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第33章:戦いの余波

 瓦礫の山となったかつての壮麗なクロウ邸は、倒れた巨人の骸のように広がっていた。

 夜空へとゆるやかに立ち上る煙は、焦げた大理石と業火の残滓、そして血の生臭さを運んでくる。

 かつて富と権力と腐敗の象徴だった豪奢な屋敷は、今や巨大なクレーターと化し、折れた柱、砕けたクリスタルのシャンデリア、金色の像の残骸だけが無惨に散らばっていた。


 その破壊の中心で、俺は大きな瓦礫に腰を下ろしていた。

 肘を膝に置き、長い雪白色の髪を肩に垂らして、まるで喪服のように。

 膝の上には【夜の嘆き】が横たわり、刃はまだ残滓の力を淡く輝かせている。

 深紅の戦闘ドレスは引き裂かれ、自身の血で染まっていたが、胸の傷は【絶対生命支配】と【真・進化支配】が連携してゆっくりと塞がりつつあった。


 世界は……重かった。


 トラックに轢かれ、森で生き延び、至高の吸血鬼へと進化し、魂の融合を果たした後も、この世界は変わらない。

 残酷で、腐敗していて、苛烈だ。

 どんな魔法も、どんな大冒険も、圧倒的な力さえも、この根本的な真実を変えることはできない。

 力ある者は常に陰謀を巡らし、強者は常に新たに芽生える者を潰そうとする。

 何度転生し、何度進化しようと、同じ問題が影のように俺に付きまとう。


 俺は長く、疲れきった息を吐き、数メートル先で横たわるクロウ男爵の無残な死体を見つめた。

 目は永遠の驚愕に開いたまま、口は無言の悲鳴を凍りつかせている。

 暗殺者を使い、上位魔族を呼び、政治的な策を弄し、俺を殺そうとした男は、最後には自分が最も嫌っていた卑怯者の姿で死んだ。


(……本当に、価値があったのか?)

 この力の全てを……それでも、前の人生で憎んでいた同じような汚物ばかりを掃除している。


 永劫主権賢者――真の姿で顕現した第五世代賢者――は、俺の傍らに守るように立っていた。

 腕の中にはエリシアの小さな輝く魂が優しく抱かれ、少女の魂は疲れきった様子ながらも安堵の表情を浮かべ、賢者のローブを小さな手で握りしめていた。


 最初に駆けつけたのはセラフィナだった。


 彼女は白銀教団の騎士と魔導士の一隊を率いて、外壁の残骸を突き破るように現れた。聖剣を抜き放ち、光を放ちながら。

 クレーターと、死んだ男爵と、散らばる教団員の死体、そして傷だらけながら生きている俺を見た瞬間、彼女は滑るように足を止め、目を見開いた。安堵と恐怖が混じり合った表情だった。


「リリス!」


 彼女は駆け寄り、俺の前に片膝をついて傷を素早く確認した。


「ここで何があったの!? 怪我は!? あの魔族――ゾラスはどこ!? それに……あなたの傍らにいるこの霊は誰!?」


 後ろの騎士たちは武器を構えながら広がり、呆然と破壊の光景を見つめていた。一人が小さく呟く。


「……一夜で、屋敷全体が……」


 俺は疲れたが、まだ力を宿した紅い瞳をセラフィナに向けた。

 答えようとしたその時、馬車の車輪の音と馬の蹄の響きが夜を切り裂いた。


 王家の紋章が刻まれた豪奢な黒い馬車が瓦礫の端に停まり、中から派手な金と紫の衣装を纏った赤髪の貴族が降り立った。

 貴族街で影響力の強い公爵、ハーラン・ヴォスだ。クロウ男爵の盟友として知られる男である。

 彼は現場を見て顔を真っ赤にし、怒りに震えながら俺を指差した。


「お前だ! リリス・ノクターン! 何をした!? クロウ邸全体を破壊し、男爵エリアス・クロウを冷血に殺害したな! 貴族街を怪物のように暴れ回り、今は無実を装って廃墟に座っているのか!?」


 声が瓦礫全体に響き渡り、鋭く非難に満ちていた。


「正義を求めよう! この吸血鬼は度が過ぎた! 尊敬すべき貴族を殺し、罪を隠蔽するために家を壊し、王都に魔族を呼び寄せかけた! なぜあの魔族に死ななかった!? お前のような存在は混沌しか生まない!」


 その言葉は頰を張られたように痛かった。


 俺は最初、何も言わなかった。

 拳を強く握りしめすぎて、新たな血が掌から滴り落ち、瓦礫を濡らす。

 先ほど抑え込んでいた怒りが、再び火山のように噴き上がってきた。

 オーラが漏れ始める――重く、息苦しく、血族を脅かされた至高の吸血鬼の原始的な憤怒に満ちて。


 セラフィナが守るように俺の前に立った。


「ヴォス公爵、誤解です。クロウ男爵が――」


「誤解だと!?」

 公爵が唸る。「俺が見ているのは、貴族の屋敷の廃墟に座り、死体の足元にいる吸血鬼だけだ! 即座に処刑すべき叛逆罪だ!」


 俺はゆっくりと立ち上がった。背中の翼が微かに震える。

 空気が冷たくなった。セラフィナの後ろの騎士たちが本能的に一歩下がる。


(もう一言……もう一言だけ……)


