表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
82/91

第82章:魔王の遊び時間

 地下の間が激しく震えた。まるで大地そのものが、今この場に生まれた存在の気配に怯えているかのようだった。天井のひび割れた部分から埃が降り注ぐ。リリスの浮遊する体の下にある巨大な儀式の円が、病的な紫と深紅の光を脈動させ、廃墟にグロテスクな影を落としていた。一百の上位悪魔がエレンディア、ヴァラク、グランダを完璧な円で取り囲み、血に飢えた瞳を輝かせていた。しかし、本当の恐怖は悪魔の軍勢ではなかった。


 それは、儀式の核の上で浮かぶ影だった。


 リリス・ノクターンの体が、体重を失ったように浮遊し、長い銀白色の髪が生き物のようにうねりながら舞っていた。かつて輝いていた紅色の瞳は、今や紫と黒の銀河が渦巻くように燃えていた。仲間を守るために必死に戦ってきた優しく強い少女は、もうそこにはいなかった。その代わりにいたのは、古きもの。永劫の時を待ち続け、ようやく解放された存在だった。


 アルゾラ・ブラッドスターが微笑んだ。


 それはリリスの笑みではなかった。冷たく、古く、無限に残酷な何かだった。


「ふむ……」第一魔王は、リリスの柔らかな響きと純粋な悪の低く唸る声が重なった声で言った。「これはこれは、なかなか面白い集まりだな。壊れかけた天使、落ちぶれた至高悪魔、そしてまだ英雄ごっこを続けている古いエルフ。実に……可愛らしい。」


 彼はリリスの腕を、長い眠りから目覚めたかのように、のんびりと伸ばした。その動作だけで、間の空気が衝撃波を起こした。壁に蜘蛛の巣状の亀裂が広がる。百体の上位悪魔の一部が、思わず身をすくめた。


 ヴァラクが最初に動いた。彼は咆哮を上げ、前方に飛び出し、体を完全な悪魔形態へと変えた。黒い角が頭から生え、肌が黒曜石のように変わり、爪が刃のように伸びた。


「この野郎! 彼女の体から出ろ!」


 彼は山を両断するほどの力で拳を振り下ろした。


 アルゾラは目を瞬かせもしなかった。


 ただ、繊細な指を一本だけ掲げた。


 地面から純粋な闇の壁が噴き出した。ヴァラクの拳が雷鳴のような音を立ててぶつかった。衝撃で彼は吹き飛ばされ、二本の柱を突き破った。血が口から噴き出し、地面に激しく叩きつけられた。


 グランダの目が恐怖で大きく見開かれた。「ヴァラク!」


 エレンディアの手が杖に力強く握りしめられた。彼でさえ顔色を失っていた。「あの力……ただの一部じゃない。本物だ。彼は我々を玩具にしている。」


 アルゾラが笑った。その声は不自然に響き渡った。「玩具? ああ、親愛なる古いエルフよ。私はまだ本気で遊び始めてもいないのに。」


 彼はゆっくりと降下し、リリスの素足が儀式の円に触れた瞬間、周囲の地面が黒く変色し、腐り始めた。死の花がひび割れから咲き誇った——黒い薔薇が、毒々しい体液を滴らせながら。


 百体の上位悪魔が落ち着きなく動いた。一部は新しい主の力を感じ取り、にやりと笑い始めた。他の一部は……明らかに緊張していた。


 アルゾラは彼らを、飼い犬を見る王のように見下ろした。


「喰らえ」と彼はただ言った。


 悪魔たちが咆哮を上げ、突進した。


 混沌が爆発した。


 上位悪魔たちが四方八方から同時に攻撃してきた。暗黒エネルギーの光線を放つ者もいれば、血と影の刃を召喚する者もいた。魂を貪る術を試みる者さえいた。間は破壊の渦となった。


 エレンディアが最初に動いた。杖を地面に叩きつけた。


【絶対崩壊】


 集団の周囲の空気が激しく圧縮された。数十体の悪魔が突進中に押し潰され、体が紙のように折り畳まれた。骨が折れ、悲鳴が響いた。しかし倒れた悪魔の代わりに、三体が新たに押し寄せてきた。


