第87話: スターダスト・レインボー対エバーラスター・ブラッドキラー
廃墟と化したマンチェスターの上空は、呼吸することすら意識的な努力を必要とするほど重く淀んでいた。
ソフィア・ノクターンとエターナル・ヴィクターが、砕かれた広場を挟んで向かい合っていた。二人の間を隔てる空間は、残留エネルギーのパチパチという音と、崩壊しつつある次元の微かな残響で満ちている。空は複数箇所で裂けたまま、他の領域がこの異端の誕生に反応する、短く恐ろしい光景を時折覗かせていた。
ソフィアの純白の髪は、完璧な静止の中でゆるやかに漂っていた。真紅の瞳には怒りも恐怖も、ほとんど感情すら宿っていない。ただ、穏やかで絶対的な集中だけがあった。
エターナル・ヴィクターの巨大な人型と竜が融合した姿は、純粋な黒と真紅の力を放っていた。翼は大きく広げられ、光を飲み込むように移ろう影を落としている。爪の手の中で、エネルギーが凝集し始めていた。
「まだその空虚な表情を浮かべているのか」
エターナル・ヴィクターの声が、遠い雷のように都市を転がった。
「あの穏やかで無機質な顔……私は嫌悪する。それを塗りつぶす瞬間を、心から楽しむつもりだ」
ソフィアは右手を上げた。
掌に、柔らかく多彩な光が咲き出した。
その光の中から、ゆっくりと一振りの剣が形を成していく。長く、優雅で、信じがたいほど美しい剣だった。刃はスペクトルのあらゆる色と、名もない色彩に煌めき、まるで星々の光そのものが金属へと鍛え上げられたかのようだった。表面を微かな星座が漂う。剣が完全に顕現した瞬間、周囲の空気がわずかに澄んだ。現実そのものが、古く気高い存在を認めたかのように。
【スターダスト・レインボー】
ソフィアがかつて血の蝕戦争の時代に振るっていた伝説の剣——彼女がスキルとなり、聖なる存在となる遥かに前の、彼女自身の武器。
エターナル・ヴィクターの瞳が、暗い興奮に輝いた。
「まだその遺物を持っていたか。ならば、相応の答えを返してやろう」
彼の掌から黒と真紅のエネルギーが爆発した。巨大で無骨な剣が握りの中に形成される。大人一人分を超える長さを持ち、刃はギザギザで、生きた竜の血と忘れられた恒星の災厄の凝縮した本質を脈打たせていた。暗い赤い血管が刃に沿い、滴る液体が落ちるたびに地面に穴を焼いていく。
【エバーラスター・ブラッドキラー】
純粋な竜のエネルギーと血の星から鍛えられた武器——物理的な形を取ることを許されるべきではなかった存在。
エターナル・ヴィクターは怪物じみた剣を肩に担ぎ、鋭い歯を並べてGrinんだ。
「来い、ソフィア・ノクターン。お前を切り刻み始めた時、その無機質な顔がいつまで続くか見せてみろ」
ソフィアはスターダスト・レインボーを構えに下ろした。多彩な刃が柔らかく唸り、まるで古い敵に挨拶するかのようだった。
「わかりました」
二人は同じ瞬間に動いた。
最初の衝突は、音ではなかった。
音の不在だった。
スターダスト・レインボーとエバーラスター・ブラッドキラーが交差した瞬間、衝撃は一拍の間、音そのものを消去した。遅れて衝撃波が訪れる——数キロ以内にまだ立っていたものすべてを押し潰す、見えない力の壁。マンチェスターに残っていた建物は、建物であることをやめた。地面が数メートル沈み、遠方の山々がその背骨に沿ってひび割れた。
両者とも空中を後方へ押しやられた。
エターナル・ヴィクターが大声で笑った。純粋な高揚に満ちた声だった。
「いい! これだ! 私が求めていた力はこれだ!」
彼は巨大なブラッドキラーを、まるで重さなどないかのように片手で回した。
「もう一度だ!」
彼の姿が消えた。
空間が歪み、彼がソフィアの頭上に現れた。大陸を割るほどの力を乗せた縦斬りが下ろされる。剣の刃が通った跡に、血のような赤い空間の裂け目が残った。
ソフィアは片手でスターダスト・レインボーを掲げた。
虹の刃が、降り注ぐ怪物と交差する。
再び壊滅的な衝撃波が炸裂した。今度は力が上方へ向けられる。純粋な圧力の巨大な柱が暗い雲にきれいな穴を穿ち、上層大気へと突き抜け、隣国からも視認できるほどだった。
エターナル・ヴィクターの目がわずかに見開かれた。腕を伝う反動を感じ取ったのだ。
「片手で……防いだのか?」