 その瞬間――


 **パンッ!**


 乾いた音が廃墟に響き渡った。

 ヴォス公爵は人形のように吹き飛び、数本の折れた木をへし折り、芝生を転がり、倒れた柱に激突した。

 口から血を噴き、呆然と呻きながら地面に倒れ込む。


 第五世代賢者がそこに立ち、手をまだ上げたままだった。

 もう片方の腕でエリシアの魂を優しく抱いたまま、力の全てを使ったわけでもないのに、公爵は数十メートルも飛ばされていた。


 彼女の声が、氷の刃のように夜を切り裂いた。


「もう十分だ」


 紫の瞳が古代の威厳を放ち、騎士たち、魔導士たち、セラフィナ、そして呻く公爵に向かって語りかける。


「私は第五世代賢者――血蝕の時代より受け継がれた大賢者の称号を持つ者。この王国が興亡する様を何世紀も見てきた。クロウ男爵のような貴族が触れるもの全てを腐らせるのを。

 王が躊躇する間に無辜の民が苦しむのを。そして、我が主が犯してもいない罪で責められるのを、黙って見過ごすつもりはない」


 声がさらに冷たく、厳しくなる。五世代の叡智と悲しみの重みを帯びて。


「クロウ男爵は王都に上位魔族を召喚し、暗殺者を雇い、王冠に対する叛逆を企てた。何千もの命を己の野心のために危険に晒した。

 リリス・ノクターンは自らとこの王国を守っただけだ。

 もしもう一度彼女を責める者がいるなら……彼女がただ死ねば良かったなどと言う者がいるなら……」


 彼女は自由な手を掲げた。

 黄金の光が集まり、純粋なる概念魔術の球体を形成する。空気自体が震えた。


「……お前の血族ごと、歴史から抹消してやる。魂すら残さず、慈悲を乞うこともできぬように」


 その場は死のような静寂に包まれた。


 地面に倒れたヴォス公爵は、折れた鼻から血を滴らせながら、純粋な恐怖の目で彼女を見上げていた。


 セラフィナは俺と賢者の間を行き来し、驚嘆と理解の色を浮かべた。


「では……あなたがリリスが話していた魂の存在……彼女の魂に宿る者なのですね」


 賢者は優雅に頷き、俺に向かって穏やかな微笑みを浮かべた。


「ええ。そして私は常に我が主を――そして彼女が宿す子の体を守り続けるわ」


 エリシアの小さな魂が、信頼に満ちた大きな目で賢者を見上げ、それから俺を見た。


 俺はようやく拳を緩め、漏れ出ていたオーラを収めた。

 歩み寄ってエリシアの魂を自分の腕の中に優しく抱き、胸にその温もりを感じた。


「ありがとう……二人とも」

 俺は小さく囁いた。


 セラフィナが剣を鞘に納め、近づいてくる。


「すぐに国王に報告しなければ。クロウ男爵の死と魔族召喚の証拠があれば、貴族街は大混乱になるでしょう。でも……リリス、大丈夫?」


 俺は周囲の破壊――廃墟となった屋敷、死んだ男爵、貴族街の遠くでまだ燃える炎――を見回した。


「……疲れた」

 初めて、俺の王族らしい声が柔らかくなった。「この世界は美しく、魔法に満ち、冒険に溢れている。

 でも、やはり残酷で、腐敗していて、苛烈だ。この力を持っていても……前の人生と同じ問題にぶつかり続ける。

 ただ存在しているだけで、俺を殺したがる者たちに」


 セラフィナが俺の肩に手を置いた。


「もう一人で戦わなくてもいいのよ」


 賢者も同意するように頷いた。


「その通り。私たち三人――あなたとエリシアと私――は今、一つになったのだから」


 遠くで、さらに多くの白銀教団の兵士と王家の使者が到着した。

 国王は詳細な報告を求めるだろう。貴族街は説明を要求する。調査が始まる。


 しかし今夜、差し迫った脅威は去った。


 クロウ男爵は死んだ。

 ゾラスは封印された。

 そして俺、リリス・ノクターン――至高の吸血鬼、永劫主権者は――

 この苛烈で美しい世界で、また一日を生き延びた。


 俺は夜空を見上げた。

 廃墟の上に、星々が明るく輝いている。


(いつか……本当に、望んでいた平穏な人生を見つけられるかもしれない)


 でもそれまでは――


 戦い続ける。


 エリシアのために。

 賢者のために。

 血族のために。

 そして与えられた二度目の機会のために。

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