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転職したら異世界だった……実体験から始まる異世界生活  作者: はるやまモブ男


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6/12

本当に怖いのは冒険者がりの冒険者

A級冒険者。


それは、農民にとって一つの目標であり、名誉ある称号……のはずだった。


しかし、このダンジョンでは違う。


給料はちょっとしか増えない。

責任は山ほど増える。

そして、知らなくていいことまで知ることになる。


今回は、モブ男がA級冒険者に昇格したお話。


ただし、昇格の理由は、本人が思っていたものとは少し違っていたようで……?


それでは、第6話をどうぞ!

俺が入社したとき、A級冒険者――このダンジョンでいうサブリーダーへと昇級したアネサンがいた。

ところが、異食婆事件の数日後から、アネサンが来なくなった。

異世界に来たばかりの俺には、何が起きているのか分からなかった。

そして、誰も教えてくれなかった。

「……どうしたんだろう?」

そんなことを思いながら、俺はいつも通りクエストをこなしていた。

それから数日後。

異世界に来てから、3週間ほど経ったある日。

ヤクザから、ギルドへの緊急招集がかかった。

「なんだろう?」

俺はギルド本部へ向かった。

すると、開口一番。

「来週から、おまえA級に昇格な」

「………………え?」

俺は固まった。

「A級?」

いやいやいや。

俺、まだ新人冒険者なんですけど?

このギルドでは、いきなりA級。

しかも、A級になったところで給料が増えるのは、たった5000円程度。

そのくせ、責任は馬鹿みたいに増える。

「いや、無理無理無理……」

心の中ではそう叫んでいた。

しかし、ヤクザの威圧感から逃げることもできず――

「……わかりました」

俺はA級昇格を引き受けてしまった。

これが、間違いの始まりだった。

……まあ、その話は今度にしよう。

翌日。

元A級冒険者のアネサンが、久しぶりにダンジョンへやってきた。

どうやら、俺と一緒にクエストをしていた能面と話をするためらしい。

二人は外へ出て、話を始めた。

俺はその様子を見ながら、

「あー……俺、一人でクエストするのか……」

と、ため息をついた。

妖怪の状態チェック。

体温。

血中濃度。

血圧。

その他諸々。

「……一人できつくね?」

そんなことを考えながら、俺は一人でクエストを続けていった。

そして、もう一つ。

「能面さんとアネサン、仲いいんだな」

そんなことも思っていた。

アネサンが心を病んで休んでいることは聞いていた。

だから、

「その相談にでも来たのかな」

その程度に考えていた。

――このときの俺は、まだ何も知らなかった。

能面とアネゴが、とても仲の良い冒険者だったこと。

よく飲みに行く仲だったこと。

そして――

問題児は、アネゴだけではなかったことを。

さらに。

なぜ俺がA級に選ばれたのかも、まだ知らなかった。

後から聞いた話では、S級冒険者のメガネが、

「アネサンが心を壊したから、経験の長いモブ男か能面のどちらかをA級にする」

そう判断したらしい。

そして、選ばれたのが俺だった。

「……迷惑な話だ」

ちなみに、メガネと俺は、ラーメン友達である。

しょっちゅう一緒にラーメンを食べに行く仲だ。

……まあ、今は話を戻そう。

能面とアネサンの話は、1時間ほど続いた。

やがて能面が戻ってきた。

「じゃあ、お疲れ様です」

どうやら能面のクエスト終了時間になったらしい。

能面はそのまま帰っていった。

「ふー……一人かー」

俺がそう思っていると――

「……あれ?」

アネサンがまだ残っていた。

どうやら、隠れるようにして待っていたらしい。

そして、俺に声をかけてきた。

「モブ男さん、ごめんね。迷惑かけて……」

俺は、言いたいことは言ってしまうタイプだった。

だから、正直に答えた。

「いや、大丈夫ですよ!気にしないでください!」

「心って、治すのに時間がかかりますから」

「ゆっくり休んで、早く治してくださいね!」

そして、俺は何気なく言った。

「それにしても、能面さんとアネサン、仲良かったんですね」

その瞬間――

アネサンの表情が、ほんの一瞬で消えた。

「…………」

「……あれ?」

さっきまで普通に話していたのに。

空気が変わった。

俺の頭の中に、嫌な予感が走る。

「……え? 俺、やってもうた?」

しばらく沈黙したあと、アネサンが静かに口を開いた。

「実は……」

「私、能面とアネゴに、いじめられてたんだよね……」

「…………え?」

俺は言葉を失った。

アネサンの話によると――

能面からは、

「ちゃんとやれ」

「なんでこんなこともできないの?」

と、無理難題ばかり言われていた。

そして、アネサンがA級になったときには、

「もっとしっかりしたら?」

「クズね」

そんな言葉まで浴びせられたという。

さらにアネゴからは、

「能面様に譲りなさいよ!」

「テメーじゃ役不足だって!」

そんな言葉を投げつけられていた。

俺は、黙って話を聞いた。

そして――

ようやく理解した。

アネサンが来なくなった理由。

A級の席が空いた理由。

そして、なぜ俺がA級に選ばれたのか。

全部が一本につながった。

俺の頭の中に、一つの言葉が浮かんだ。

「……次のターゲットは俺か?」

モンスターなら、まだいい。

姿が見える。

攻撃も予測できる。

だが――

本当に怖いのは。

冒険者を狩る、冒険者だった。

こうして俺は、これから始まる気の重い毎日を予感するのであった。


冒険者の世界にも、モンスターより恐ろしいものがいる。


それは、人間関係。


外から見れば仲の良い冒険者同士でも、内側では何が起きているのか分からない。


そして、誰かが去ったあとには、別の誰かがその席に座る。


モブ男は、まだ知らない。


A級冒険者という称号の裏に、どんな意味が隠されているのかを。


次のターゲットは俺か?


皆さんの職場にも、表からは見えない人間関係ってありますか?


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