ソフィアの表情は変わらなかった。
「あなたの剣は重い」彼女は静かに言った。「しかし、その概念は不完全です。竜のエネルギーと血の星の本質を混ぜ合わせた……野心的ではありますが、不安定です」
彼女が手首をひねった。
スターダスト・レインボーが色の連鎖を閃かせる——紫、藍、青、緑、黄、橙、赤、そして通常のスペクトルには存在しない色。それぞれの色が異なる概念的な重みを帯びていた。力がエターナル・ヴィクターの攻撃を横へ逸らし、彼を西の区画の廃墟を突き抜けて、数キロにわたる一直線に叩き込んだ。
彼は爪を地面に食い込ませて停止し、深い溝を刻んでから再び立ち上がった。変貌した体の中で今や血と呼べるものとなった黒い液体が、口の端から滴った。彼はそれを拭い、さらに激しく笑った。
「いいぞ! いいぞ! 手加減するな!」
彼が翼を完全に広げた。
【多元領域支配】
空の裂け目が広がる。他の次元から、異質な力の断片が流れ込み始めた——見知らぬ法則、異界のエネルギー、ラガリアに属さない敵対的な概念。エターナル・ヴィクターはそれらすべてをエバーラスター・ブラッドキラーに吸収し、すでに怪物じみた剣をさらに巨大で歪んだものへと変えていく。
「言ったはずだ」彼は咆哮した。「今の私は、存在するすべてを破壊できる! この世界も、隣り合う領域も、上位次元も——すべてをだ!」
彼が再び突進する。強化されたブラッドキラーを大きく横に振り、地域そのものを両断しようとする弧を描いた。
ソフィアの真紅の瞳がわずかに細められた。
「星座断絶」
伝説の剣が、千の遠い星々の光を帯びて輝いた。二振りの刃が交差した瞬間、空間そのものに視認できる亀裂が生じた。衝撃点から蜘蛛の巣状のひびが広がり、世界と世界の間の虚空がわずかに覗いた。
両者は再び引き離された。
戦場の上空で、エレンディール、ヴァラク、グレンダ、セラフィエルが、グレンダが辛うじて展開した防護結界の中から、呆然と見守っていた。
ヴァラクの声が低く張りつめていた。「あいつら……もう以前と同じ土俵で戦っていない。一合ごとに周囲の次元が傷付いている」
エレンディールの顔は深刻だった。「スターダスト・レインボー……あの剣を再び見る日が来るとは思わなかった。そしてあの異端の剣は……存在するべきではなかったものだ」
グレンダが杖を強く握りしめた。「ソフィアはまだ手を抜いている。感じるわ。でもこのままでは、被害がこの王国を遥かに超えて広がる」
戦場では、エターナル・ヴィクターの興奮がさらに募っていた。
彼はエバーラスター・ブラッドキラーを地面に突き立て、まったく異なる規模で力を集め始めた。背後の砕けた次元の破片の光輪が回転を速め、黒と真紅のエネルギーが逆巻く竜巻のように螺旋を描いて上昇する。
「決めた」彼は宣言した。声は同時に複数の領域に響き渡った。
「あの穏やかな表情を、顔から切り落としてやる。痛みでも、恐怖でも、怒りでも——何か見せろ! あの空虚な目で見られるのは拒否する!」
ソフィアが再びスターダスト・レインボーを構えた。刃の光が強まり、見るだけで目が痛むほどだった。
「あなたは喋りすぎです」彼女は柔らかく言った。
二人の姿が消えた。
次の一連の衝突は、ほとんどの目では追えない速さで繰り広げられた。スターダスト・レインボーとエバーラスター・ブラッドキラーが、一秒の間に何十回も交差する。一合ごとに衝撃波が空をさらに引き裂き、虹の光と血のような闇がぶつかり合い、打ち消し合い、交互の波となって爆発した。
廃墟のマンチェスターはすでに原型を留めていなかった。残された大地は、浮遊する瓦礫と空間の裂け目、生の概念的エネルギーが絶えず移ろう戦場と化していた。
エターナル・ヴィクターは激しさを増しながら攻め立て、多元領域の力をますます多くの一振りに注ぎ込んだ。彼の笑い声は依然として大きく、抑制がなかった。
ソフィアは一太刀一太刀を、精密で無駄のない動きで受け止めた。表情は一度も変わらない。呼吸が乱れることもない。必死の戦いに身を投じる戦士というよりは、慣れ親しんだ作業を絶対的な集中でこなす職人のようだった。
それでも、圧力は上がり続けた。
この戦いの賭け金は、もはや一都市や一王国に留まらない。主要な衝突のたびに、隣り合う次元に視認できる波紋が走った。抑制なくこのままエスカレートすれば、被害はラガリアで止まらない。
