第30章:深紅の清算 クロウ家崩壊
玉座の間から私は荒々しく飛び出した。壊れた扉がまだ蝶番から歪にぶら下がっていた。長い雪白色の髪が彗星の尾のように背後になびき、深紅の瞳は燃え尽きぬ怒りにぎらついていた。王宮の衛兵や貴族たちは、刃の前に割れる水のように道を空けた。誰も声を上げなかった。誰も私を止めようとしなかった。
中庭に出た瞬間、背中から巨大な深紅と黒の翼が雷鳴のような音を立てて展開した。全長八メートルを超える翼が、王宮の敷地に暗い影を落とした。
セラフィナが後ろから必死に駆け出してきた。
「リリス! 待って! やめて! 王様は正式な逮捕を命じられたのよ——」
私は待たなかった。
翼を一振りしただけで、私は深紅の矢となって空へ舞い上がった。超音速に達した瞬間、周囲の空気が爆ぜ、目に見える衝撃波が王宮の窓をガタガタと震わせた。下界のヴァロリアが光と色の筋になって流れていく。私の標的は明白だった——エリアス・クロウ男爵の、自我の塊のような巨大屋敷。
セラフィナは中庭の端まで走り、私の消えゆく影に向かって手を伸ばした。
「リリス……!」
ヴェスペラ長老が彼女の傍らに現れ、優しくも力強い手で聖騎士の肩を掴んだ。古代の吸血鬼の表情は厳粛そのものだった。
「放っておきなさい、騎士団長。あの位の吸血鬼が『殺す』と決めた相手は……何も止められません。力でも、法でも、道徳さえも。このレベルの力を持つ者が、血統や自らの存在を脅かされたとき、脅威は完全に抹消されます。それが我々の本質——特に上位統治者の。それが本当の吸血鬼です。暴走は避けられましたが、血の渇きは残っています。クロウ男爵は魔族を召喚した瞬間、自らの死刑執行書にサインをしたのです」
セラフィナの顔から血の気が引いた。
「でも……彼女は犯罪者になってしまいます。王様が——」
ヴェスペラはゆっくり首を振った。
「王国や王冠を超えるものもあるのです。吸血鬼にとって、血が復讐を求めるとき……我々は応えるのです」
——
私は神の裁きのようにクロウ邸に突入した。
ドオオオオオオンッ!!!
最後の瞬間で翼を畳み、主屋の屋根を突き破って、数時間前に男爵と対面したあの豪奢な応接間へと一直線に落下した。大理石と水晶が爆散し、破片のシャワーが降り注ぐ。使用人たちが悲鳴を上げて逃げ惑い、衛兵たちが武器を構えて殺到してきた。
私は瓦礫の中心に降り立ち、翼を半ば広げ、すでに剣を抜いていた。純粋な捕食者の怒りが津波のようにオーラとなって広がった。
応接間の奥に、エリアス・クロウ男爵が精鋭のボディガードたちに囲まれて立っていた。彼の顔は死人のように青白かった。先ほどの傲慢で計算高い貴族の顔は消え、震える男だけが残っていた。彼はようやく、自分が何を呼び覚ましたのかを理解したのだ。
「お前……」男爵は声を震わせて呟いた。
私はゆっくりと歩み寄った。一歩ごとに、すでに傷ついた床がさらにひび割れる。深紅の瞳が、獲物を狙う捕食者のように男爵を捉えた。
「エリアス・クロウ男爵。あなたは重大な過ちを犯したわ。暗殺者の雇い入れ、王冠への裏切り、王都の中心に上位魔族を召喚してまで私を殺そうとしたこと。あなたの罪、腐敗、傲慢さ……すべてに対して、私は死刑を宣告する」
男爵は後ずさり、高価な花瓶を倒した。
「衛兵ども! 殺せ! 今すぐ殺せ!」
二十人の精鋭衛兵が剣と魔法を閃かせて突進してきた。
私は速度を落とさなかった。
支配の糸・即時麻痺。
黒い糸が全方位に爆発的に広がった。全員の動きがピタリと止まり、恐怖に見開かれた目だけが私を見つめていた。身体は完全にロックされ、彫像のようにその場に崩れ落ちる。
私は『夜の嘆き』を構えたまま、ゆっくりと男爵へ歩み寄った。刃は飢えた深紅のルーンを輝かせていた。
クロウは膝を折り、両手を上げて必死に懇願した。
「待て! お願いだ! 金ならいくらでも出す! 何でもやる! 爵位でも領地でも——望むものを言え! 私が悪かった! 私が——」
私は剣を高々と振り上げた。血統ごと終わらせる意志が刃に満ちていた。
「さようなら、男爵」
剣が弧を描いて振り下ろされようとしたその瞬間——
シャァァァンッ!