 ヴァラクは咆哮を上げ、体を起こし、口の血を拭った。「グランダ! 結界を! 今だ!」


 グランダは杖を掲げ、銀色のルーンが輝いた。


【永劫の守護】


 純粋な銀色の光のドームが爆発的に広がり、三人を守った。悪魔たちが四方からぶつかってくる。爪が擦れ、牙が噛みつく。結界が軋み、悲鳴を上げた。


 しかしアルゾラはただ、腕を後ろで組んだまま、劇の観客のように眺めていた。


「惨めだな」と彼は呟いた。「これが現代の時代が誇る最高の力か? 私を封印した者たちから、もっと期待していたのに。」


 彼は指を鳴らした。


 上位悪魔の一体——四本の腕と燃える角を持つ巨漢——が突然、同胞に向きを変えた。目が不自然な紫色に輝いていた。彼は狂ったように笑いながら仲間を切り裂き始めた。


 別の悪魔の影が生き物のように動き、主を絞め殺した。


 三体目は体内から爆発し、血が沸騰した。


 アルゾラが彼らを操っていた。


「ほら見ろ?」彼は会話調で言い、悪魔の血の池をまるで何でもないかのように軽やかに跨ぎながら進んだ。「お前たちの敵ですら、本当はお前たちのものではない。私は彼らを踊らせることができる。歌わせることができる。私の気晴らしのために互いに殺し合わせることができる。」


 グランダの顔が怒りで青ざめた。「あなたは……本気で戦ってさえいない。ただ……遊んでいるだけだ。」


 アルゾラの笑みが広がった。それは美しく、同時に恐ろしい笑みだった。


「当然だよ、小さなエルフよ。私は二十万年以上も封印されていたんだぞ。それがどれだけ退屈だったか、君にわかるか? せめて、存在を消し去る前に少しは楽しませてくれ。」


 彼は片手を掲げた。


【悪夢の開花】


 結界の下の地面から黒い花が爆発的に生え広がった。信じられない速度で成長し、棘が鞭のように飛び出した。それらが銀色のドームを貫いた。グランダが悲鳴を上げ、棘が頰を掠めた。切り傷が魂の毒で焼けた。


 エレンディアが即座に反応した。


【重力特異点 ― ミニチュアブラックホール】


 空間そのものを集団の前で圧縮した。花々と数体の悪魔が小さな、叫ぶような渦に吸い込まれ、無に潰された。しかしその代償は大きかった。鼻から血が滴り、膝がわずかに崩れた。


 アルゾラがゆっくりと、嘲るように拍手した。


「素晴らしい、老人。まだその可愛い重力の小細工を使っているのか。君の祖先が初めてそれを開発したときのことを思い出すよ。彼らはそれで私をも封じ込められると本気で思っていた。実に愛らしい。」


 彼が消えた。


 一瞬前まで儀式の中心に立っていたはずの彼が、次の瞬間にはエレンディアの目の前にいた。


 老エルフの目が大きく見開かれた。


 アルゾラは手を伸ばし、リリスの指で優しくエレンディアの額を突いた。


 その一突きで、エレンディアは隕石に打たれたかのように吹き飛ばされた。三本の柱を突き破り、遠くの壁にめり込んだ。咳き込みながら血を吐き、杖が床に落ちた。


「遅すぎる」とアルゾラは甘く言った。


 ヴァラクが再び咆哮を上げて突進した。今度は全身から黒い炎を爆発させ、【地獄の劫火】を放った。数十体の残った上位悪魔が一瞬で焼き尽くされ、石の壁が溶け始めたほどの熱量だった。


 アルゾラはただ、その炎の中を歩いた。


 炎は彼を恐れて、まるで道を空けるかのように分かれた。


 彼は二歩でヴァラクに到達し、至高悪魔の喉を掴んで、 effortless に地面から持ち上げた。ヴァラクの脚が無力にばたつき、爪がアルゾラの腕を引っ掻いたが、傷一つつけられなかった。


「なあ」とアルゾラは会話調で言った。「昔、私にペットのドラゴンがいたんだ。大きくて、嫌らしい奴で、物を焼くのが大好きだった。お前は彼を思い出させる。吠えるばかりで、噛みつく力がない。」


