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第47章:召喚された宿敵たち ― 天使と魔族

 北の平原に朝の光が差し込む頃、空は淡く、容赦のない色合いを帯びていた。

 霜に覆われた大地を、薄い金色のベールがわずかに照らすだけ。

 俺はキャンプから少し離れた広い空き地に一人で立ち、黒いブーツの下で雪を軽く踏みしめていた。

 馬車は近くに停められ、魔法のルーンが淡く輝いて車内を暖かく保っている。

 ミラはまだ毛皮の山の中に丸まって眠り、ふわふわの尻尾を自分の体に巻きつけて毛布代わりにしていた。

 エレンディルは次の道のりを偵察に行っており、古代のレイラインと不安定な魔力の流れについてぶつぶつと呟きながら姿を消していた。


 今が、絶好の機会だった。


 昨夜はほとんど眠れなかった。

【大召喚】を獲得した衝撃が、魂の中で新しい筋肉のように疼いていた。

 そのスキルは生きているように感じられた――異界への扉であり、力と可能性を繋ぐ橋。

 賢者は危険だと警告していた。召喚された存在たちは敬意と捧げ物と強さを要求すると。

 しかしこれまで戦ってきた深紅黒王、ゾラス、ヴァロリアの政治……すべてを乗り越えてきた今、俺は自分がどれほどの力を手にしているのか、実際に確かめたかった。


 俺は右手を空に向かって掲げ、掌を開き、指を広げた。

 冷たい風に長い雪白色の髪が揺れる中、至高の吸血鬼に相応しい威厳を込めて、はっきりと声を出した。


「来れ……【大召喚】」


 世界が応えた。


 俺の目の前の地面に、直径十メートルもの巨大なルーン陣が輝きながら浮かび上がった。

 深紅と黄金の光が回転し、円陣に触れた雪が一瞬で溶けて蒸気が立ち上る。

 空気が濃密な魔力で震え、肌がビリビリと痺れた。

 そして、信じがたいことに、その隣にもう一つ、同じ大きさと輝きを持つ円陣が現れた。

 二重召喚の衝撃は凄まじく、地面に亀裂が走り、空が暗くなり、太陽そのものが挑戦を受けているかのようだった。


 賢者が即座に俺の傍らに顕現し、紫の瞳を大きく見開いた。


『主よ……同時二体召喚ですか? エレンディルですら全盛期で一体が限界だったはずです。これは……前例のないことです』


 答える暇はなかった。

 二つの円陣がさらに強く輝き、光がまぶしすぎて思わず目を細めた。

 白金色の柱と、深紅黒の柱が同時に天へ突き刺さる。地面が激しく揺れ、風が咆哮した。


 光がようやく収まった時、そこに二つの存在が立っていた。


 左側にいたのは大天使だった。


 彼女は息を飲むほど美しかった。身長は優に二メートルを超え、六枚の純白の翼が金色の縁取りを輝かせ、雪の上に降り注ぐ陽光のようにきらめいている。

 神々しい白金とサファイアの鎧が、完璧で幽玄な美しさを誇る体躯を包んでいた。

 背中まで流れる長い金髪は液状の陽光のようで、高い頰骨、豊かな唇、そして溶けたサファイアのような瞳が、慈悲と揺るぎない正義を放っていた。

 頭上には柔らかな黄金の輪が浮かび、手には純粋な光の槍を握っている。

 彼女の存在だけで、空気が清浄になり、雪がより白く輝いて見えた。


 右側にいたのは上位魔族だった。


 彼は生々しく、恐ろしいまでの力を体現していた。

 身長は三メートル近く、黒曜石のような肌に赤いルーンが溶岩のように脈打っている。

 額からは巨大な湾曲した角が生え、背中には鋭い刃のような革の翼が広がっていた。

 筋肉質の体躯は影を固めたような黒い板金鎧に包まれ、瞳は地獄の業火を宿している。

 肩に担いだ黒曜石の大剣からは、虚空のエネルギーが淡く滴り落ちていた。

 そのオーラは圧倒的で、原始的で、抑えきれない暴力に満ちていた。彼が立つだけで、周囲の雪が蒸気となって溶けていた。


 二つの存在は、即座に視線を交わした。


 大天使の表情が、穏やかな美しさから純粋な嫌悪へと変わった。


「魔族の穢れめ」

 鈴のような声が、聖なる怒りを帯びて響いた。「主権者の御前で、鎖も繋がれずに立つなど、許されざることだ」


 上位魔族は短剣のような牙を剥き、地面を震わせる低い唸り声を上げた。


「天使の売女が。相変わらず偽りの光の後ろに隠れて正義ぶるのが好きだな。お前の綺麗な翼を引きちぎって、戦利品にしてやる」


 二人は同時に動いた。


 大天使が光の槍を突き出し、純粋な聖光の光線を放つ。