ソフィアはそれを知っていた。
エターナル・ヴィクターは気にしていないか……あるいは、それを望んでいた。
彼がエバーラスター・ブラッドキラーを両手で大きく振り上げ、現在持てるすべてを乗せた頭上からの一撃を放った。
「これで終わりだ!」
ソフィアの瞳が、より深い真紅の光を宿した。
「最終プリズム」
伝説の剣が、内包するすべての色を一点に凝縮した閃光として解き放った。二振りの究極の刃が、この局面の決定的な交差を迎える。
光と闇の爆発が、空を飲み尽くした。
——そして、その爆発の中心で、二人はまだ剣を交えていた。
衝撃波が収まっても、戦場の空気は重く、熱を帯びたまま揺れていた。浮遊する瓦礫の一部がゆっくりと地面に落ち、空間の亀裂がゆっくりと閉じようとしては、また新たな力が加わって再び裂ける。
エターナル・ヴィクターが、爆発の中心から一歩踏み出した。肩で息をしている様子はなく、むしろ愉悦に体を震わせていた。エバーラスター・ブラッドキラーの刃は、先ほどよりさらに歪み、血のような液体を滴らせながらも、健在だった。
「まだ立っているか……いや、当然だな」彼は低く笑い、剣を肩に担ぎ直した。「お前のその剣、ただの美しい玩具ではないようだ。星々の光を刃に宿すなど……血の蝕の時代の遺物にしては、よくぞ残っていたものだ」
ソフィアは静かにスターダスト・レインボーを構え直した。刃の表面を流れる星座の光が、わずかに揺らいでいる。先ほどの最終プリズムでかなりの概念的負荷をかけたにもかかわらず、剣自体に損傷は見られない。むしろ、戦いを通じて徐々に輝きを増しているようにさえ見えた。
「スターダスト・レインボーは、単なる武器ではありません」ソフィアは静かに答えた。「かつて私が『賢者』として生きていた頃、この剣は私の意志そのものでした。星々の秩序と、混沌を切り分ける光。あなたのように、存在すべきでないものを無理やりこの世界に引きずり込む者に対して、特に鋭く反応します」
エターナル・ヴィクターのGrinが広がった。
「ほう。では、この剣は私を『切り分ける』ために存在するということか。面白い。ならば、私がこの剣を折ることで、お前の意志ごと折ってやろう」
彼が翼を一振りした。
空間が複数箇所で同時に歪み、彼の周囲に小さな次元の裂け目がいくつも開いた。裂け目の向こうから、異質な法則が流れ込む。ある裂け目からは重力が逆転したような圧力が、別の裂け目からは時間の流れが不規則に歪む気配が、また別の裂け目からは「存在そのものを否定する」ような冷たい概念が漏れ出していた。
エターナル・ヴィクターはそれらをすべてエバーラスター・ブラッドキラーに取り込み始めた。
「多元領域支配を、さらに深く使う」彼は宣言した。「お前の剣が星々の秩序を象徴するなら、私の剣は秩序を食い破る災厄だ。血の星の残滓、忘れられし竜の血、そして私が集めた無数の魂と異次元の法則。すべてをこの刃に乗せれば——」
彼が剣を振り下ろす前に、ソフィアが先に動いた。
「プリズム連鎖」
スターダスト・レインボーが、連続した光の軌跡を描いた。一振りで終わらず、二振り、三振りと、まるで光の残像が実体を持つかのように、次々と斬撃が放たれる。それぞれの斬撃が異なる色を帯び、異なる概念を乗せてエターナル・ヴィクターに襲いかかった。
紫の斬撃が空間の歪みを矯正し、藍の斬撃が異次元の法則を一時的に遮断し、青の斬撃が血のエネルギーを浄化しようとし、緑の斬撃が再生を阻害する。黄から赤にかけての斬撃は、純粋な物理的・概念的破壊力を乗せていた。
エターナル・ヴィクターは笑いながら、それらすべてをエバーラスター・ブラッドキラーで受け止めた。刃と刃が交差するたびに、小さな爆発が連続して起こり、周囲の空間がさらに細かくひび割れていく。
「いいぞ、ソフィア! もっとだ! お前の全力を見せろ!」
彼がカウンターを放つ。巨大な剣が弧を描き、プリズム連鎖の光の軌跡をまとめて叩き切ろうとした。ソフィアは身をひねり、斬撃を紙一重でかわしながら、スターダスト・レインボーの切っ先で彼の剣の腹を軽く突いた。
その一瞬の接触で、血のような液体がわずかに弾かれた。