 彼は握りしめた。


 ヴァラクの目が飛び出し、骨が軋んだ。


 グランダが叫び、魂魔法の嵐を放った。


【浄化の千刃】


 数百本の輝く銀の刃が現れ、アルゾラに雨のように降り注いだ。


 第一魔王は見向きもしなかった。


 ただ手を軽く振っただけで、すべての刃が方向を逆転し、今度はグランダに向かって飛んだ。彼女はかろうじて結界を張った。刃が嵐のようにぶつかり、盾にひびが入った。


 アルゾラはヴァラクを壊れた玩具のように投げ捨てた。至高悪魔は地面に激しく叩きつけられ、血を吐いた。


 間は今や純粋な混沌だった。


 残った上位悪魔たちはアルゾラの影響下で互いに戦い合っていた。自分の影に飲み込まれ恐怖の叫びを上げる者もいれば、狂った笑みを浮かべて仲間を切り裂く者もいた。儀式の円はまだ活動を続け、上空から最後の収穫された魂を吸い込んでいた。地面が裂け、溶岩のような悪魔のエネルギーがひび割れから染み出していた。


 アルゾラは再び三人の戦士に視線を向けた。


 リリスの腕を広げた。


「楽しくしようじゃないか。君たち三人にチャンスをあげる。全力でかかってこい。私はすぐに殺したりはしない。どれだけ持つか見たいんだ。退屈するまで。」


 彼の笑みが残酷なものに変わった。


「なぜなら、私が退屈したら……本当の悪夢が始まるからだ。」


 エレンディアは体を起こし、口から血を滴らせながら杖を拾った。手が震えていた。


 ヴァラクも体を起こし、体に弱々しく炎を纏わせた。


 グランダは頰の血を拭い、瞳に決意を宿した。


 三人は顔を見合わせた。


 言葉は必要なかった。


 彼らは同時に攻撃した。


 エレンディアは知る限り最強の重力術式——【特異点ノヴァ】を放ち、アルゾラの周囲の空間全体を crushing な一点に圧縮した。


 ヴァラクは残ったすべての力を【悪魔的劫火】に注ぎ、黒い炎と魂を貪るエネルギーの波を放った。


 グランダは最後の魂の魔法を【永劫の浄化】に注ぎ、悪魔の存在を消し去るための純粋な銀の光のビームを放った。


 三つの攻撃が同時にアルゾラにぶつかった。


 爆発が街全体を揺るがした。


 地下の間の天井がひび割れ、崩壊し始めた。家ほどの大きさの石の塊が雨のように降り注ぐ。埃と煙が空気を満たした。残った悪魔たちは爆風に飲み込まれ消滅した。


 一瞬、静寂が訪れた。


 煙が晴れる。


 アルゾラは全く同じ場所に立っていた。傷一つなく、リリスの体に傷一つついていなかった。彼は動いてさえいなかった。


 彼は肩の埃を払うような仕草をした。


「それだけか?」彼はほとんど失望したように言った。「君たちの全力を見せてもらったというのに、それがすべてなのか?」


 彼は笑った。その声は美しく、同時に全く恐ろしかった。


「では、私の番だ。」


 彼は片手を掲げた。


 間全体がねじれ、歪み始めた。現実そのものが彼の指の周りで曲がった。


「【悪夢領域 ― 絶対絶望】」


 周囲の世界がガラスのように砕けた。


 突然、彼らはもう間の内にはいなかった。


 果てしない虚無に立っていた。叫ぶ魂で満ちた虚無。空は血の色に染まり、地面は蠢く体でできていた。遠くに、ねじ曲がった自分たちの過去が見えた——失敗、死、失った人々。


 グランダは再び村が燃えるのを見た。


 ヴァラクは裏切られる自分を笑う旧主を見た。


 エレンディアは、何百年もの間救えなかった人々の顔を見た。


 アルゾラの声がどこからともなく響いた。


「私の遊び場へようこそ。ここでは、君たちの最悪の記憶が現実になる。最大の恐怖に牙が生える。そして私……私は君たちが壊れるのを見る。」


 三人の戦士は背中を合わせ、恐怖に取り囲まれていた。


 アルゾラは彼らの上に浮かび、まだリリスの顔を借り、恐ろしい笑みを浮かべていた。


「ゆっくりするといい」と彼は遊び心たっぷりに言った。「我々には永遠の時間がある。」


 街の上空で、儀式の円が頂点に達した。


 空が裂けた。


 そして、太古の何かが動き始めた。


(続く……)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