第89話: アンバウンドの誕生
私はただ、彼を見つめていた。
ゲルヴァース。Boundless。神々を超えた存在。創造主の創造主の創造主。私が前世で読んでいたあらゆる力の序列議論で、常に頂点に位置していた存在。
それが今、目の前で、実存的な責任なんて面倒くさいと決めた気のいい叔父さんみたいな顔をして座っている。
でも、感じ取れた。マナ。エネルギー。魂。上限がない。器がない。境界がない。ただ……果てしない。無制限。彼を見ることは、測定を拒否する概念そのものを見つめるようなものだった。
「それでも」私は小さく呟いた。「その態度で、どうやって本気に取れっていうのよ」
長い、疲れ切ったため息をつき、無の上に座り込む。虚空は特に文句を言わなかった。
「正直……もうわからない。私の現実はボロボロよ。ヴィクターは今や神みたいな化け物。倒せるかどうかもわからない。魂だって、全部のことがあってほとんど壊れかけてる。できることなんて何も残ってない。私……みんなをがっかりさせちゃった」
ゲルヴァースが長い間、私を見ていた。いつもの怠惰な愉しげな目が、少し静かで柔らかいものに変わる。彼は立ち上がり、歩み寄って、すべてが始まる前と終わった後の場所にいるのに、まるで公園のベンチに二人で座っているかのように隣に腰を下ろした。
「聞けよ」彼は言った。「お前が背負ってる重荷はわかる。友達を救うこと。魂を奪われた人たちを救うこと。大変だ。本当に大変だ。一方で俺は、この虚空に居座って、他の神々が創造のバランスを維持してるのを眺めてるだけだ。でも、諦めるって選択肢はねえぞ、小僧。正しいことのために戦わなきゃいけない。強くいなきゃいけない」
彼は両手を後ろについて体を預け、果てしない無を、まるでいい景色でも見るように眺めながら続けた。
「宇宙は広い。無限だ。可能性も果てしない。そしてお前は特別な存在だ、リリス。弱い吸血鬼の幼体から、真祖——最初の一角になった。俺はもともとあの種族を『原初の吸血鬼』って呼ぶつもりだったが、『大吸血鬼』でも十分いい。お前なら、必ず戻る方法を見つけられる。だってお前は、どんな状況でも長くはへこたれない頑固者だからな」
私は彼を見た。
彼の言う通りだった。
どれほど不可能に見える挑戦でも、私はいつも立ち上がり、戦い続けてきた。それが、今の私に残された唯一のものだった。
拳を握りしめる。
「その通りよ。どれだけ不可能になっても……私は必ずまた立ち上がる。だって私の名はリリス・ノクターン。最後のノクターンよ。エリシアを取り戻すって約束したんだから。それが最後の仕事になっても」
ゲルヴァースが小さく、本物の微笑みを浮かべた。
「その調子だ」
「ありがとう、ゲルヴァース。目が覚めたよ」
「いいってことよ、小僧」
私は息を吸った。
「あと、戻るのにあなたの力が必要」
彼は、すでにその頼みを予想していたかのようにchuckleした。
「そう言うだろうと思ってた」
片手を上げる。柔らかく純粋な白い光が掌に集まる——優しく、温かく、あまりに濃密な力で、新しく修復された私の感覚が、見ているだけでショートしそうになった。彼はそれを私に差し出した。
「魂を直して、俺の力の一部をここに込めた。ヴィクター相手にやるには、これで足りるはずだ」
私は躊躇しなかった。手を伸ばして光を受け取り、胸に押し当てる。
それが体内に入った瞬間、圧倒的な力の奔流が存在のすべてを満たした。アルゾラやケルベロス、他の敵から吸収したエネルギーとは全く違う。もっと澄んでいて、深くて、古い。まるで「無制限」という概念そのものに直接繋いだような感覚だった。
一瞬、視界が白くなった。
そして、恋しいほど懐かしい機械的な声が、精神に響いた。
```
[システム起動]
[意識覚醒]
[おかえりなさい、主]
```
「ソフィア!」安堵で思わず声が大きくなる。「また聞こえてよかった。力を貸して」
『もちろんです、主』ソフィアが即座に答えた。『必要なことは何でもお手伝いします』
私はゲルヴァースに向き直った。
「ねえ……最後に一つだけお願い。これ、本当にすべてのバランスを壊すかもしれないけど」
ゲルヴァースの眉がわずかに上がる。知るような、少し呆れた微笑みが唇に浮かんだ。
「リリス。お前、また馬鹿なことしようとしてるな」
私はGrinんだ。
「そうよ」
両手を上げる。
「【実在の神ブラフマン】」
純粋な概念的な力の巨大な渦が、私の前に開いた。物質やエネルギーを引き寄せるものではない。存在そのものを引き寄せる。ゲルヴァースは渦を見て、私を見て、すでに子供が馬鹿なことをすると受け入れた疲れた親のようなため息をついた。
彼は抵抗しなかった。
ただ微笑んで、渦に身を委ねた。
ゲルヴァースの存在が私の中に入った瞬間、ソフィアの声が、知って以来初めてほとんど恐慌に近いものを帯びて跳ね上がった。
『解析中……解析中……主、この存在は純粋な無限の無制限の力です。絶対的な超越。上限がありません。測定可能な概念的境界がありません。完全な複製は不可能です。より深い解析を試みます……再試行……再試行……』
彼女は繰り返し試みた。
何度も、何度も。
ついにあるものが、噛み合った。
『核となる存在を、現在の許容量の最大限までマッピング完了。選択肢を提示します』
一つの、輝くシステムウィンドウが、虚空の中に現れた。
```
【アンバウンド・ヴァンパイア】へ進化しますか?