エターナル・ヴィクターの表情が、初めてわずかに硬くなった。
「……触れたか」
ソフィアは静かに言った。
「あなたの剣は、確かに強大です。しかし、無理やり異質なものを詰め込みすぎています。概念が溢れ出し、刃自身が自己を維持するのに精一杯になっている。だから、わずかな隙間から侵入できるのです」
エターナル・ヴィクターが舌打ちした。
「理屈はいい。力でねじ伏せてやる」
彼が突然、剣を手放した。
エバーラスター・ブラッドキラーが空中に浮遊したまま、自律的に動き始める。まるで意思を持ったかのように、ソフィアを多方向から同時に斬りかかってきた。同時に、エターナル・ヴィクター自身が両の爪を振り上げ、純粋な物理的・概念的破壊の爪撃を放った。
剣と爪の同時攻撃。
ソフィアはスターダスト・レインボーを大きく旋回させた。
「星屑の守護」
刃から無数の微細な光の粒子が飛び散り、彼女の周囲に半透明の球状の結界を形成した。エバーラスター・ブラッドキラーの斬撃が結界に触れると、光の粒子が剣の血のようなエネルギーを一部吸収し、中和していく。同時に、彼女は結界の内側から鋭い突きを放ち、エターナル・ヴィクターの爪撃を精確に弾いた。
衝撃で両者が再び距離を取る。
上空の防護結界の中で、セラフィエルが唇を噛んだ。
「ソフィア様の剣……あれはただの攻撃手段ではない。概念そのものを『整理』しているように見える。相手の力を否定するのではなく、あるべき形に戻そうとしているような……」
エレンディールが静かに頷いた。
「血の蝕の時代、ソフィアはその剣で『存在の歪み』を正す役割を担っていた。初代魔王の力が世界に溢れ出した時も、彼女はあの剣でいくつもの次元の亀裂を封じた。だが、今の相手は……あの頃の歪みとは比較にならない」
ヴァラクが低い声で呟いた。
「あの異端の剣も、ただ者じゃない。見てみろ。斬るたびに周囲の空間が『血』を帯びていく。まるで、この世界自体を徐々に自分の領域に変えようとしているみたいだ」
実際、エバーラスター・ブラッドキラーが通った跡には、微かな赤い霧が残り、地面や浮遊する瓦礫に触れると、それらがゆっくりと黒い鱗のようなものに変質し始めていた。戦場そのものが、徐々にエターナル・ヴィクターの影響下に侵食されつつあった。
ソフィアはそれに気づいていた。
彼女はスターダスト・レインボーを垂直に構え、静かに息を吸った。
「これ以上、この地を侵させません」
剣が強く輝いた。
「星座編制——第一形態」
周囲の空間に、無数の微細な光の点が浮かび上がった。まるで夜空の星々が、この戦場に一時的に顕現したかのようだった。光の点は規則正しく配置され、複雑な幾何学模様を描きながら、ソフィアを中心に展開していく。
エターナル・ヴィクターが眉をひそめた。
「なんだ、それは」
「この戦場に、一時的な『秩序』を敷く」ソフィアは答えた。「あなたの力は混沌と侵食を本質としています。ならば、その混沌を受け入れる器を、こちらで限定します」
光の点が完成した瞬間、戦場の空気が一変した。エターナル・ヴィクターの放つ圧力が、星座の網の中でわずかに抑制される。侵食の進行も、明らかに鈍くなった。
エターナル・ヴィクターが不快そうに鼻を鳴らした。
「小手先の術だ。破ってやる」
彼がエバーラスター・ブラッドキラーを振り回し、星座の光点をまとめて斬り裂こうとした。しかし、斬った光点は消えることなく、すぐに再配置される。斬れば斬るほど、光点の配置が彼の攻撃パターンを学習し、より効率的に圧力を分散させ始めた。
「くっ……!」
ソフィアが静かに前進した。
星座の光を纏ったスターダスト・レインボーが、一閃される。
斬撃は物理的な刃ではなく、概念的な「切断」だった。エターナル・ヴィクターの周囲にまとわりつく異次元の法則を、一つずつ丁寧に切り離していく。彼が取り込んでいた重力の逆転も、時間の歪みも、存在否定の概念も、光の刃に触れるたびに「ここには属さないもの」として弾き出されていく。
エターナル・ヴィクターの表情が、初めて明確に険しくなった。
「邪魔をするな……!」
彼が大喝し、両翼を大きく羽ばたかせた。翼から放たれた黒い衝撃波が、星座の光点を一時的にかき消す。その隙に彼は距離を詰め、エバーラスター・ブラッドキラーを両手で握りしめ、全身の力を乗せた突きを放った。