背後から黒い刃が突き出され、私の胸を貫通して心臓を正確に刺し貫いた。
目を見開いた。自分の太古の血が大理石の床に噴き散った。
魂狩りゾラスが背後に立ち、残忍に笑っていた。大剣を柄まで深く埋め、私の背中から胸を突き破っていた。
「心配するな、まだ死んではいない」アークフィーンドは恐怖で凍りつく男爵に向かって笑った。「魂が無事な限り、心臓を潰したくらいでは死なん。単に仮死状態にしただけだ。このまま儀式が終わるまで十分に保つ」
彼は刃を一回転させ、新たな激痛を私に与えてから引き抜いた。私の身体は前のめりに崩れ落ち、翼は力なく垂れ、『夜の嘆き』が床に乾いた音を立てた。
ゾラスは私の白髪を掴み、まるで獲物のように片手で軽々と肩に担いだ。
「さあ行くぞ、男爵。儀式を完了させねばならん。この魂は実に美味そうだ。……それに、彼女がお前を殺しに来ることはわかっていたから助けただけだ。無価値なお前の尻を救ってやったと思え、クロウ」
男爵は膝をついたまま呆然と立ち尽くし、上位魔族が自由な手で黒い渦巻くポータルを開くのを見つめていた。
ゾラスは私の動かない身体を担いだままポータルに足を踏み入れた。
ポータルが音を立てて閉じ、残されたのは静寂と血と、崩壊した屋敷だけだった。
クロウ男爵はゆっくりと立ち上がり、震える手で自分が倒れた場所を見つめていた。
彼は生き延びた。
しかし心の底では、悪夢がまだ始まったばかりだと知っていた。
すべてが暗黒だった。
夜の安らかな闇などではなく、果てしなく息苦しい虚空。私はその中に浮かび、重力を失った意識が辛うじて肉体に繋がっているだけだった。胸の痛みは遠く、まるで鈍い脈動のように感じられた。本来なら白熱した激痛であるはずなのに。ゾラスの刃はまっすぐに心臓を貫いたはずだったが、私はまだ死んでいなかった。
仮死状態……ぼんやりと考える。あのクソ野郎が……
『永遠の統治賢者』の声が、遠い海を越えるような微かな反響として届いた。
【ご主人様……意識を保ってください。魂は無事ですが、魔族の鎖で拘束されています。どこかへ連行されています。儀式の場です。抑圧に抗ってください】
動こうとしたが、手足はタールに沈んだように重かった。翼は反応しない。目を開けることさえ、途方もない努力を要した。霞む視界の中で、動きを感じ取った——魔族ポータルの吐き気を催す渦、硫黄と古血の悪臭。
そのとき、ゾラスの低く勝利に満ちた笑い声が近くで響いた。
「目を覚ませ、小さき統治者よ。自分の生贄を逃すな」
私は無理やり深紅の瞳を開いた。
冷たい黒曜石の祭壇の上に横たわっていた。地下深くに掘られた巨大な円形の部屋。壁一面に輝く赤いルーンが、生きている血管のように脈打っている。祭壇を囲む六本の黒い柱には魔族の印が刻まれていた。純粋な虚空エネルギーの鎖が手首、足首、喉に巻きつき、私の力を抑え込んでいた。『夜の嘆き』は数メートル離れた床に投げ捨てられ、ルーンは暗く沈んでいた。
儀式の円陣の端に、エリアス・クロウ男爵が青ざめて汗だくで立ち、震えるカルト信者二人に囲まれていた。ゾラスは祭壇の傍らに大剣を突き立て、私を見下ろしていた。
「上出来だ」アークフィーンドが唸った。「魂が強い。最高級品だ。これで私はもう一段階昇進できる。男爵よ、報酬は受け取ったぞ」
クロウはゴクリと唾を飲み込んだ。
「ただ……確実に殺してくれ。蘇られたら困る」
ゾラスは再び笑った。
「心配するな。魂を貪り尽くし、身体を我が眷属の器にしてやれば、二度と蘇らん」
激しい怒りが体内を駆け巡り、抑圧をいくらか焼き払った。指がピクリと動いた。虚空の鎖がガチャリと鳴った。
(私を利用するつもり? これまで生き延びてきた私を?)
魂の奥で、エリシアの声が『統治賢者』と共に響いた。小さくも激しい声だった。
『負けないで……私たちはノクターンよ。決して跪かない』
私は持てる限りの意志を集中させた。
真祖進化支配――部分覚醒。
核の奥で力が火花を散らした。右手首の虚空の鎖にヒビが入り始めた。
ゾラスは即座に気づいた。燃える双眸が細められる。
「まだ抵抗するのか? 良い。食事の味が良くなる」
彼は爪の生えた手を掲げた。儀式の円陣が輝きを増した。黒と赤のエネルギーが蛇のように私の身体に絡みつき、魂を引きずり出そうとする。開いた魔族の顎に向かって。
これまで感じたことのない激痛が全身を貫いた。
「うあああああっ——!」
記憶が激しくフラッシュした。トラック、森でのサバイバル、エリシアの両親の死、月明かりの下の幸せな庭、セラフィナの心配そうな顔、王の慎重な眼差し、クロウ男爵の傲慢な笑み。
ここで終わらせはしない。
永遠の統治賢者――全出力!