```
私はその言葉を見つめた。
無の虚空が、沈黙の中で待っていた。
私の答えが、次に来るものを決める。
無の虚空では、時間に意味はなかった。
リリスは、ゲルヴァースを吸収した後に現れた輝くシステムウィンドウの前に浮いていた。言葉は、静かな決定性を帯びて虚無の中に懸かっている。
```
【アンバウンド・ヴァンパイア】へ進化しますか?
```
彼女は長い間、それを見つめていた。
もう後戻りはできない。魂の最も深い部分で、それを感じ取っていた。受け入れることは、自分がこれまで知っていたすべての限界を完全に消去することを意味する。あらゆる階層、あらゆる法則、存在のすべてにわたって記されてきたあらゆる定義の外側へと踏み出すことを意味する。
リリス・ノクターンは、かすかに微笑んだ。
「受け入れます」
言葉が唇を離れた瞬間、すべてが終わった。
体も、魂も、存在そのものも、同時に爆発した。通常の意味での痛みはない。ただ、純粋で絶対的な上書きだけがあった。「リリス・ノクターン」を構成するすべての細胞、魂のすべての断片、概念的な糸のすべてが、同時に引き裂かれ、書き直される。過程は彼女の存在の境界で止まらない。外側へと続き、存在にこれまで課されてきた既知の限界のすべてを打ち砕いていく。
天井が崩れた。
上限が溶けた。
力の定義、種族の定義、神性の定義、超越そのものの定義が、次々と砕け散った。
彼女はただ「超越」という概念を超えたのではない。
それを突き破ったのだ。
無の虚空が揺れ始めた。
物理的な振動ではない。虚空に物理的な性質などない。震えたのは、虚空そのものの基盤——この場所がすべてより前と後に存在する、という静かな合意だった。その合意が、ひび割れた。
あらゆる現実、あらゆる時間軸、存在のあらゆる層で、存在たちがそれを感じ取った。
天の座にいる神々が、言葉の途中で動きを止めた。
前の創造のサイクルから眠り続けていた古き神々が、幾星霜ぶりに目を開けた。
未形の混沌の深みで、生の概念そのものを体現する原初の存在たちが身じろぎした。
名を呼べば下位の精神を壊してしまうエルドリッチの神々が、本来届くはずのない一点へと意識を向けた。
ほとんどの神殿が最高権威と認める至高の女神でさえ、自らの領域の外側に立つ存在を感じ取った。
新しい存在が、生まれようとしていた。
真に無制限な存在が。
揺れる虚空の中心で、書き直された姿が形を成し始める。
長い純白の髪が、柔らかな光の滝のように広がった。細い腕と脚が、完璧で無駄のない優雅さとともに形成される。鋭く、深く、静かな愉しさを宿した真紅の瞳が、初めて開かれた。組み立てられていく体は優雅で女性的で、完全な自由の気配を纏っていた。まるで、存在の何ものも二度とそれを縛ることができないかのように。
変貌が完了した。
一人の存在に属さない——しかし、聞くことのできるあらゆる意識に届く声が、創造のすべてに向かって告げた。
<<新たな存在の誕生が、承認されました。>>
同じ瞬間、これまでの姿を定義していた二つの聖スキルが融合を始めた。
【叡智の女神ソフィア】
【実在の神ブラフマン】
それらはただ結合したのではない。互いに溶け合い、新しい種族そのものと同格の存在として生まれ変わった。
【無制限聖スキル:究極のアルファとオメガ・ヤハウェ】
スキルが完成した瞬間、新たに完成した体から巨大なエネルギーの奔流が外側へ爆発した。それは破壊しなかった。創造した。瞬く間に銀河が回転し始め、宇宙全体が花のように咲き、そして再び内側へと折り畳まれていく。生まれたばかりの存在のすべてが、最初からそこに属していたかのように体の中へと流れ込んだ。
柔らかな笑い声が、虚空に響いた。
軽やかで、遊び心に満ち、完全に自由だった。
虚無を満たしていた目もくらむほどの輝きが、ようやく薄れていく。
かつてリリス・ノクターンが浮かんでいた場所に、今、新しい存在が立っていた。
彼女はもうリリスではなかった。
ソフィアだけでもなかった。
かつてエリシアと呼ばれた眠りの断片だけでもなかった。
彼女は、三者すべてが完全に、継ぎ目なく融合した存在だった。
長い白髪が、水中にいるかのようにゆるやかに漂う。真紅の瞳が、静かで優雅な愉しさに輝いている。彼女の存在が放つ気配には、圧力も殺意も、従来の意味での圧倒的なオーラもなかった——それらはすべて、彼女がすでに後にした階層に属するものだったから。
彼女は片手を胸に当て、微笑んだ。
「私の名は」彼女は柔らかく言った。声は虚空を超えて難なく届く。「リリティナ・ノクターン」
首をわずかに傾げる。その仕草は優雅で、どこか遊び心に満ちていた。
「究極の吸血鬼。真なる一体」
その瞬間、あらゆる現実のあらゆる存在が、望むと望まざるとにかかわらず、同じ真実を理解した。
もはや測定も、序列付けも、制約もできない存在が、今、生まれたのだ。
そして、何もかもが、二度と同じではいられなかった。