ソフィアは剣を横に払い、突きを受け流した。
だが、その一瞬の接触で、彼女の左腕の袖がわずかに裂け、白い肌に細い赤い線が浮かんだ。
初めての、目に見える傷。
エターナル・ヴィクターの目が輝いた。
「やっとだ……! やっと、お前のその完璧な顔に、傷を付けられた!」
彼の笑い声が戦場に轟いた。
「もっとだ! もっと傷を付けてやる! お前をズタズタにして、その無機質な目から何か——何でもいい、感情を引きずり出してやる!」
ソフィアは左腕を一瞥した。傷は浅い。すでに再生が始まっている。だが、彼女の瞳の奥で、何かがわずかに動いた。
「……あなたは、私の表情を変えたがっているのですね」
「当たり前だ!」エターナル・ヴィクターは叫んだ。「お前は私を見下している。あの穏やかな顔で、すべてを理解したような目で、私を見下ろしている。それが気に食わない! 私はエターナル・ヴィクターだ。存在するすべてを支配する存在だ。お前ごときに、そんな目で見られる筋合いはない!」
ソフィアは静かにスターダスト・レインボーを構え直した。
「私はあなたを見下していません。ただ、理解しているだけです」
「理解だと?」
「あなたは強い。確かに、これまで存在した多くの魔王や異端を超える力を手に入れた。しかし、その力の根幹は『奪うこと』と『詰め込むこと』に依存しています。他者の魂、他の次元の法則、忘れられた血、不完全な存在。すべてを無理やり自分の中に押し込み、維持している。だから不安定なのです」
エターナル・ヴィクターの顔が歪んだ。
「説教は不要だ!」
彼が再び攻撃を開始した。今度は剣だけでなく、翼、爪、尾、そして周囲の空間そのものを武器として使ってきた。多元領域支配を最大限に開放し、戦場のあちこちに小さな異次元の穴を開き、そこから直接攻撃を放つ。
ソフィアはスターダスト・レインボーを高速で舞わせ、すべての攻撃を正確に受け止めた。時折、光の粒子を放って侵食を浄化し、星座の光点を再配置して戦場の秩序を維持する。彼女の動きは依然として無駄がなく、呼吸も乱れない。だが、攻撃の密度が上がるにつれ、彼女の周囲の空間にも微細な負荷がかかり始めていた。
上空で、グレンダが声を上げた。
「このままではダメよ! ソフィアの結界が徐々に削られている。あの異端の侵食が、ゆっくりとだけど確実に広がっている!」
エレンディールが杖を強く握った。
「介入すべきか……? しかし、今の我々が介入すれば、かえって足手まといになる可能性が高い」
ヴァラクが低く唸った。
「くっ……歯がゆいな。あの女、本気を出せば一蹴できそうなのに、なぜ手を抜いている?」
セラフィエルが静かに答えた。
「おそらく……周囲への影響を最小限に抑えようとしているのでしょう。本気で力を解放すれば、この王国だけでなく、ラガリア全体、あるいは隣り合う次元まで巻き込む可能性がある。ソフィア様はそれを理解している」
戦場では、エターナル・ヴィクターがさらに力を解放していた。
彼の体表を覆う黒い鱗が、所々で赤く脈打ち始めている。取り込んだ力が限界に近づきつつあるのか、あるいは意図的に出力を上げているのか。いずれにせよ、彼の存在感はさらに重くなり、周囲の空間が彼を中心にゆっくりと「ねじれ」始めていた。
「そろそろ終わりにする」彼は宣言した。「お前のその剣、確かによくできている。だが、私のエバーラスター・ブラッドキラーは、ただの剣ではない。これは『災厄の具現』だ。斬れば斬るほど、この世界を私の血で染めていく。やがて、この戦場全体が私の体の一部になる」
実際、足元の地面が徐々に黒い鱗状の物質に変わりつつあった。浮遊する瓦礫の一部も、同じ変質を始めている。
ソフィアはそれを見て、静かに息を吐いた。
「……これ以上は、許容できません」
彼女の瞳が、深く、静かに光った。
「スターダスト・レインボー。真の解放を許可します」
剣が応えた。
刃の表面を流れていた星座の光が、一気に増幅される。剣全体が、まるで小さな銀河を内包しているかのように輝き始めた。周囲の空気が澄み、侵食されていた地面の一部が、光に触れて元の姿に戻り始める。
エターナル・ヴィクターが目を見開いた。
「……なんだ、その光は」