三日月ペンダントから黄金と深紅の光が爆発した。虚空の鎖が一本ずつ粉砕されていく。私は祭壇の上で無理やり上半身を起こした。胸の傷口から血が滴り落ち、翼が苦痛に耐えながら半ば展開した。
ゾラスの笑みが狂気じみたものに変わった。
「そうだ! 抵抗しろ! 解き放て! その方が魂が美味くなる!」
彼は爪を心臓に向かって突き出してきた。
私は純粋な意志だけで『夜の嘆き』を手に呼び寄せ、迎え撃った。二人の衝突は儀式の部屋全体を滑らせるほどの衝撃を生んだ。ルーンが爆散し、柱にひびが入った。
「お前が……私を……奪うことなど……」私は嗄れたが王族らしい声で唸った。
男爵がカルト信者たちに絶叫した。
「止めろ! 今すぐ殺せ!」
彼らは必死に呪文とナイフを放ってきた。しかし上位吸血鬼の『統治竜の鎧』には全く歯が立たず、跳ね返された。私は振り返りもせずバックハンドで一人を吹き飛ばし、壁に叩きつけて骨の砕ける音を響かせた。
ゾラスは大剣を振り回し、破壊的な弧を描いて攻め立ててきた。一撃ごとに地下室が揺れ、天井から石が落ちてくる。男爵は柱の陰に縮こまり、ようやく自分が制御不能の存在を呼び込んでしまったことを悟っていた。
私はまだ負傷し、抑圧を受けていた。しかし**完全適応**と**真祖進化支配**が猛烈に稼働し、痛みの秒を力に、傷を糧に変えていた。
**太陽主権・内なる夜明け。**
胸の奥で黄金の光が咲き誇り、ゾラスの刃による魔族の腐食を焼き払った。心臓の穴がゆっくりと塞がり始めた。
ゾラスは苛立ちに咆哮した。
「もう遊ぶのは終わりだ!」
大剣を地面に叩きつけ、儀式円陣をフル稼働させた。純粋な虚空エネルギーの巨大な鎖が床から噴き上がり、私の全身を包んで空中に吊り上げた。魂を引きずり出す力が十倍に跳ね上がった。
視界がぼやける。魂が肉体から少しずつ引き剥がされていくのを感じた。
(いや……こんな終わり方では……)
エリシアの声が魂の中で叫んだ。
『戦って! 私たちはこんなものより強い!』
『統治賢者』も続いた。
『ご主人様! 融合スキルを使用してください! 一時的な力を犠牲に、魂の完全解放を!』
私はすべてを集めた——これまで貪ったすべての魂、すべての魔力、怒りと決意の欠片すべてを。
永遠の統治賢者・魂解放――深紅蝕!
血のような赤と黄金の光が身体から爆発的に広がった。虚空の鎖が粉々に砕け散り、儀式円陣が崩壊した。ゾラスは後方へ吹き飛ばされ、遠い壁に激突して石をひび割らせた。
私は片膝をついて床に落ち、荒い息を吐きながらも自由の身となった。
男爵は恐怖に顔を歪めた。
「ありえない……!」
私はゆっくり立ち上がり、翼を完全に広げた。胸の傷はまだ塞がりきっていないが、血が滴り落ちる。深紅の瞳に純粋な殺意を宿して男爵を捉えた。
「エリアス・クロウ男爵……お前の時間は終わったわ」
ゾラスは立ち上がり、口から黒い血を流しながらも笑っていた。
「これは……面白くなってきたな」
地下の部屋はすでに戦場と化していた。
そして私は、もう手加減をするつもりはなかった。
——一方、銀騎士団塔
セラフィナが司令室に飛び込み、顔面蒼白だった。
「団長! リリスが一人でクロウ男爵のところへ向かいました! 上位魔族が絡んでいます——総出動です!」
ヴェスペラ長老が傍らに立ち、厳しい表情で言った。
「統治者は血の渇きに支配されています。早く追いつかないと……今夜、ヴァロリアは貴族街一つを失うかもしれません」
王の緊急評議会はすでに動員を開始していた。
しかし皆、心の底では真実を知っていた。
上位吸血鬼が「殺す」と決めた相手を……
この世界の何も止めることはできない。
——
儀式の部屋で、私は怯える男爵に向かって一歩を踏み出した。
そしてもう一歩。
『夜の嘆き』が飢えた深紅の光を放っていた。
「最後の言葉はある?」
クロウ男爵は膝を折り、土下座するように懇願した。
「お願いだ……慈悲を……何でもやる……すべてを差し出す……」
私は剣を高く掲げた。
「血統を脅かした者に、慈悲などない」
刃がゆっくりと降下を始めた。
続く




