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この壊れゆく世界でスキルを手に入れ生き延びる  作者: 小鳥遊ケイ
第三章 人と神、神と人(神の使徒編)
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第5話

「・・・とまぁ、俺の方はそんな感じだ。」


定期報告で、不思議部屋へと集まった藤次は、この半年間ずっとあてもなくふらふらと各地を

放浪しつつ、遭遇したお約束イベントをこなしていたことをマリアとセイバーの2人に報告し終えた。


2人とも馬鹿みたいに口をあんぐり開けて、こちらを見てくる。

なんだか知らないが、とてもやめてほしい・・・。

2人して可哀そうな何かを見る様な目つきでこちらを見るのは・・・。


さすがに何も口に出さない2人の視線に居たたまれなくなって、身じろぎした藤次は、セイバーが

いれてくれた甘いミルクティーを口にした、冷めてしまってはいるが甘くて美味しいなと思う。

ふと、甘いものを口にしたのはいつぶりだろうかとどうでも良い疑問がわき上がって来た。

というより、まぁその疑問も居たたまれない視線からの現実逃避に近しい。

二人が呆れて言葉も出ないというように顔を見合わせて、両の手でやれやれというような動作を

している光景をあえて見ないふりをする。


「・・・それはそれとして、2人は今までどうしていたんだ?」


2人が、バッという効果音が聞こえる様な速度で、驚いたような顔をこちらへ向け、まるで

信じられないようなものを見る様に目を見開き、視線で何言ってるのこいつ?みたいな

懐疑的な視線を投げかけてくる、すごくやめてほしい・・・。


藤次は意味が分からなくて、途方に暮れる。

男には理解できない女心とかそういうアレだろうか?

ここで意味も分からず謝るのが愚策だということくらいは分かるのだが、なぜ2人は頑なに喋ろうと

しないのだろう?それもよく分からない。


少し時間をさかのぼって思い出してみる。

不思議部屋で久しぶりに会ったとき軽く挨拶はしていた。

つまり、喋れないということでは無いはずなのだ。

だんだんと口数が減っていったように思う。俺の近況報告を聞いているうちに・・・。


無言より、怒鳴ってくれた方が気楽なのだということをいま初めて知った。

マリアのビンタでも良い。アレはかなり痛いが、まだこちらもそれ相応の反応が出来る。

いや、別にビンタされたいという意味では断じて無い。


「・・・ダンジョン・・・」


おおぉぉぉぉ、マリアがしゃべってくれた!!! 

ポツリとこぼした感じだったが、いま何と言った!? ダンジョン???

心の中の俺がすごく喜んでいる。この機会を逃すまいと、次の言葉を聞き逃すまいと聴覚を研ぎ澄ませる!

よし、いま聴覚強化スキルも最大レベルで習得した。これで小声でも万全だ!


「・・・それぞれ作ろうって別れる前に話したわよね?」


マリアは笑顔だ。セイバーもすごく笑顔だが、2人の貼り付けたような笑顔がなんだか怖い。

別にそこに視線がいったわけではないが、口元が笑っていない・・・気がする。

なんて言った? いや聞こえていたけども、それぞれ作る? 意味が分からないし聞いた記憶が無い。

何か言わなければいけない、2人の視線がグサグサと突き刺さる。


「・・・え、と・・・、・・・・・・ごめん記憶に無い」


正直に言う。それが一番だと思うことを口にする。

あ・・・ああ、ああ! ああああぁぁぁぁっっ!!

マリアが笑顔で、ゆっくりちかづいてくる!

この先なにがおこるかわかる! おれ分かる!

いってえぇぇぇぇぇぇぇっッ!!!

使徒の全力でやるかふつう!? ちょっとは手加減とかするだろう!?


あえ? あ、ああ・・・あああぁぁぁっ!

セイバーもちかづいてくる!

この先なにがおこるかわかる! おれ分かる!

いってえぇぇぇっ!!

いや、セイバーは少し手加減してくれたように思う。でも痛いものは痛い。

瞬間的に1.5倍くらいに腫れた頬が、使徒の再生力で治っていく。


ビンタされたらそれ相応の反応ができる?

さっきの俺に教えてやりたい。ビンタされても反応できないよ。

何か反抗的な反応をしたり、言い返そうものなら、もう一発強烈なヤツをもらうことは間違いない。


何事も無かったかのような普通の語り合いが始まった。

マリアとセイバーは、俺などいないかのように2人で楽しそうにお喋りをしている。

自分たちの作ったダンジョンについて、楽しそうに語り合っている。

たまに俺が口を開こうものなら、2人して無言になって、こちらに貼り付けたような笑顔を向けてくる。

俺が押し黙ると、楽しそうなお喋りが再開されるのだ。


拷問のようなお茶会を経て分かったことは、どうやら俺たちが別れる半年前に、まずはそれぞれ

自分たちのダンジョンを作ろうということで、2人はこの半年間、ずっと自分のダンジョンを作って

いたのだそうだ。

記憶には無いが、この不思議部屋での定例報告会で、自分の作ったダンジョンをお披露目しよう

という話であったのだそうだ。本当に聞いた覚えが無い。口には出さないが。

セイバーの用意してくれた紅茶は、自分のダンジョンで稼いだダンジョンポイントを用いて振舞われたものらしい。元ダンジョンマスターのマリアでさえ、あの紅茶には驚いたと言っていた。

何気なく、冷めてから飲んだ俺だが、冷めていても美味しかった記憶がある。

ダンジョンポイント交換において、あの紅茶はすごくお高いものらしい。

元の世界では皇室御用達だとかなんとかで、1杯でモンスターや罠込みでダンジョンの1フロアが作れるくらいの高級品だそうだ。

あの冷静沈着なセイバーが、ビンタした気持ちがいまなら分かる。

半年後に会う2人を驚かせたい一心で、試行錯誤して苦労して、それで作り上げたダンジョンを軌道に乗せ、あの紅茶を手に入れたのだろう。


定例報告会が終わり、また再びそれぞれの道へと別れた。


・・・よし、気持ちを切り替えて、俺のダンジョンを作るとしよう。

【読者の皆様へお願い】


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