ソフィアが剣を正面に構えた。
「あなたは私の表情を変えたがっている。ならば、少しだけ、応えてあげましょう」
彼女の声に、初めてわずかな温度が混じった。怒りではない。悲しみでもない。ただ、静かな、しかし確かな「決意」だった。
「これより先は、手加減をいたしません」
エターナル・ヴィクターが歓喜の表情を浮かべた。
「やっとか……! やっと、その顔に何かが宿った! いいぞ、ソフィア! その目で私を見ろ! その剣で私を斬れ! 私も全力でお前を砕く!」
二人は同時に踏み込んだ。
次の衝突は、これまでのどれとも比較にならない規模だった。
スターダスト・レインボーが解放した光と、エバーラスター・ブラッドキラーが解放した血と災厄が正面からぶつかり合う。衝撃は物理的なものではなく、概念的なものだった。光は秩序と浄化を、血は混沌と侵食を主張し、二つの相反する概念が戦場の中心で激しくぶつかり合った。
空間が悲鳴を上げた。
空の裂け目がさらに広がり、他の次元からの影響がより直接的に漏れ出してくる。遠い山々が崩壊し、海が遠くで異常な波を立て、空が複数の色に分裂して見えるようになった。
それでも、二人は剣を交え続けた。
一合、また一合。
光と血が交差し、爆発し、また交差する。
ソフィアの動きは、徐々に速く、鋭くなっていった。もはや「受け止める」だけの戦いではない。彼女は積極的に隙間を突き、エターナル・ヴィクターの侵食を削り、彼の力の根源に少しずつ刃を当て始めている。
エターナル・ヴィクターもまた、笑い声を上げながら攻め立てた。傷を負っても、力が溢れ出しても、彼の愉悦は止まらない。むしろ、本気のソフィアと渡り合えていることに、歪んだ満足を感じていた。
「もっとだ……! もっと斬れ! 私も斬る!」
戦場はもはや、マンチェスターの廃墟ですらなくなっていた。空間そのものが戦場と化し、浮遊する岩塊、逆転する重力、歪む時間、交錯する次元の断片が、二人の戦いを中心に渦巻いていた。
上空の防護結界が、限界に近づいていた。
グレンダが歯を食いしばり、魔力を注ぎ込み続ける。
「も、もう限界……! この結界、すぐに壊れるわ!」
エレンディールが決断した。
「下がるぞ。これ以上ここに留まれば、巻き込まれる」
ヴァラクが不満そうに唸りながらも、セラフィエルがグレンダを支え、四人は結界ごと後方へ移動を開始した。それでも、彼らは目を離さなかった。この戦いの行方を、最後まで見届けるために。
戦場の中心で、ソフィアとエターナル・ヴィクターの剣が、再び大きく交差した。
今度の衝撃は、これまでのものを上回っていた。
光と血が激しくぶつかり合い、一時的に周囲のすべてを白と赤の世界に変えた。
その中で、ソフィアの声が静かに響いた。
「最終プリズム——完全展開」
スターダスト・レインボーが、内包するすべての色と、すべての星の光を、一点に収束させた。
エターナル・ヴィクターもまた、すべてを乗せた。
「血星終焉斬!」
二つの究極の一撃が、正面から衝突した。
光と闇の爆発が、空を、空間を、そしてこの局面のすべてを飲み尽くした。
爆発の余波が収まるまでには、長い時間がかかった。
煙と光の残滓が晴れた時、二人はまだ立っていた。
ソフィアの左腕には、新たな傷が増えていた。衣服の一部が裂け、白い肌に赤い線が何本か走っている。だが、彼女の表情は依然として穏やかで、剣を構える手に乱れはない。
エターナル・ヴィクターは、体の随所から黒い液体を滴らせていた。鱗の一部が剥がれ、翼の膜に穴が開いている。それでも、彼の瞳は狂おしいほどに輝き、口元は大きく裂けて笑っていた。
「まだ……終わらない」彼は喘ぎながら言った。「この程度で、私が倒れると思うな。私はエターナル・ヴィクターだ。存在するすべてを支配する者だ……!」
ソフィアは静かにスターダスト・レインボーを下ろした。刃の光は、まだ強く輝いている。
「ええ。まだ終わりません」
彼女の瞳が、静かに、しかし確かにエターナル・ヴィクターを捉えた。
「あなたが望む通り、私は本気で相手をします。あなたが折れるまで。あるいは、この剣があなたの存在を『あるべき形』に戻すまで」
エターナル・ヴィクターが大きく息を吸い込み、再び剣を構えた。
