い合いをしてるくせに、コンビネーションが良すぎるだろ……!
「リックさぁ、もうちょっと早く殴ってよ!」
「うるせぇな! サファリが遅いんだろ!」
そんな言い合いをしつつも、お互いが邪魔をしている訳でもなく、どちらかと言えばジューザラスを苦しめていた。
片方の拳を避ければ避けた先に拳が飛んでくる。
さっきからこの繰り返しだ。
時々反撃はするものの、片方を相手にしている間に回復されてしまう。
これは2人同時に殺すしかねぇな……。
だが一体どうすりゃいい。
こんなに俊敏な相手を同時に殺すなんて、俺でも流石にやったことがねぇ。
「だからさ! 邪魔なんだって!」
「知らねぇよそんな事! だったらお前が引っ込んで――」
「さっきからてめぇらはゴタゴタうるせぇなぁ!」
ジューザラスは一瞬の隙をついてサファリの首を掴むと、地面に向けて思い切り投げつけた。
勢いを殺す事が出来ず、そのまま地面に叩きつけられる。
そのチャンスを見逃さず、大量の炎の槍を作り出すとサファリに向けて一斉に放った。
「そうはさせねぇよ!」
だが槍は一本も地面に突き刺さらず、リックの攻撃によって消滅した。
僅かなチャンスを掴んでも、ずっとこれの繰り返しだなおい。
マジでキリがねぇぜ。
このまま戦いが続けば、俺が先に体力を切らすのは目に見えている。
その前に殺せれば問題はねぇが、無理だろうな。
一対一だったら余裕で勝てるのによ……くそ!
「感謝しろよ」
「誰が感謝するか! 何もされなくても避けれたし!」
俊敏に動くコイツらを、一緒に捕まえることは無理だろうな……。
待てよ、無理じゃねぇかもしれねぇ。
だがこの方法だと最悪……。
ああ!
そんな事考えてんじゃねぇぞ!
今はコイツらを殺すことだけを考えろ!
リックとサファリは一旦下がって隣同士並び、闇に染まる2本の剣を作り出した。
「おいおい。まさかそんな剣で俺を殺す気か? ガキのおもちゃかよ」
「舐めるなよ神が。お前の方が傷を負っているくせに調子に乗るなよ」
「調子に乗るなぁ? 誰がてめえら相手に調子に乗るかよ。こんな雑魚に調子に乗ってたら恥ずかしいぜ!」
「ふざけたこと言ってんじゃねぇ!」
2人は同じタイミングで駆け出すと、剣を前に突き出した。
剣先は真っ直ぐジューザラスに向かっていき、それを躱した――りすることはなかった。
「ぐっ……!」
ジューザラスの腹には2本の剣が刺さり、血を周りに撒き散らかした。
その光景を見てリック達は勝利を確信した。
「やっぱり調子に乗ってたんだな! これでお前は死ぬ!」
「馬鹿か……」
「は?」
「死ぬのは……お前らだ……」
殺意の篭った目でリック達を睨みつけると、2人の首を掴んだ。
突然の出来事に対応することができず、そのまま地面に押し倒された。
そして空中に巨大な火球を出現させると、3人目掛けて落下を始める。
「まさか私達と一緒に自滅する気!? でも残念だったね! こんな腕切り落とせば逃れ――」
「俺は……死ぬ気はねぇよ……」
その絞り出すような声と同時に、リックとサファリの心臓を地面から炎の剣が貫いた。
「あがぁ……!」
心臓を潰されれば、悪魔でさえ生きることは出来ない。
まだ僅かながら体がピクピク動くものの、もうすでに息はしていない。
「はっ……雑魚が……。なんて……言えねぇな……」
腹から流れる血を押さえつけながら、ジューザラスは静かに呟いた。
◇◆◇
激しい戦いの中、誰も目で追えぬ速さで剣を交える者達がいた。
「水の神ヘルラレン。お前では私には勝てん」
「そんなの知らないね。それに、誰も最初から負けるつもりで戦ってないから!」
鋭い水の刃を悪魔は2本の剣で受け止めると、横にいた冒険者に向かって流す。
その刃を冒険者は避けることが出来ずに、体が真っ二つに切断された。
「なんてことを……!」
「馬鹿だな。あれはお前の刃だ。だから殺したのは私ではなく、お前だ」
「くっ!」
いつの間にか目の前に現れた剣を、間一髪のところで躱す。
この悪魔……動き方が尋常じゃない。
速すぎて避けるのが精一杯になっちゃう。
もっと早く倒せるかと思ってたけど、流石に上級悪魔だとそうはいかないね……。
何かあった時の為に力を温存させて置きたかったけど、仕方ないよね。
もうちょっと本気でやらないと押されたままだろうし。
「ちょっと離れててもらえるかな」
ヘルラレンは剣を避けながら腕を掴むと、後方に投げ飛ばした。
悪魔は空中で一回転しながら体勢を整え直し、崩れることなく着地した。
だがヘルラレンにとって、たったそれだけの時間が稼げればよかった。
ヘルラレンの瞳は青く光り、髪の色も青へと変化した。
力が全身を駆け巡っていく。
これが本来の水の神ヘルラレンの姿だ。
「何をした」
「特に何もしてないよ。まあとにかく、殺ろうか」
神と悪魔は同時に踏み込み、剣を交えた。
だが、状況がさっきとは違うのが明らかだ。
ヘルラレンが優勢になっているのだ。
狂気な2本の剣を、ヘルラレンは笑顔を絶やさず対応していく。
滅茶苦茶遅いなー。
やっぱりこれ使っちゃうとつまらないな。
余裕で勝てちゃうから。
片方の剣を弾き飛ばし、それによって出来た一瞬の隙を見逃さず、ヘルラレンは剣を振り下ろす。
刃は真っ直ぐ落ちていき、そして腕を斬り落ちした。
「がぁ……!」
悪魔は顔を顰めながらも、一度下がり距離を取ると弾き飛ばされた剣を拾った。
「ふざけやがって……! 私もこれから本気を――」
「出す? 遅いなぁ」
悪魔の首に剣が突き立てられる。
「本気を出すのはタイミングが重要なんだよ」
剣が引き抜かれるのと同時に、大量の血を噴き出しながら地面に倒れ込んだ。
「ま、どうせ本気を出しても、私には勝てないけどね」
「なら私はどうだ」
突如背後から声が聞こえ、振り向こうとする前に頭部に衝撃が走った。
ヘルラレンは何をされたのか全く理解が出来ず、騎士達に向かって突っ込んでいった。
巻き添いを食らった騎士達は陣形が崩れてしまい、悪魔達にさらに攻め込まれていく。
「いっ……たー……。誰かな……?」
ヘルラレンの瞼が開く。
そして驚き、喜び、絶望した。
「やあ……。フネアス……」
「私はフネアスなど知らない」
周りに球が浮かび上がり、フネアスは表情を崩さぬままヘルラレンに向かって全てを放った。