 上位魔族が大剣を振り回し、黒い業火の波を解き放つ。二つの力が激突し、爆発的な衝撃波が五十メートル四方の雪を一気に吹き飛ばした。俺は思わず一歩後ずさった。


「やめろ!」

 俺は手を掲げて叫んだ。「俺が両方召喚したんだ! 下がれ!」


 しかし二人は完全に無視し、互いに円を描きながら、創造の黎明から続く宿敵同士のように睨み合っていた。


 大天使が優雅に翼を打ち、天高く舞い上がり、聖なる炎の矢を雨のように降らせる。

 魔族は咆哮を上げ、信じがたい速度で跳躍し、大剣で攻撃を切り裂きながら、光そのものを消し去る虚空の斬撃を放った。


 まるで二匹の闘犬が、十年越しの恨みを晴らすかのように吠え合い、嚙みついているようだった。

 戦略も連携もなく、ただ純粋で、原始的な天使と魔族の憎悪だけがそこにあった。


 俺は腕を組み、頭痛を抑えながら立ち尽くした。


「……これは、俺が想像していたのと全然違うんだが」


 賢者が俺の傍らに現れ、珍しく信じられないといった表情と、感心したような微笑みを浮かべた。


『主よ……これは extraordinary です。一度の召喚で二体を同時に呼び出しただけでなく、大天使――神々の階級に匹敵する頂点級の存在――と、それと同格の上位魔族を……。二体の戦闘力は桁違いです。私でさえ、初回でここまでの成功を予想していませんでした』


 先に偵察に行っていたエレンディルが、慌てた様子で駆け戻ってきた。彼は現場を見て目を大きく見開き、滑るように足を止めた。


「これは凍てついた地獄で何が起きている!?」

 高位エルフが叫んだ。「二体同時召喚だと? 大天使と上位魔族を同時に? 聖者級以下では不可能なはずだぞ! どうやって――!?」


 大天使と魔族は彼のことも無視し、空中で聖光と業火を激突させ続け、爆発が周囲を照らし上げていた。


 俺は鼻根を指で押さえた。


「もういい! 二人とも! 俺がお前たちの召喚主だ。下がれ。俺が命じない限り戦うな。わかったな!?」


 二つの存在はようやく空中で動きを止め、互いに殺意のこもった視線を交わした後、ゆっくりと地面に降り立った。

 互いに十分な距離を取って。


 大天使がまず口を開いた。旋律のような、しかし威厳に満ちた声で。


「私は第三合唱団の大天使、セラフィエルだ。深紅の主権者よ、あなたの呼び声に応じた。しかし、この穢れと並んで立つつもりはない」


 魔族は牙を剥き、嘲るように笑った。


「俺は第七深淵の主、ヴァラクだ。力と魂を求めて来たのであって、羽根の生えた堅物と戦場を共有するためじゃない」


 俺はため息をつき、こめかみを揉んだ。


「これは……かなり面倒なことになったな」


 賢者が一歩前に出て、わずかに空気を落ち着かせた。


「主よ、【大召喚】による魂の絆はまだ形成途中です。彼らは最終的にあなたに従いますが、天使と魔族の性質は根本的に対立しています。創造の始まりから憎み合ってきた存在同士です。協力させるには、時間と捧げ物、そしてあなた自身の権威の成長が必要です」


 エレンディルは二体の召喚存在を、畏怖と恐怖が入り混じった目で見つめていた。


「お前……本当にやってのけたのか。一度の試みで二体の頂点級存在を。まだお前と彼らの間には大きな力の差があるが、呼び出されたこと自体が、お前の魂がすでに彼らを支配できるほど強くなっている証拠だ。これは……すべてを変えるぞ」


 ミラが馬車から顔を出し、目を丸くして言った。


「リリスお姉ちゃん……あれが新しいお友達? 天使のお姉さんはすごくきれいだけど……大きい怖い方はすごく怖そう……」


 ヴァラクが彼女を睨み、セラフィエルは子供を見てわずかに表情を和らげた。


 俺は手を振り、なんとか主導権を取り戻そうとした。


「二人とも。下がれ。今はお前たちは俺に仕えている。俺が命じない限り、戦うな。わかったな?」


 大天使は渋々頭を下げた。


「……仰せの通りに、主権者よ」


 魔族は腕を組み、にやりと笑った。


「今はな」


 俺はゆっくりと息を吐いた。

 これは慣れるのに時間がかかりそうだ。


 しかし、目の前に立つ二体の強大な存在――大天使と上位魔族――を見ていると、興奮と責任の重さが同時に胸に込み上げてきた。


 フロストヘイヴンを出発し、死の円錐山へと向かう道は、急にずっと面白く、そしてずっと危険なものになった。


 不可能は、もう少しだけ不可能ではなくなりつつあった。

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