「上等だ……! さあ、続きをやるぞ、ソフィア・ノクターン!」
二人の間で、再び力が膨れ上がる。
この戦いは、まだ序章に過ぎなかった。
星々の光を宿す剣と、血と災厄を宿す剣が、再び交差する時——一つ以上の世界の命運が、静かに、しかし確実に傾き始めていた。
ソフィア・ノクターンとエターナル・ヴィクターの衝突は、もはや一つの世界に属するものではなくなっていた。
スターダスト・レインボーとエバーラスター・ブラッドキラーが交差するたびに、周囲の空間は少しずつ砕けていった。衝撃点から、純白と深い真紅の細い亀裂が割れたガラスのように広がり、他の次元、他の空、他の時間軸の光景を覗かせる。衝撃波はラガリアの国境で止まらない。領域と領域の隙間を伝って外側へと進み、遠い世界を震わせ、古代の結界を軋ませた。
廃墟と化したマンチェスターは、もはや都市の面影すら残していなかった。大地そのものが、歪んだ空間の絶えず移ろう戦場に浮かぶ、砕けた石の浮島へと変わり果てていた。重力が明滅し、時間が時折先へ進んだり遅れたりする。「ここ」という概念そのものが、崩れ始めていた。
ソフィアの純白の髪が、彼女が攻め立てるたびに後方へ流れた。真紅の瞳は依然として穏やかだったが、彼女が放つ圧力は明らかに強まっている。スターダスト・レインボーが不可能な色の連鎖を閃かせ、一振りごとに星座の重みと、聖なる存在の静かな権能を乗せていく。
エターナル・ヴィクターは、生の圧倒的な力ですべての斬撃を受け止めた。エバーラスター・ブラッドキラーが虚空を切り裂くたびに咆哮し、竜の血と恒星の堕落した軌跡を残して、現実に穴を焼いていく。彼の笑い声はより大きく、より狂い、自分を追い詰められる相手と戦えている愉悦に満ちていた。
「いいぞ! もっとだ! この次元を壊しても構わない!」彼は咆哮した。「あの無機質な顔がひび割れるところを見せろ!」
ソフィアの表情は変わらなかった。
彼女は今、決定的な優位を掴もうとしていた。
スターダスト・レインボーが、内包するすべての色を一点の刃先へと凝縮し始める。周囲の空間の亀裂が速度を落とし、まるで現実そのものが息を潜めているかのようだった。ソフィアがわずかに構えを調整する。一振りの、完璧に研ぎ澄まされた斬撃が、エターナル・ヴィクターと名乗る異端を終わらせるはずだった。
その時、彼女の魂の奥深くで、一つの脈動が迸った。
最初は柔らかく——ほとんど優しかったが、ソフィアが即座に認識する、馴染み深い気配を帯びていた。
リリス。
彼女の主が、目を覚まそうとしている。
アルゾラを吸収した後、リリスを守るためにソフィアが創り出した『魂の聖域』が、内側から開き始めていた。リリスの意識が動き出し、ソフィアが慎重に維持してきた境界を押し広げようとしている。
ソフィアの瞳が、ほとんど気づかれないほど細められた。
時間がない。
この戦いの最中にリリスが完全に表に出れば、制御の急激な移行と、彼女の回復がまだ不完全である状態が、致命的な隙を生む可能性がある。エターナル・ヴィクターは、それを見逃さないだろう。
ソフィアは重心をわずかに下げ、ここ数合で初めて口を開いた。
「これ以上、長引かせる余裕はありません」
エターナル・ヴィクターが巨大な頭を傾げ、Grinんだまま言った。
「ほう? もう諦めるのか?」
「いいえ」ソフィアの声は静かだったが、その背後の重みは深まった。「終わらせます」
彼女はスターダスト・レインボーを高く掲げた。多彩な刃が、可視光線の範囲を超えた光を放ち始める。いかなる言語にも名のない色彩が刃に沿って咲き誇った。周囲の空間の亀裂は広がるのを止め、代わりに整列し始め、まるでより高次の命令に従っているかのようだった。
【聖技 次元星:虹天】
その名が、静かな宣告のように彼女の唇から零れた。
ソフィアの姿が消えた。
音より速く動いたのではない。
光より速く動いたのでもない。
彼女は、「順序」という概念そのものより速く動いた。
通常の時間の外側に存在する一瞬の間に、彼女は二人の距離を超えた。完全に覚醒したスターダスト・レインボーが、この戦いを終わらせる絶対的な意志を乗せて突き進む。
この聖技は、ただ肉を斬り、エネルギーを破壊するために設計されたものではない。
