巨大なスクリーンは、一つの名で静止した。――『犬神江戸』。
私は、あの小さな鼠、慎によって操作された投票グラフを眺めた。私の予測は正しかった。捕食者の生態系において、知性とは即座に排除すべき脅威なのだ。朱里がヒステリックに叫び始め、他の参加者が戦慄と安堵の混ざった視線を向けてくる中、私はただ眼鏡の位置を直した。
「江戸兄さん! 嘘よ……こんなの間違ってるわ!」
朱里が叫ぶ。彼女は泣いているが、選ばれたのが自分でなかったことに安堵しているのを、私は知っている。
「静かにしろ、朱里。集中の邪魔だ」
私は淡々《たんたん》と言った。
天井から二本のロボットアームが降りてき、鎖骨を砕かんばかりの圧力で私の肩を固定した。私は抵抗しない。機械に抗うのは、神経原性ショックに耐えるために必要な運動エネルギーの無駄遣いだ。
床から突如現れた部屋中央の処置台へと引きずられる。極めて輝度の高い無影灯が点灯し、痛みを伴うほどの白光が降り注ぐ。
『処置内容:全舌切除術。標的:医学的虚偽の背後にある知性』
AIの声が響き渡る。
「江戸!」影山蓮が目を見開いて叫んだ。「死ぬぞ!」
「政治家殿、舌は生命維持に不可欠な臓器ではない」
ロボットアームが私の手足を鋼鉄のベルトで拘束する中、私は横たわりながら答えた。
「だが、全員覚悟しておくことを勧める。『ミラーペイン』がこの痛みの信号を君たちの皮質へ転送する。私が感じるものを感じている時、自分の舌を噛み切らないよう気をつけることだ」
金属製の開口器が口に挿入され、顎関節が鳴るまで無理やり開かれる。私の舌は鉤状の鉗子で引きずり出された。金属の冷たさが、体温と鮮明な対照をなす。
そして、私はそれを見た。高周波で振動する超音波凝固切開装置(ハーモニック・スカルペル)。これは単に切断するのではなく、超音波摩擦によって組織を破砕するものだ。
――ジィィィィィィン――。
刃が私の舌根に触れた。
視界が一瞬にして盲目的な白に染まった。舌神経の一本一本が焼き切られるのを感じる。まるで、ゆっくりと流れる溶岩を飲み込んだかのようだ。口腔内は即座に血液で満たされ、鉄の臭いが鼻を突く。
周囲から、集団の悲鳴が聞こえてきた。
影山蓮は、あたかも自分が切断されているかのように喉を押さえて崩れ落ちた。朱里はあまりの激痛に心的な吐血を見せた。ハッカーの慎でさえ、涙と鼻水にまみれ、自分の首を掻き毟りながら床を這っている。
私は? 私は、瞳を閉じた。
私はこの痛みのメンタル・マッピングを行っていた。侵害受容器が視床へと信号を送る。私はその信号を、退屈なバイナリ・コードの羅列としてイメージする。オトガイ舌筋の線維が断裂していく様を観察する。血清混じりの血液がロボットの顔に噴きかかり、カメラセンサーを曇らせる。
――ガシャン。
六十グラムの肉片が、金属トレーに落ちた。
口の中は温かい血の溜まり場となった。私はむせたが、必死に意識を保った。超音波の熱で自ら閉塞しようとする舌動脈の拍動を感じる。
ロボットが拘束を解いた。私は処置台の上に座り直し、無菌状態の白い床に黒ずんだ血の塊を吐き出した。白い清潔さと深紅の鮮血が、芸術的なコントラストを描いている。
私は全員を見据えた。彼らは未だに、ブレスレットを通して伝わった二倍の痛みに悶え苦しんでいる。私をまるで幽霊でも見るような目で眺めている。
私はロボットのトレイからガーゼを一枚取り、破壊された口元を拭うと、そこに置かれていたペンと紙を手に取った。驚くほど安定した手つきで、彼らに見せつけるための一文を書き記す。
――『次は誰だ?』
舌を失い、私はもう話せない。だが、私の虚無で冷徹な眼差しは、いかなる呪詛よりも恐ろしかったはずだ。私は地獄を通り抜けた。そして医学的に言えば、私はまだ生きている。彼らが一人ずつ崩壊していくのを、この目で見届けるために。
カメラの向こう側でこれを観賞している『誰か』は、今微笑んでいるに違いない。なぜなら、この部屋で死体の扱い方を熟知しているのは、私だけなのだから。