第2話
「・・・コラ、一人で難しい事考えてんじゃねーわよ!」
突然上から頭をすぱーんッ!!と、叩かれる。
「いったぁッ!?
おい、もう英霊じゃないんだ、叩いても良いけど普通に痛いから手加減してくれよ!」
後ろ頭を手でさすりながら、文句を言う。
俯いた顔は上げられない、叩かれて文句を言ったというのに、確実に気持ち悪がられるで
あろう顔をマリアに見せることは出来ないからだ。
だから頭を抱えていた両の手を移動させ、表情筋をむにむにと揉んでほぐす、分かりやすく
誤魔化すかのように。
「で、難しい顔してなにを考えてたのよ?」
今度こそ顔を上げた藤次は、包み隠さず、難しい顔をして考えていたことをマリアとセイバーに話した。
「これ、そんなに驚くようなこと?
私はこの神様のルールを見て、むしろ納得したくらいなんだけど、セイバーはどう思ったの?」
話を振られたセイバーも、気持ちを切り替えるように頭を一度二度左右に振り、そうですねと話し出す。
「藤次様とマリア様に使徒になることを止めるように呼び掛けたのは、確かにこの神のルールの
3-1が主な理由です。
もともと人間であられたというお2人に、同族である人間を間引くという行為が、はたしてどう
思われるのかが正直分かりませんでした。
少なくとも嫌悪されるのではないかと、浅はかながら考慮した結果があの制止です。
ちなみに私はもともと、人間を殺すための英霊というモンスターですから、藤次様とマリア様
以外の人間に対して、間引くと聞いても忌避感のようなものは特にありません」
それを聞いていた2人は、息をそろえたかのように、セイバーの頭を引っ叩く。
目を白黒させたセイバーは、俯き肩を震わせ、怒るのかと思いきや、さきほどの藤次と同じように、
それをあてこするかのように両の手の平で表情筋をむにむにと揉んでいた。
2人してなにしてるのよ、もうっと呆れつつも、よく分からずマリアも表情筋をむにむにとする。
2人してやっているのだから、きっと何か意味があるのだろうと、マリアはよく分かっていないが
真似をする。
そして3人が三様にそれぞれ別のところで同じ驚きを味わう。
使徒になったことで肌の質が変化し、信じられないくらいしっとりしたもち肌になっていること。
鏡を見ずともわかるが、シミやそばかすのようなものが一切なくなっていること。そして
おおよそこれは、認識した瞬間から変化していくのだろう、肌の色が徐々に白くなっていくことに!
白人というレベルでは無い、これにはむしろ恐怖を感じた。
じょじょに色を失うという表現が正しいか分からないが、無機質な白色へと肌が変化していくのだ。
誰も声が出せず、変化していく肌の色を見続けることしかできない・・・。
自分はどうなってしまったのか? マリアは? セイバーは?
気になって2人を見ると、2人とも不安そうな面持ちでこちらを見ていた。
「変なことを聞くが、どう見える? 俺は俺か?」
「私も同じことを聞きたいです、どう見えますか?」
「2人は変わってないように見えるけど、私は白い?」
しばらくお互いがお互いを観察すると、お互いの見た目は何も変わっていないことが判明した。
なら、自分にしか見えないこの肌の白さはなんなのだろうか!?
触った感覚に変化はない、肌の質感が変化している程度で、3人に同じことが起こっている以上、
これは使徒になったことで起こった変化なのだと思われる。
意味が分からず気持ち悪いが、教えてくれる主神がいるわけでもなく、ただただ3人が同じ症状だと
いう、つまりは自分だけでは無いということで安心感を得るしかなかった。
マリアの不思議部屋にて、ベッドに寝ている。
これ以上の変化は心臓に悪いのでやめてほしいと誰にともなく願った。
「あっ、髪が!」
マリアがいきなり声に出したので、俺はぎょっとしてマリアの方を見た。
同じようにセイバーも、ぎょっとしたようにマリアの方を見ている。
たぶんお互い同じようなことを考えていたのだろう。
「だいぶ伸びちゃった、切りたい・・・」
続いた言葉を聞いて、今日はもうこれ以上の驚きは御免だと、藤次は布団を頭にかぶったのだった。
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