存在と非存在の境界を断ち切るために設計されたものだった。
通常の抵抗を無視する。
免疫を無視する。
絶対防御を無視する。
対象の継続的な存在を、取り消すことのできる一時的な状態として扱う。
エターナル・ヴィクターの目が見開かれた。
彼は反応できなかった。
本能だけが彼を救った。竜の鱗、奪った神の血、アルゾラの残滓の権能、そして数百万の魂を凝縮して構築された、多重の重なり合う障壁が、必死の防壁となって彼の前に展開された。
スターダスト・レインボーは、最初の障壁を霧のように貫いた。
二枚目はプリズムの破片となって砕けた。
三枚目、四枚目、五枚目が次々と崩落する。
六枚目は、一拍の何分の一にも満たない時間だけ耐えた後、裂けた。
虹の刃の切っ先が、エターナル・ヴィクターの胸に届いた。
沈み込み始める。
完璧な一瞬、必殺の一撃が今にも決まろうとしていた。
その時、ソフィアの魂の奥で脈動が、目もくらむほどの強さで炸裂した。
馴染み深い、純粋な存在の奔流が、彼女の内側から爆発した。
すべてが、闇に落ちた。
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リリス・ノクターンが、目を開けた。
最初に感じたのは、方向感覚の喪失だった。二番目に感じたのは、すでに突きの最中にある剣を握っている奇妙な感触。三番目に感じたのは、わずか数センチ先で自分を見つめ返している、人型と竜が融合した異形の顔——スターダスト・レインボーの切っ先が、すでに彼の胸の外層を貫いている光景だった。
彼女の意識が、追いつこうともがく。
ここはどこだ?
何が起きている?
なぜ体が、強力でありながらどこか遠く感じるのか?
エターナル・ヴィクターの燃える瞳が、彼女の瞳に固定された。
認識の光が、彼の歪んだ顔を過った。
広がりゆく野蛮なGrinには、純粋で愉悦に満ちた悪意が宿っていた。
「おかえり、ノクターン」
リリスがその言葉を処理する前に、彼女が眠っていた体の制御を完全に取り戻す前に、エターナル・ヴィクターの巨大な爪の手が、残酷な平打ちとなって振り抜かれた。
平手が、壊滅的な力で叩き込まれる。
リリスの体が、壊れた人形のように後方へ弾き飛ばされた。彼女は浮遊する瓦礫の島々を次々と突き破り、残っていた都市区画を引き裂き、遠い廃墟へと飛び続け、石と砂塵の爆発とともに激突した。
急激な分離により、スターダスト・レインボーはエターナル・ヴィクターの胸に浅く刺さったまま残された。決定的な瞬間に中断された聖技は、完璧な整合を失い、光を失って消えていく。
エターナル・ヴィクターは手を伸ばし、虹の刃を引き抜き、放り捨てた。胸の傷はほとんど即座に塞がり、黒と真紅のエネルギーが、傷など最初から存在しなかったかのように縫合していく。
彼は頭を大きく後ろに反らし、笑った——大きく、勝利に満ち、純粋な喜悦に溢れた笑い声だった。
「戻ってきたぞ!」彼は咆哮し、空に広がる次元の亀裂を背景に両腕を大きく広げた。「本物のノクターンが、やっと目を覚ました! お前たち全員、絶望しろ! 本家が現れた今、お前たちの終わりだ!」
戦場の遠方で、一行が純粋な衝撃に顔を強張らせた。
最初に我に返ったのは、セラフィエルだった。
「リリス!」
彼女は六枚の翼を広げ、金色の彗星のように前方へ飛び出し、リリスが激突した遠い砂塵の雲へと疾走した。
エレンディールの顔が青ざめた。「タイミングが……ソフィアがあの一撃で終わらせようとしていた」
ヴァラクが拳を握りしめた。「あの野郎、彼女が表に出る正確な瞬間を待っていた」
グレンダの声が、心配で張りつめていた。「リリスはつい今しがた目を覚ましたばかりよ。あんな相手とすぐに戦える状態じゃない」
エターナル・ヴィクターが、リリスが飛ばされた方向へ燃える視線を向け、なおも笑っていた。
「さあ来い、最後のノクターン」彼は呼びかけた。声は砕かれた次元を超えて響き渡る。「私を待たせすぎた。何世紀も前に、お前の一族が始めたことを、ここで終わらせよう」
遠い瓦礫のクレーターの中で、細い人影が、砂塵と砕けた石の中からゆっくりと体を起こした。
リリス・ノクターンは、目を覚ました。
そして、戦いの真の最終局面が、今、始まろうとしていた。




